令和8年(2026年)10月は、働く人と職場に関わる改正が集中する月です。すべての事業主にカスタマーハラスメント対策が義務づけられ、自営業・フリーランスの人にとっては国民年金の「育児免除」という新しい制度が始まります。
このページでは、10月に施行日が来る改正を一次資料で確認してまとめています。各項目の詳しい解説は、それぞれの記事にリンクしています。
令和8年(2026年)10月は、働く人と職場に関わる改正が集中する月です。すべての事業主にカスタマーハラスメント対策が義務づけられ、自営業・フリーランスの人にとっては国民年金の「育児免除」という新しい制度が始まります。
このページでは、10月に施行日が来る改正を一次資料で確認してまとめています。各項目の詳しい解説は、それぞれの記事にリンクしています。
いちばん影響が広いのはカスタマーハラスメント(カスハラ)対策と、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化です。根拠は労働施策総合推進法等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号)で、施行日は施行期日を定める政令(令和8年政令第17号)により10月1日と定められました。
注意したいのは、企業規模による猶予が設けられていない点です。厚生労働省の公表資料にも猶予の記載はなく、施行期日政令も一律に10月1日としています。中小企業も同日から対象です。
やるべきことは、方針の明確化と周知、相談窓口の設置、事後対応、悪質なカスハラへの対処方針の整備など、指針(令和8年厚生労働省告示第51号)が定める10項目です。求職者等セクハラのほうは告示第52号が11項目を定めており、採用面接・就職説明会・インターンシップ・教育実習が対象場面に入ります。面談の時間や場所、連絡に使うSNSの種類といったルールをあらかじめ決めておくことが求められます。
同じ10月1日に、同一労働同一賃金のルールも一段強化されます。雇入れ時に明示する労働条件に「正社員との待遇差の内容・理由について説明を求めることができる旨」が加わるため、労働条件通知書の様式を見直す必要があります。
化学物質を扱う事業場は、個人ばく露測定の改正にも注意してください。ここは射程を誤りやすいところで、義務がかかるのはリスクアセスメントの手法として個人ばく露測定を選んだ場合です。個人ばく露測定を行うかどうか自体は引き続き事業者の判断ですし、簡易的・予備的な測定は対象外です。
国民年金の「育児免除」は、これまで会社員(第2号被保険者)にしかなかった育児期間中の保険料免除を、自営業・フリーランス・農業者・学生など第1号被保険者に広げるものです。
届出ができるのは10月1日以降です。時効の適用はなく、さかのぼって免除期間として承認されます。
所得制限額の引上げも2件あります。障害基礎年金など障害関係の給付は基準額が一律2.58%引き上げられ、20歳前傷病による障害基礎年金・特別障害給付金・障害/遺族の年金生活者支援給付金の分が10月1日施行です(障害児福祉手当等の分は8月1日に先行して施行済みです)。老齢年金生活者支援給付金のほうは、所得基準額が昭和31年4月2日以後生まれの人で809,000円から826,500円に、同年4月1日以前生まれの人で806,700円から824,100円に引き上げられます。
どちらも受給者側の手続きは不要ですが、これまで所得がわずかに基準を超えて支給停止・減額になっていた人は、新しい基準額で受給できる可能性があります。
10月の話題として最も検索されているのは、おそらく**「106万円の壁」の撤廃**です。ここは現時点で確定していることと、そうでないことを分けて理解しておく必要があります。
したがって本ページの一覧には、この項目を施行が確定したものとしては掲載していません。撤廃されれば、実質的な分かれ目は「週20時間以上働くかどうか」に変わります。月8.8万円を超えないよう就業調整をしてきた人は、勤め先に今後の扱いを早めに確認しておくとよいでしょう。政令の公布を確認しだい、このページを更新します。
なお、企業規模要件の段階的な縮小(2027年10月から36人以上、2029年10月から21人以上、2032年10月から11人以上、2035年10月から10人以下)は、これとは別の話です。
追記(2026年9月4日)——同じ令和7年法律第74号にもとづく保険料調整制度については、9月4日の官報で政令(令和8年政令第272号)と省令(令和8年厚生労働省令第137号)が公布され、令和8年10月1日施行が確定しました。新しく社会保険に入ることになった短時間労働者の保険料の一部を、事業主が申し出て肩代わりできる仕組みで、標準報酬月額88,000円以下なら本人25%・事業主75%になります。通算3年間使えます。賃金要件の撤廃(106万円の壁)の施行期日政令は、9月4日時点でも確認できていません。
10月16日に改正地域公共交通活性化再生法(令和8年法律第35号)が施行されます。施行期日を定める政令(令和8年政令第269号)が9月4日に公布されました。国土交通省は全国で約2,500の「交通空白」が生じているとしており、地域の輸送資源をフル活用して共同化・協業化を進めるための枠組みを整えるものです。住民が行う手続きはありませんが、住んでいる地域の交通の選択肢に関わります。
10月24日に皇室典範等の改正が施行されます。内親王および女王は、天皇および皇族以外の男子との婚姻によって皇族の身分を離れないこととされ、その婚姻は皇室会議の議を経ることになります。ただし施行の際に現に内親王・女王である方については、その意思により、従来どおり婚姻と同時に皇族の身分を離れることができる経過措置が置かれています。
10月31日には国民投票法(憲法改正手続法)の改正が施行されます。投票立会人・開票立会人の選任要件が緩和され、FM放送の設備でも憲法改正案の広報放送ができるようになります。国民が行う手続きはありませんが、市区町村・都道府県の選挙管理委員会の実務に関わります。
カスハラ防止指針の策定過程では、「顧客等の言動」が社会通念上許容される範囲を超えたかどうかの線引きが現場で判断しにくいという指摘が寄せられています。厚生労働省は指針のなかで、判断にあたっては言動の内容だけでなく、その手段・態様、頻度・継続性、労働者の受ける身体的・精神的な負担などを総合的に考慮する必要があるとしています。正当なクレームまで一律に拒むことを求めるものではない、という整理です。
個人ばく露測定については、資格が必要な「個人ばく露測定」と、資格を要しない簡易的・予備的な測定との区別が分かりにくいという指摘があります。この区別は事業場の実務に直結するため、施行までに整理しておくことが必要です。