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国の窓口職員のカスハラ対策は人事院規則10―17 令和8年(2026年)10月1日施行 法律ではなく規則が根拠

令和8年(2026年)10月1日から、国の出先機関の窓口などで働く一般職の国家公務員には、人事院規則10―17(カスタマー・ハラスメントの防止等)による仕組みが始まりました。民間や自治体側と施行日は同じですが、根拠は改正労働施策総合推進法ではありません。

一般職の国家公務員には、同法第31条から第34条までが適用されないためです。代わりに、人事院が国家公務員法に基づいて、人事院規則10―17を令和8年4月15日に公布しました。施行日は令和8年10月1日です。

同じ令和8年4月15日には、運用通知職職―114「人事院規則10―17(カスタマー・ハラスメントの防止等)の運用について」も出されています。通知は「令和8年10月1日以降は、これによってください」とし、各省各庁が整える方針、研修、相談体制などを具体化しています。

自分の職場で方針や相談員がまだ示されていない場合でも、規則は職員に人事院への直接の苦情相談を認めています。自治体職員とは根拠も相談ルートも異なるため、国の一般職として使える仕組みを分けて確認する必要があります。

国家公務員には法律が適用されない

改正後の労働施策総合推進法第48条は、一般職の国家公務員への適用除外を次のように定めています。

(前略)第八章及び第三十一条から第三十四条までの規定は一般職の国家公務員(行政執行法人の労働関係に関する法律(昭和二十三年法律第二百五十七号)第二条第二号の職員を除く。)、裁判所職員臨時措置法(昭和二十六年法律第二百九十九号)の適用を受ける裁判所職員、国会職員法(昭和二十二年法律第八十五号)第一条に規定する国会職員及び自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第二条第五項に規定する隊員については、適用しない。

一般職の国家公務員には、カスハラ防止措置を含む第31条から第34条までが適用されません。国の一般職については、法律の第33条ではなく、人事院規則10―17がカスハラ防止・対応の根拠になります。

ただし、第48条の括弧書きは、行政執行法人の労働関係に関する法律第2条第2号の職員を、ここでいう「一般職の国家公務員」から除いています。その職員はこの適用除外の対象にならず、法律側の第31条から第34条までが適用されます。どの法人が行政執行法人に当たるかは、本記事で用いる資料にはないため、法人名は挙げません。

第48条は裁判所職員、国会職員、自衛隊員も第31条から第34条までの適用除外として挙げています。一方、人事院規則10―17は国家公務員法に基づく一般職の国家公務員の仕組みです。裁判所職員、国会職員、自衛隊員にどの仕組みが適用されるかは資料にないため、本記事では扱いません。

地方公務員側は法律が根拠になり、使える相談ルートも異なります。対比は、姉妹記事の自治体の窓口職員もカスハラ防止措置の対象で整理しています。

規則が守る範囲は法律より広い

法律第33条と人事院規則第2条では、カスハラの定義に違いがあります。

根拠定義のうち、言動によって生じる結果
改正労働施策総合推進法第33条「就業環境が害される」
人事院規則10―17第2条「職員が精神的若しくは身体的な苦痛を与えられ、職員の人格若しくは尊厳が害され、又は職員の勤務環境が害される」

いずれも、業務の性質その他の事情に照らして、言動が社会通念上許容される範囲を超えることを前提にしています。その上で規則は、勤務環境だけでなく、「職員の人格若しくは尊厳が害され」という場合も明記しています。法律の「就業環境が害される」より、規則の定義の方が広く書かれています。

運用通知は、判断時の留意点も示しています。

  • 頻度や継続性を考慮するが、強い精神的または身体的苦痛を与える態様なら、1回の言動でも該当し得る
  • 対面だけでなく、電話やSNS等のインターネット上の言動も含まれる
  • 「職員の職務に係る行政サービスの利用者等」は、対面かどうかを問わず、職務に関して職員に関わる全ての者をいう
  • ただし、同一省庁内の職員は原則として含まない

何がカスハラになり得るのか

人事院の「職員が認識すべき事項についての指針」は、カスハラになり得る言動を、言動の内容と手段や態様の2本立てで例示しています。

分け方類型指針の例
言動の内容要求に理由がない、または行政サービス等と全く関係のない要求性的な要求、職員のプライバシーに関わる要求
言動の内容対応が著しく困難、または対応が不可能な要求法令に違反するおそれのある事務の処理を行うことを要求すること
手段や態様身体的な攻撃殴る、蹴る、物を投げつける、つばを吐きかける
手段や態様精神的な攻撃脅迫、中傷、侮辱、土下座の強要、盗撮や無断での撮影、SNS等へのプライバシー情報の投稿等
手段や態様威圧的な言動大きな声をあげて職員や周囲を威圧する、反社会的な言動を行う
手段や態様継続的、執拗な言動同じ質問の執拗な繰り返し、揚げ足取り、同様の電子メール等を繰り返し送り付ける
手段や態様拘束的な言動長時間の居座りや電話で職員を拘束する

窓口業務で特に確認しておきたいのが、「法令に違反するおそれのある事務の処理を行うことを要求すること」です。行政サービスの内容に関する要求でも、対応が著しく困難または不可能なものの例になっています。

ただし、この表は限定列挙ではありません。指針には、ここで例示した「言動の内容」または「手段や態様」に該当しなければカスハラにならない、という趣旨に理解してはならないとの注記があります。

反対に、行政サービスの利用者等からの苦情の全てがカスハラに該当するわけでもありません。客観的に見て、社会通念上許容される範囲で行われたものはカスハラには当たらないと、運用通知が明記しています。

各省各庁の長がすること(10月1日から)

人事院規則第4条は、各省各庁の長に、カスハラを防止するための必要な措置と、発生後の迅速・適切な措置を求めています。運用通知は、その責務に含まれる内容を次の6点に具体化しています。

各省各庁で必要になること
1防止等の方針、具体的な対策等を部内規程等の文書の形で取りまとめ、職員へ明示する。現場から直ちに報告があった場合などに管理監督者等がその場で適切に対応できる内容も定める
2カスハラには毅然とした態度で対応し、職員を保護する方針を明確にし、周知・啓発する
3苦情相談があった場合、内容に応じて迅速かつ適切な解決を図る
4カスハラが生じた場合、再発防止に向けた措置を講ずる
5過度な要求を繰り返すなど特に悪質と考えられるものへの対処方針をあらかじめ定めて周知し、その対処を行える体制を整える
6苦情の申出や調査への協力などを理由に、職場で不利益を受けないことを周知する

規則第7条は、意識啓発や知識向上に加えて、各省各庁の長が職員へ研修を実施しなければならないと定めています。パンフレット、ポスター、イントラネットへの掲載だけで研修が任意になる規定ではありません。

相談体制について、規則第8条は、相談員を配置して相談を受ける体制を整え、その体制を職員へ明示するよう求めています。運用通知による配置の基準は次のとおりです。

  • 本省庁と管区機関には、それぞれ複数の相談員を置くことを基準とする
  • その他の機関も、組織構成や官署の規模などを踏まえて必要な体制を整える
  • 相談員のうち少なくとも1名は、相談者が属する課の長への指導と関係当局との連携ができる地位にある者を充てる
  • 管理監督者等を相談員に定める方法や、他のハラスメント相談窓口と一体的に設ける方法もある

指針が示す現場での対処例には、管理監督者等への直ちの報告、可能な限り一人で対応させないこと、個人情報保護法等を守った録音・録画、説明後も要求が続く場合に一定時間で退去を求めたり電話を切ったりすることがあります。犯罪に該当し得る言動の警察への通報、本省庁等への情報共有、必要な場合の弁護士への相談も挙げられています。

職場が何もしていないとき、職員には何が使えるのか

所属する官署で方針や相談員がまだ示されていないときに重要なのが、規則第8条第3項です。職員は、職場の相談員への苦情相談に加えて、人事院に対しても直接、苦情相談を行うことができます。

人事院は、相談した職員等から事情を聴くなど必要な調査を行い、職員等に対して指導、助言、必要なあっせん等を行います。自治体職員には労働局ルートがないのに対し、一般職の国家公務員には、人事院規則の中にこの直接相談ルートが置かれていることが大きな違いです。

苦情相談は、被害を受けた本人だけに限られません。運用通知は、次の相談も含むとしています。

  1. 他の職員についてカスハラが生じているのを見た職員からの相談
  2. 部下等から相談を受けた管理監督者からの相談
  3. 他の職員から、カスハラを生じさせる言動をしていると指摘された職員からの相談

人事院の「職員が認識すべき事項についての指針」は、被害を深刻にしないため、問題を一人で抱え込まず、上司等への相談をためらわないこと、職場内での解決が難しい場合は内部または外部の相談機関への相談を考えることが大切だとしています。

相談した後の不利益についても規定があります。規則第4条第3項により、各省各庁の長は、苦情の申出、調査への協力など、カスハラが生じた場合の職員の対応を理由に、その職員が職場で不利益を受けないようにしなければなりません。

ここでいう不利益は、昇任、配置換等の任用上の取扱い、昇格、昇給、勤勉手当等の給与上の取扱いに関するものだけではありません。運用通知は、同僚等から受ける誹謗や中傷など、その他の不利益も含むとしています。

相談を受ける側に求められること

窓口の一般職員も、配置によっては相談員になったり、周囲の職員から相談を受けたりする可能性があります。人事院の「苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項についての指針」は、相談員の基本的な心構えを3点示しています。

  1. 被害者にとって適切かつ効果的な対応は何かという視点を常に持つ
  2. 事態を悪化させないため、迅速な対応を心掛ける
  3. 関係者のプライバシー、名誉その他の人権を尊重し、知り得た秘密を厳守する

相談者から事情を聴くときは、相談者が求めるものと緊急性を把握します。被害者は心理的な影響により、必ずしも理路整然と話すとは限らず、話が脱線することも想定した上で、忍耐強く聴くよう努めることとされています。

相談員は、自分の評価を差し挟まず、相談者の心情に配慮しながら、相談者が認識している事実関係を把握します。聴取した事実関係等は記録して保存します。必要に応じて周囲の職員から聴取し、録音・録画等の客観的な証拠を確認し、必要かつ可能なら行為者とされる者からも聴取します。具体的に取った対応は、相談者へ説明します。

職員自身が加害者になることもある

人事院規則は、職員を被害から守るだけではありません。第5条第1項は、職員自身も、行政サービスの利用者等として、その職務においてカスハラを生じさせる言動をしてはならないと定めています。

さらに「職員が認識すべき事項についての指針」は、職務上のカスハラを生じさせる言動だけでなく、職員以外の者に対して、カスハラを生じさせる言動に類する言動を行ってはならないとしています。

その上で指針は、職員が職務においてこれらの言動をしたときについて、次のように明記しています。

信用失墜行為、国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行などに該当して、懲戒処分に付されることがある。

民間・自治体側の法律が事業主に防止措置を求める枠組みであるのに対し、人事院の指針は、一般職の国家公務員自身の言動について懲戒処分の可能性まで明記しています。

なお、民間側でも懲戒の考え方がないわけではありません。厚生労働省の解釈事項の問19は、自社の労働者が取引先等に対してカスハラを行った場合について、信用失墜行為や服務規律違反に対する懲戒規定等の既存の規定に基づき必要な措置を講ずることが可能であれば、カスハラ独自の規定を就業規則等に新たに設ける必要はないとしています。違いは、人事院の場合は指針そのものに懲戒処分に付されることがあると書き込まれている点です。

他省庁の職員からカスハラを生じさせる言動を受けたとされる場合には、規則第4条第2項による省庁間の仕組みがあります。被害を受けたとされる職員が属する各省各庁の長は、相手方の各省各庁の長に調査を要請し、必要に応じて指導等の対応を求めなければなりません。求められた側は、必要と認める協力を行わなければなりません。

一方、運用通知は、第2条の「行政サービスの利用者等」には同一省庁内の職員を原則として含まないとしています。そのため、同一省庁の職員間の言動が常にこの規則上のカスハラになる、という整理ではありません。ただし、職員が行政サービスの利用者等として職務上カスハラを生じさせる言動をしてはならないことや、職員以外の者への類似の言動も行ってはならないことは、別に明記されています。

誤解しやすいところ

第一に、苦情の全てがカスハラになるわけではありません。客観的に見て、社会通念上許容される範囲の苦情はカスハラに当たりません。言動の目的、経緯、状況、態様、頻度、継続性、職員の属性や心身の状況、行為者との関係性などを踏まえて、総合的に判断します。

第二に、運用通知は、組織または職員側の不適切な対応が、利用者等の言動の原因や背景になっている場合もあるとしています。要求や苦情があったという事実だけで、利用者等の言動をカスハラと扱うものではありません。

第三に、改正労働施策総合推進法は、カスハラ行為そのものを一律に禁止して行為者を処罰する制度ではありません。厚生労働省の令和8年4月24日付「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」問18は、次のように説明しています。

改正法は、事業主に対して雇用管理上必要な措置を講ずることを義務付けるものであり、事業主が何らかの措置を行う法的な権利や権限を新たに設けるというものではなく、カスタマーハラスメントへの対処の内容については、各事業主が、労働者の状況等の実態に応じて定める必要がある。

したがって、改正法が設けるのは事業主の雇用管理上の措置義務であり、カスハラ行為そのものへの一律の禁止や、行為者を処罰する新たな権限を定めたものではありません。一方で、一般職の国家公務員については、前述のとおり、人事院規則第5条第1項が職員自身の言動を禁じ、指針が懲戒処分の可能性を明記しています。法律側の措置義務と、人事院規則・指針による職員の責務を混同しないことが必要です。

指摘された課題

人事院は、行政サービスの利用者等への対応で見落としてはならない点を、「職員が認識すべき事項についての指針」にあらかじめ書き込んでいます。以下は本サイトによる評価ではなく、人事院自身が示した留意事項です。

  • コミュニケーションの不足 — カスハラは、行政サービスの利用者等とのコミュニケーション不足が原因や背景となって生じることもある(別紙第1・第1の4の一)
  • 行政サービスの継続 — 行政サービスが途絶えると、利用者等の生命や心身の健康に重大な影響が及ぶ場合などがあることに留意し、適切に対応する必要がある(同三)
  • 障害を理由とする差別の解消 — 障害者が、障害者差別解消法で禁止されている不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨を意思表明すること自体はカスハラに当たらない。同法に基づき、その実施に伴う負担が過重でないときは、社会的障壁を除去するために必要かつ合理的な配慮をしなければならない。基本方針に即して、利用者等との建設的対話を重ねるなど、事案に応じて適切に対応する必要がある(同四)

特に三つ目は、不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思表明そのものをカスハラと扱わないことと、建設的対話を重ねる必要性を、人事院が同じ留意事項の中で明示したものです。

いつから

人事院規則10―17の施行日は、令和8年(2026年)10月1日です。令和8年4月15日付の運用通知・職職―114も、「令和8年10月1日以降は、これによってください」としています。

同じ令和8年10月1日には、改正労働施策総合推進法による民間・自治体側のカスハラ防止措置の義務化も始まりました。ただし、一般職の国家公務員は同法第31条から第34条までの適用除外であり、根拠は人事院規則10―17、職員が直接使える外部の相談先は人事院です。

出典

家族に説明するなら

国の窓口で働く一般職の国家公務員には、会社員や自治体職員に適用される法律ではなく、人事院の規則でカスハラ対策が用意されたよ。2026年10月1日から、職場は対応方針や相談体制を整え、研修もしなければならなくなった。職場で解決できないときは、本人が人事院へ直接相談できるのが大きな違いだよ。職員自身が仕事でカスハラを起こした場合には、懲戒処分の可能性も指針に書かれているんだ。

本記事は公式情報をもとにした要約です。最新かつ正確な情報、申請条件、期限は必ず公式ページでご確認ください。