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タクシー・バスの標準運送約款にカスハラ条項 乗務員が中止を求めても続けば乗車拒否・途中降車も 令和8年(2026年)12月1日施行予定、意見募集は11月3日まで

何が起きたか

国土交通省は令和8年(2026年)10月5日、「一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款等の一部を改正する告示案」について意見募集(パブリック・コメント)を始めました。

対象は、タクシー、路線バス、貸切バスの3つの標準運送約款です。旅客による乗務員等へのカスタマーハラスメント(カスハラ)について、約款に新しい規定を置きます。

項目内容
対象一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款(タクシー。昭和48年運輸省告示第372号)
一般乗合旅客自動車運送事業標準運送約款(路線バス。昭和62年運輸省告示第49号)
一般貸切旅客自動車運送事業標準運送約款(貸切バス)
根拠道路運送法第11条第3項
受付期間令和8年10月5日(月)〜11月3日(火)必着
提出方法e-Govの意見提出フォーム、電子メール、郵送(電話は不可)
手続の種類行政手続法に基づく意見公募手続(e-Gov 案件番号 155260935)
公布・施行令和8年(2026年)12月1日(予定)

e-Govに掲載されているのは意見募集要領と1ページの概要だけです。告示案の条文そのものは、国土交通省物流・自動車局旅客課で配布するとされています。

新しく約款に入る3つのこと

国土交通省の概要によると、3つの標準運送約款それぞれに、次の内容を明確にする規定を新設します。

  1. 旅客は、乗務員等に対するカスタマーハラスメントを差し控える
  2. 乗務員等は、旅客にその中止を求めることができる
  3. 旅客が中止の求めに応じない場合、事業者は運送の引受けまたは継続を拒絶することができる

「運送の引受けの拒絶」は乗車を断ること、「運送の継続の拒絶」は乗車した後に運送を打ち切ることです。概要は、このほかに「所要の改正」を行うとしています。

禁煙車の規定と同じ組み立て

この3段構えは、いまのタクシーの標準運送約款にすでにある禁煙車の規定(第4条の2)と同じ形です。

現行の第4条の2は、禁煙車両内では旅客は喫煙を差し控えるとしたうえで、旅客が喫煙し、または喫煙しようとしている場合、乗務員等は喫煙を中止するように求めることができ、旅客がこの求めに応じない場合には、運送の引受けまたは継続を拒絶することがありますと定めています。

カスハラの規定も、いきなり拒絶するのではなく、まず中止を求め、それでも続く場合に拒絶できる、という順序になります。条文の具体的な文言は、公布されたときに確認する必要があります。

なぜ約款に書く必要があるのか

タクシーと路線バスには、道路運送法第13条の運送引受義務があります。次のいずれかに当たる場合を除いて、運送の引受けを拒絶してはならないとされています。

  1. 運送の申込みが、認可を受けた運送約款(標準運送約款と同一の約款を含む)によらないものであるとき
  2. 運送に適する設備がないとき
  3. 申込者から特別の負担を求められたとき
  4. 運送が法令の規定または公の秩序もしくは善良の風俗に反するものであるとき
  5. 天災その他やむを得ない事由による運送上の支障があるとき
  6. そのほか国土交通省令で定める正当な事由があるとき

いまのタクシーの標準運送約款は、第4条で拒絶できる場合を12号まで挙げています。泥酔して行先を明瞭に告げられない、車内を汚染するおそれがある不潔な服装をしている、乗務員等が旅客自動車運送事業運輸規則に基づいて行う措置に従わない、といった場合です。ただ、乗務員への暴言や理不尽な要求そのものを拒絶理由として書いた規定はありません。

今回の改正で、カスハラをやめるよう求めても応じない旅客を断ることが、約款に根拠のある対応として明確になります。

なお、道路運送法第13条の運送引受義務は貸切バス(一般貸切)を除いています。それでも概要は、貸切バスの約款にも同じ規定を新設するとしています。

背景は10月1日のカスハラ防止措置の義務化

国土交通省は背景として、改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)が令和8年10月1日に施行され、事業主にカスハラを防止するための雇用管理上の措置義務が課されたことを挙げています。そのうえで、カスハラが容認されないことを利用者に対して明確にするため、約款を改正するとしています。

10月1日からの措置義務は、事業主に、カスハラへの方針の明確化、相談体制、事後の対応、抑止のための措置などを求めるものです。義務の全体像は、カスハラ対策と求職者等セクハラ対策が事業主の義務にで整理しています。

ただし、厚生労働省は、改正法が事業主に顧客等へ何らかの措置を行う新たな法的権利や権限を設けるものではないと説明しています(小売・飲食の店舗のカスハラ対策参照)。タクシーやバスでは、旅客との関係は運送約款で決まります。今回の改正は、労働法の措置義務とは別に、旅客との契約のルールの側にカスハラへの対処を書き込むものです。

事業者・乗務員が確認しておくこと

自社の約款が「標準」かどうか

道路運送法第11条第3項により、標準運送約款と同一の運送約款を定めている事業者は、その約款について認可を受けたものとみなされます。独自に認可を受けた約款を使っている事業者もあります。

自社の約款がどちらに当たるかで、改正後の標準運送約款との関係が変わります。今回の概要は、独自の約款を使う事業者の扱いには触れていません。

社内の手順とつなぐ

約款に拒絶の根拠ができても、乗務員がその場で何をカスハラと判断し、どう中止を求め、いつ拒絶するかは、事業者の手順の問題です。10月1日から義務になったカスハラ防止措置として、事業主は対処の方針や相談体制を整える必要があります。

一人で乗務するタクシーや路線バスの乗務員は、管理監督者がその場で代わって対応できません。厚生労働省は、従業員が1名の店舗について、一定の時間が経過した時点で退店を求める、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する、現場での対応が困難な場合は本社・本部へ連絡して指示を仰ぐ、といった対処の例を示しています。乗務員の場合も、乗務中に営業所などへ連絡する手順が定められているかが確認点になります。

誤解しやすいところ

  • まだ案の段階です。公布・施行の12月1日も「予定」です。
  • 乗客の言動のすべてが拒絶の対象になるわけではありません。10月1日からのカスハラの定義は、言動が業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害するものです。改正後の約款でどのように定義を引用するかは、条文を見るまで分かりません。
  • 中止を求める段階が先にあります。概要の書き方は、乗務員等が中止を求め、旅客が応じない場合に拒絶できる、という順序です。

意見の出し方

受付は令和8年(2026年)11月3日(火)必着です。電話では受け付けていません。

  1. インターネット:e-Govの意見提出フォーム
  2. 電子メール:hqt-ryokaku_pc@gxb.mlit.go.jp(テキスト形式。件名は「一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款等の一部を改正する告示案に関する意見募集について」)
  3. 郵送:〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3 国土交通省 物流・自動車局 旅客課 意見募集担当あて

意見提出様式に、氏名、住所、所属、連絡先(電話番号・電子メールアドレス)と意見を書きます。氏名(法人・団体は名称)は意見とともに公表される可能性があり、匿名を希望する場合は提出時にその旨を書き添えます。

なお、e-Govの案件ページの備考には、当初の要領で募集期間の終わりが「令和7年11月3日」と誤記されていたため「令和8年11月3日」に訂正した、と書かれています。

出典

家族に説明するなら

タクシーやバスの会社は、お客さんを乗せるときのルール(運送約款)を決めていて、国がそのお手本(標準運送約款)を出しているんだ。国土交通省は、このお手本に「乗務員へのカスハラ(度を越えた暴言や理不尽な要求など)はやめてください。乗務員がやめるよう求めてもやめないなら、乗せるのを断ったり、途中で降りてもらったりすることがある」という決まりを加える案を出したよ。タクシーやバスは、原則として乗車を断ってはいけないことになっているから、どんなときに断れるかを約款にはっきり書いておくことに意味があるんだ。2026年12月1日から始まる予定で、11月3日まで意見を受け付けているよ。

本記事は公式情報をもとにした要約です。最新かつ正確な情報、申請条件、期限は必ず公式ページでご確認ください。