何が起きたか
国土交通省は、許可を受けずに有償で人や物を運ぶ行為(いわゆる白タク・白バス・白トラ)と、タクシー・ハイヤー事業者の違反に対する行政処分の基準を改めました。令和8年(2026年)10月1日以降の違反から適用されています。
改正されたのは次の3つです。
| 改正されたもの | 対象 | 根拠・番号 |
|---|---|---|
| 自家用自動車を使用する者による道路運送法又は貨物自動車運送事業法違反行為に対する行政処分基準 | 白タク・白バス・白トラ(許可のない人) | 国土交通省の通達(令和8年9月29日 国自旅第85号ほか)。意見募集はe-Gov 155260924 |
| 一般乗用旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準 | タクシー・ハイヤー事業者 | 地方運輸局の公示(例:中国運輸局公示第43号、10月1日施行)。意見募集はe-Gov 155260928 |
| 旅客自動車運送事業運輸規則の改正 | ハイヤー事業者 | 国土交通省令第83号(10月1日公布・施行)。意見募集はe-Gov 155260926 |
白タク・白バス・白トラ:車両の使用禁止が約2倍に
許可のない人が自家用自動車を使って違反した場合、国は車両の使用を制限・禁止します。その日数が引き上げられました。
| 違反 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 無許可で運送事業を経営(道路運送法4条1項・43条1項、貨物自動車運送事業法3条・35条1項・36条1項) | 初犯60日/再違反120日/再々違反180日 | 初違反120日/再違反180日/再々違反180日 |
| 自家用自動車での有償運送(道路運送法78条) | 初犯40日/再違反80日/再々違反120日 | 初違反80日/再違反180日/再々違反180日 |
| 自家用自動車の有償貸渡し(道路運送法80条1項) | (78条と同じ区分)40日/80日/120日 | 40日/80日/120日(据え置き) |
再違反は処分を受けた日から3年以内に同じ条項に違反した場合、再々違反は3年以内に2回以上違反した場合です。特に事情があるときは、日数を最大2分の1まで軽くできる規定はそのまま残っています。
報道や意見募集の資料では、「60日→120日」「40日→80日」と別々の数字が出ていました。無許可経営と78条違反で区分が分かれているためで、どちらも正しい数字です。改正前は78条違反と80条1項違反が同じ区分でしたが、改正後は78条だけが引き上げられ、80条1項(自家用車の有償貸渡し)は据え置かれています。
使用禁止のときはナンバーも領置
改正後の基準には、自家用自動車の使用を禁止する場合、車検証の返納とナンバープレート(軽自動車は車両番号標)の領置を併せて行うことが明記されました。意見募集で、事業用と同じようにナンバーの領置を徹底してほしいという意見が出たのを受けて、案に加えた修正です。
タクシー事業者:名義貸しなどの事業停止が60日に
許可を持つタクシー・ハイヤー事業者向けの基準では、次の違反の事業停止期間が30日間→60日間、違反点数が30点→60点になりました。
- 許可を受けずに別の種別の旅客自動車運送事業を経営した
- 運行管理者や整備管理者がまったくいない
- 運転者の勤務時間・乗務時間の基準が著しく守られていない
- 全ての運転者に点呼をまったく実施していない、定期点検整備をまったく実施していない
- 名義を他人に利用させた(名義貸し)、事業の貸渡しなどをした
- 運ぶ旅客の範囲や、運送の引受けを営業所に限る許可条件に違反した
- 検査を拒んだ、虚偽の陳述をした
違反点数は、累計が支局の区域で51点以上になると事業停止の対象になります。改正後は60点のため、こうした違反が1件あるだけでこの基準を超えます。
ハイヤー:運送引受書と運行指示書が義務に
空港などで客引きをし、営業所の外で運送を引き受ける違法なハイヤーへの対策として、運輸規則が改正されました(国土交通省令第83号、10月1日施行)。
- ハイヤー運送を引き受けたら、旅客に運送引受書を交付し、写しを保存する。営業所で引き受ける場合も交付は義務
- 運行指示書を作成して運転者に指示し、運転者は携行する。運行指示書は保存する
- 運送引受書の交付・保存、運行指示書の作成・保存は、電磁的方法でもよい
違反した場合の処分も新設されました。
| 違反 | 初違反 | 再違反 |
|---|---|---|
| 運送引受書の未交付 | 60日車 | 120日車 |
| 運送引受書の記載事項などの不備 | 警告 | 10日車 |
| 運送引受書の写しの保存義務違反 | 60日車 | 120日車 |
| 運行指示書の作成・指示・携行の義務違反 | 30日車 | 60日車 |
| 運行指示書の記載事項などの不備 | 警告 | 10日車 |
| 運行指示書の保存義務違反 | 30日車 | 60日車 |
国土交通省は意見募集の回答で、空港での客引きによる営業所外での引受けなどを令和7年から確認しており、重大な違法行為について令和8年8月14日までに計5件の行政処分をしたと説明しています。
指摘された課題
3件の意見募集(計105件)では、厳しい取締りを求める意見が多数を占めたほか、次のような指摘が出ています。
- 正規の交通の不足:違法営業の根本には、需要に対して正規の交通が足りないことがあり、処分を重くしても違法行為が地下に潜るおそれがある。日本版ライドシェアの使い勝手の向上や、訪日客向けの多言語・キャッシュレス対応を一体で進めるべきだという意見(道路運送法等違反の基準)
- 増加の根拠:違反の増加は、新型コロナ前の水準に戻っただけではないかという意見。国土交通省は、警察による白タクの令和7年の検挙件数は過去最多だと答えています
- 外国人を標的にした規制ではないか:改正は外国人の犯罪を指摘するものかという意見。国土交通省は、外国人による犯罪を指摘するものではなく、違反件数の増加やハイヤーの適正な運営が目的だと答えています。旅客・貨物の運送事業の許可に国籍の要件はないとも説明しています
- 依頼する側への対策:違法と知りながら白トラに運搬を依頼する元請や、白タクの温床になっている配車・決済アプリへの対策も必要だという意見
- ハイヤーの初違反60日車は重すぎる:書面の有無だけで初回から60日車を科すのは重すぎるとして、警告や10日車を原則にするよう求める意見(タクシー事業者の基準)。案は修正されませんでした
出典
- 「道路運送法等違反に対する行政処分等の基準の改正案」に関する意見募集結果について(e-Gov・案件番号155260924)
- 「一般乗用旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準の改正案」に関する意見募集結果について(e-Gov・案件番号155260928)
- 旅客自動車運送事業運輸規則等の一部を改正する省令案に関する意見募集結果について(e-Gov・案件番号155260926)
- 「自家用自動車を使用する者による道路運送法又は貨物自動車運送事業法違反行為に対する行政処分基準について」の一部改正について(国土交通省通達・令和8年9月29日。全日本トラック協会の掲載PDF・新旧対照表つき)
- 一般乗用旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について(中国運輸局公示第43号・令和8年10月1日施行)
- 一般乗用旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について(改正前・令和7年2月改正版、国土交通省)
- 令和8年10月1日付 官報(国土交通省令第83号)