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建設業の「送出・受入」の指針3本が改正されました 令和8年(2026年)10月1日から適用 同一労働同一賃金の見直しを建設業務労働者就業機会確保事業にも反映

令和8年(2026年)9月14日の官報(号外第204号)に、厚生労働省告示が3本、公布されました。

  • 令和8年厚生労働省告示第341号 受入事業主が講ずべき措置に関する指針の一部を改正する件
  • 令和8年厚生労働省告示第342号 送出事業主が講ずべき措置に関する指針の一部を改正する件
  • 令和8年厚生労働省告示第343号 送出労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針の一部を改正する件

いずれも官報の本文で「令和八年十月一日から適用する」と定められています。

「送出」「受入」とは何か

この3本の指針が対象にしているのは、建設業務労働者就業機会確保事業です。

建設業では、会社によって仕事の量に波があります。そこで、建設労働者の雇用の改善等に関する法律(建設労働法・昭和51年法律第33号)にもとづき、事業主団体の構成事業主が国土交通大臣・厚生労働大臣の許可を受けて、常時雇用している建設業務労働者を、他の構成事業主のところで働かせて就業機会を確保する仕組みが設けられています。

  • 送出事業主:建設労働法第31条第1項にもとづき建設業務労働者就業機会確保事業の許可を受けた構成事業主
  • 受入事業主:送出事業主が雇用する送出労働者に係る建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受ける者
  • 送出労働者:送出事業主が常時雇用する建設業務労働者で、就業機会確保の対象となる者

この仕組みには、建設労働法第44条によって労働者派遣法の規定が読み替えて適用されます。今回改正された3本の指針は、その読替え後の労働者派遣法第47条の12にもとづくものです。

なぜ今、改正されたのか

厚生労働省の改正概要によると、経緯は次のとおりです。

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)で整備された各規定は、施行後5年を目途として見直すこととされていました。これを受けて、令和7年2月から労働政策審議会職業安定分科会・雇用環境均等分科会の同一労働同一賃金部会で議論が行われ、「雇用形態又は就業形態にかかわらない公正な待遇の確保に向けた取組の強化について(報告)」がまとめられました。

この報告を受けて、令和8年4月28日に同一労働同一賃金の改正省令・告示が公布されています(令和8年厚生労働省令第87号ほか、令和8年10月1日施行)。そこで改正されたのが、派遣先指針(平成11年労働省告示第138号)、派遣元指針(同第137号)、短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(平成30年厚生労働省告示第430号)です。

今回の3本は、その建設業版です。適用日も同じ令和8年10月1日にそろえられています。

何が変わるのか

受入事業主の指針(告示第341号)

項目内容
施設の便宜供与利用に関する便宜の供与の措置を講ずるよう配慮しなければならない施設に「駐車場」が含まれる旨を明確化(第2の9(1))
評価への協力送出事業主からの求めに応じて、送出労働者の業務の遂行状況の情報を提供する等、職務の評価等に協力するよう配慮しなければならない旨を記載(第2の9(1))
料金の交渉就業機会確保に関する料金の額に係る交渉に一切応じない場合や、送出事業主が読替え後の労働者派遣法第30条の3・第30条の4第1項にもとづく賃金を確保するために必要な額を提示して交渉したにもかかわらず料金がその額を下回る場合は、読替え後の労働者派遣法第26条第11項の規定の趣旨を踏まえた対応とはいえない旨を記載(第2の9(2))

送出事業主の指針(告示第342号)

公正な評価による待遇改善の促進として、次が記載されます(第2の8(4))。

  • 受入事業主に協力を求めつつ送出労働者の業務の遂行状況等を把握し、契約や労働契約の更新の機会等の適切な時機に職務の成果等の評価を行うこと。送出労働者の希望に応じて評価結果をフィードバックすること
  • 送出労働者にキャリアコンサルティングを受けることを勧奨することが望ましいこと。その結果等を踏まえ、教育訓練の実施や就業機会の提供が希望に応じて総合的に実施されるよう努めること

均等・均衡待遇については、次が記載されます(第2の8(6)(7))。

  • 労使協定を定めた場合でも、協定で定めた事項を遵守していない場合や、公正な評価に取り組んでいない場合は、読替え後の労働者派遣法第30条の3の規定による待遇の確保が求められる
  • 過半数代表者が適正に選出されていない場合には、協定を定めたものとは認められず、同じく第30条の3による待遇の確保が求められる
  • 協定対象送出労働者の賃金を協定で定めるに当たっては、一般賃金水準を遵守したうえで、経済・物価動向および賃金動向を勘案して労使で十分に協議することが考えられること
  • 一般賃金水準が下がった場合でも、改定前の協定に定める額を基礎として労使で十分に協議することが望ましいこと。待遇を引き下げる場合は労働条件の不利益変更となり得るもので、原則として労使双方の合意が必要であること
  • 過半数代表者は、労働基準法第41条第2号の監督又は管理の地位にある者でないこと。過半数代表者であることや正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはならないこと。意見聴取の事務を円滑に遂行できるよう必要な配慮を行わなければならないこと

説明義務については、次が記載されます(第2の9(3)(5))。

  • 送出労働者から説明の求めがない場合でも、労働契約の更新の際等に、待遇の相違の内容・理由等を容易に理解できる内容の資料を交付することや、説明を求めることができることを周知すること等が望ましい
  • 説明は、資料を活用して口頭により説明する方法か、説明すべき事項を全て記載した資料を交付する等の方法のいずれかとする。口頭で説明する場合は、説明に活用した資料等を交付することが望ましい
  • 個人情報の漏えい防止等の観点から資料の交付が困難な場合でも、事後に求めがあったときは資料を閲覧させる等の工夫をするよう努める

不合理な待遇の禁止等の指針(告示第343号)

同一労働同一賃金のガイドラインにあたるものです。主な追加は次のとおりです。

  • 不合理と認められる待遇の相違の解消等は、個々の待遇ごとに判断されるべきである旨を追加(第1の本文)
  • 指針に記載がない待遇等であっても、待遇の相違が不合理と認められる可能性がある旨、労使で待遇の体系を議論するに当たっては送出労働者の意向を十分に考慮することが望ましい旨を追加(第2の本文)
  • 通常の労働者の労働条件を不利益に変更することなく、送出労働者の労働条件の改善を図ることが求められる旨を追加(第2の3)
  • 「退職手当」「無事故手当」「住宅手当」の項目を新設し、「賞与」の項目に留意事項を追加(第3の2・3・4)
  • 「夏季冬季休暇」「褒賞」の項目を新設するとともに、福利厚生施設の利用条件に読替え後の労働者派遣法第30条の3第1項の適用がある旨を追加(第3の4)
  • 「受入事業主に雇用される通常の労働者としての職務を遂行しうる人材の確保及びその定着を図る」等の目的で待遇を行う場合の取扱いを、留意事項として新設(第3の本文・(注)2)
  • 協定対象送出労働者に係る記載(第4)についても、同様の改正を行う

指摘された課題

受入・送出の2本の指針案について、厚生労働省は令和8年6月9日から7月8日まで意見を募集し、10件の意見が寄せられました。結果は令和8年9月14日に公示されています。

案が修正された点があります。厚生労働省は、寄せられた意見を受けて次の対応を示しました。

「必要な配慮の例」として、送出労働者の過半数を代表する者が送出労働者の意見の集約等を行うに当たって必要となる事務スペースや事務機器の提供を行うこと等、具体的な配慮の例示を明記致します。また、送出労働者の過半数を代表する者であること若しくは正当な行為をしたことを理由として、当該労働者に対して不利益な取扱をしないようにしなければならない旨を明記致します。

このほか、次のような指摘が出ています(いずれも意見の要旨)。

  • NG例・推奨例の追加:「必要な配慮の例」に具体的な「NG例」や「推奨例」を数行加えるだけで、現場の混乱や形骸化を大きく防げる
  • 資料閲覧のルール:資料の交付が困難な場合の「閲覧させる等の工夫」について、「労働者本人のスマートフォン等による写真撮影・コピーを許可すること」「閲覧を求めた労働者の氏名や内容を受入事業主などの第三者に開示してはならない」という一文を指針やQ&Aに加えるべき
  • 情報提供窓口:受入事業主が適正な料金交渉に応じない場合、「趣旨を踏まえた対応とはいえない」と書くだけでは送出事業主が泣き寝入りするだけ。労働局に「適正な料金交渉に応じない受入事業主に関する情報提供窓口」を明確に設け、連絡先を明記すべき
  • 資料交付の義務化:求めがない場合でも労働契約の更新時等に資料を交付して周知することが「望ましい」とされているが、「義務化」に変更すべき
  • 評価シートのテンプレート:中小・零細企業にとって評価シートをゼロから作ること自体が負担。厚生労働省が建設業務労働者の特性に合わせた簡易版の標準シートを作成し、Webサイトからダウンロードできるようにすべき

なお、告示第343号(不合理な待遇の禁止等の指針)の案についても令和8年6月16日から7月15日まで意見が募集され、2件の意見が寄せられましたが、厚生労働省は「本意見募集の対象外である御意見でした」としています。

誰に関係するか

送出事業主(建設業務労働者就業機会確保事業の許可を受けた構成事業主)は、労使協定の内容と過半数代表者の選出手続、待遇差の説明方法、職務の成果等の評価とフィードバックの手順を点検する必要があります。協定を定めていても、定めた事項を守っていなかったり公正な評価に取り組んでいなかったりすると、協定方式による待遇決定が認められなくなる点が明記されました。

受入事業主は、料金の額の交渉に応じる体制、送出事業主から求められたときに業務の遂行状況を情報提供できる体制、駐車場を含む施設利用の便宜供与を確認してください。

送出労働者は、10月1日から、待遇の相違の内容と理由について説明を求めやすくなりました。退職手当・無事故手当・住宅手当・夏季冬季休暇・褒賞についても、通常の労働者との不合理な差がないかが判断の対象になります。

出典

家族に説明するなら

建設会社の間には、仕事が少ない会社から仕事が多い会社へ社員を送り出して働いてもらう、という仕組みがあるんだ。送り出す側を「送出事業主」、受け入れる側を「受入事業主」といって、派遣に近いルールが当てはまるよ。今回、そのルールの細かい決まり(指針)が3本まとめて変わって、10月1日から使われることになった。たとえば、送り出した人の働きぶりを受入側が教えてくれるようにして、ちゃんと評価して本人に伝えること。受入側が「いくら払うか」の話し合いにまったく応じないのはダメだと書かれたこと。それから、退職金や無事故手当、住宅手当、夏休み・冬休み、表彰といった項目が「正社員と不合理な差をつけてはいけないもの」の例に加わったこと。これは4月に決まった「同一労働同一賃金」の見直しを、建設業の仕組みにもそろえたものだよ。

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