令和8年(2026年)10月9日、農地の上に太陽光パネルを設置して、下で農業を続けながら発電する「営農型太陽光発電」(ソーラーシェアリング)の制度を組み替える2つの改正が公布されました。
- 農林水産省令第72号:農地法施行規則と農山漁村再エネ法施行規則の改正。営農型太陽光の一時転用の不許可基準を、「農山漁村再エネ法の設備整備計画の認定の見込みがないこと」に置き換えます。この部分の施行は令和9年(2027年)4月1日です
- 農山漁村再エネ法の基本方針の改正(農林水産省・経済産業省・環境省の告示):営農型太陽光の基本理念と、遮光率30%未満・地上高おおむね3m以上・年50万円以上の販売実績などの基準を定めました。10月9日から適用されています
これまで営農型太陽光は、農地法の一時転用許可だけで設置できました。2027年4月からは、市町村が農山漁村再エネ法の基本計画に営農型太陽光を位置づけ、その計画に沿った設備整備計画が認定される見込みがあることが、一時転用許可の条件になります。
何が変わるのか
| 項目 | これまで | 改正後 |
|---|---|---|
| 一時転用の不許可基準 | 単収がおおむね2割以上減少するおそれ、支柱の高さ2m以上の確保がない場合など(農地法施行規則) | 農山漁村再エネ法の設備整備計画の認定の見込みがない場合(令和9年4月1日から) |
| 望ましい営農型太陽光の基準 | 規定なし(農地法施行規則の不許可基準のみ) | 基本方針に基本理念と設備・営農の基準を明記(令和8年10月9日から) |
| 農用地区域(農振農用地)での扱い | 一時転用として転用可 | 基準に合う営農型太陽光に限り、基本計画の設備整備区域に含められる |
| 市町村の関与 | 農業委員会・都道府県の許可 | 市町村が基本計画を作り、設備整備計画を認定する |
農林水産省は令和8年4月の説明資料で、この仕組みを「望ましい営農型太陽光発電に適合することについて、農山漁村再生可能エネルギー法に基づく認定を受けることを一時転用許可の条件として位置づけることで、農地法単独では考慮することが難しい地域共生等の観点を営農型太陽光発電の制度として組み込む」と説明していました。背景には、令和7年12月23日の関係閣僚会議で決まった大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージがあります。
基本方針が定めた基準
基本方針は、営農型太陽光を「適切な営農の継続を前提として」、容易に撤去できる支柱を立てて一時的に農地を転用し、上部に太陽光パネルを設置するものと位置づけました。下部の農地の単収が、同じ年産の市町村の平均と比べておおむね2割以上減少するおそれがないことに加え、次の基準を定めています。
営農の基準
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 担い手 | 地域計画の区域内なら、営農者が地域計画に農業を担う者として記載されている |
| 労働力 | 栽培に必要な労働力が確実に確保されている |
| 販売実績 | 下部の農地で栽培する農作物について、年間50万円以上の生産・販売実績等がある |
| 品目と販路 | 地域で一般的に栽培され、一般的な販路がある品目(市場価値のない作物を発電事業者等が買い取る場合は「一般的な販路」に含まれない) |
| 収穫 | 原則として初年度から毎年収穫できる品目。やむを得ない場合も3年以内に計画収量を確保できる |
基本方針は、これまでの実証研究から「米、麦、大豆は、遮光率30%未満の環境でも、適切な栽培管理を前提に単収を確保できる」としています。
設備の基準
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 遮光率 | 設備直下の農地の面積に対するパネルの投影面積の割合が30%未満(遮光率で判定しにくい設備は、生育期間を通じてほ場のすべての地点で日射量の減少率が20%未満) |
| 高さ・通路 | ほ場からの最低地上高がおおむね3m以上、農業機械の通路の幅がおおむね4m以上 |
| 品質 | 下部の農地で栽培する農作物の品質を著しく劣化させるおそれがない |
これまで農地法施行規則の不許可基準にあった高さの要件は「支柱の高さが地上から2m以上」でした。基準の置き場所が基本方針に移るのにあわせて、3mに引き上げられています。
地域との共生の基準
- 協議会があるときは、協議会で協議が調っていること(地域計画の区域内なら、地域計画の協議の場でも協議が調っていること)
- 営農者以外が発電事業を行う場合、発電事業者から営農者(地権者が別ならその地権者にも)へ適正な利益還元が行われること
- 設備の損壊などで第三者に損害が出たときの補償の方針(保険加入や自己資金での対応など)が明確であること
- 土地改良事業や農業経営の規模拡大の妨げになるおそれがないこと
- 撤去費用の確保が確実であること
市町村は、基本計画に営農型太陽光を位置づける場合、これらの基準を原則として基本計画に明記します。ただし、公的機関や大学などが複数年の試験栽培で得た科学的根拠があれば、国と都道府県の助言を受けて、市町村が設備・営農の基準(地域共生の基準を除く)について特例的な対応を定めることができます。
設備整備計画の認定と、その後のチェック
基本方針は、市町村が営農型太陽光の設備整備計画を認定するときの確認事項も追加しました。
- 農作物の品質を著しく劣化させるおそれがないか
- 撤去費用の確保が書面により確実になっているか(設備整備者が撤去費用を負担すると誓約する書面を計画に添付する)
- 毎年の実施状況報告書が確実に提出されるか
認定には認定実施期間が付きます。期間の満了後も発電を続けるには、改めて計画を作り、期間満了までに市町村の認定を受け直す必要があります。下部の農地の単収が市町村の平均よりおおむね2割以上減っている場合などには、市町村が改善措置を指導します。指導を受けても改善しない事業者が再認定を申請しても、認定されません。認定の取消しの理由にもなります。
すでに稼働している設備はどうなるか
省令の附則に経過措置があります。
- 施行日(令和9年4月1日)の前にされた一時転用の許可申請で、施行日までに処分が出ていないものは、改正前の基準で審査されます
- 施行日の前に一時転用の許可を受けている人が、同じ事業を続けるために改めて許可を受けようとする場合(一時転用期間の更新)は、当分の間、改正前の農地法施行規則の規定が適用されます
- 施行日から4か月の間は、市町村が営農型太陽光の方針と区域を定めた基本計画を作る(変える)までにされた申請についても、経過措置があります
農林水産省は意見募集への回答で、既存の設備について次のように説明しています。
改正農地法施行規則附則において講じる経過措置により、既存の設備については、農地法に基づく再許可の申請を行うことが可能な仕組みとなっているため、適切な営農が継続されている場合においては、ご懸念のように市町村の基本計画作成状況に左右されることなく、稼働済みの設備の一時転用許可期間の更新を行うことは可能である。また、既存設備の再許可申請の際、農山漁村再生可能エネルギー法の基本方針において定められる遮光率等の設備に関する基準については、許可基準として扱わないものとして考えているところ。
つまり、稼働中の設備は遮光率30%や地上高3mに合わせて作り直す必要はありません。ただし、単収が2割以上減っていないか、毎年の栽培実績と収支を報告しているかといった、営農の継続についての審査はこれまでどおり続きます。
指摘された課題
意見募集(令和8年7月24日〜8月22日)には167の個人・団体から意見が寄せられました。案の修正はありません。多かった意見と、農林水産省の回答は次のとおりです。
| 意見(同旨の件数) | 農林水産省の回答の要旨 |
|---|---|
| 遮光率30%未満という一律の数値基準への反対・見直し(64件)。根拠のデータが示されていない、国の実証事業でも30%を超える遮光率で営農できた例がある、など | 遮光率30%を超えても優良な取組があることは認める。十分な科学的根拠で基本理念の実現が確保される場合は、基本計画に特例を設けられるようにしている |
| 年50万円以上の販売実績という一律要件の撤廃・見直し(63件)。新規就農者・小規模・中山間地域の農家が排除される、など | 作物を売らずに売電だけを行う事例があるための措置で、必要最低限の実績。実績は設備の下の農地に限らないので、中山間地域の農家が排除されることにはならない。新規就農者は、まず最低限の栽培経験を積んでから取り組むのが適当 |
| 地上高3m・通路幅4mの一律基準の柔軟化(30件)。大型農機を前提にしており、中山間地や果樹・茶などには過剰、架台コストや風荷重のリスクが増える、など | 従来は具体的な数値がなく、営農に支障が出る設備が導入されたり、下の農地で営農を引き受ける人が見つからない事例があったため数値を設けた。作物や設備の特性に応じた特例は設けられる |
| 基本計画作成の判断基準の明確化・事務負担の軽減(37件) | 基本計画の雛形や執務参考資料を早急に整備し、判断基準を明確にする |
| 施行時期と周知期間の確保(14件)。市町村が基本計画を作るには数か月〜1年以上かかり、協議会を置いている市町村は全体の1割未満、案の「施行後4か月」の猶予は短い、など | 許認可にかかわる農地法施行規則の施行は2027年4月1日とした。地方公共団体に十分な周知・説明を行う |
| 既存案件への遡及適用への反対(12件) | 既存設備は基本計画の有無にかかわらず再許可を申請でき、遮光率等の設備の基準は許可基準として扱わない |
意見募集の結果の公示で、農林水産省は「今後、市町村において基本計画の作成や見直しが進められることとなりますが、お寄せいただいた御意見を踏まえ、市町村等へのきめ細やかな情報提供や助言等を通じて、現場の実情に即した運用を行ってまいります」としています。
新しく設置できるかどうかは、市町村が基本計画を作るかどうかに左右されます。 市町村が営農型太陽光を基本計画に位置づけなければ、2027年4月以降はその地域で新しく設置する道が事実上なくなります。逆に、基本計画を作った市町村では、基準に合う営農型太陽光に限って、農用地区域の農地も設備整備区域に含められます。
いま確認したいこと
- 計画中の案件:設置予定地の市町村が、農山漁村再エネ法の基本計画に営農型太陽光を位置づける予定があるかを、市町村の再エネ・農政担当に確認してください。2027年3月までに許可申請を出せば改正前の基準で審査されますが、駆け込みについて農林水産省は「可能な限り速やかに移行したい」としています。
- 稼働中の設備:一時転用許可の満了日を確認し、栽培実績書と収支報告書を毎年きちんと提出してください。再許可では営農の継続が審査されます。
- 市町村:営農型太陽光を基本計画に位置づける場合は、基本理念と設備・営農の基準を基本計画に明記し、遅滞なく公表することが求められます。地方農政局などの相談窓口で国の助言を受けられます。
太陽光パネルの廃棄・リサイクルの制度は太陽光パネルのリサイクル法の記事にまとめています。
出典
- 「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進による農山漁村の活性化に関する基本的な方針を改正する件の案についての意見・情報の募集」の結果について(e-Govパブリック・コメント・案件番号550004383・令和8年10月9日)(結果概要、別紙1:提出意見及び意見考慮結果・理由等、別紙2:基本方針の新旧対照表)
- 官報 令和8年10月9日(本紙)農林水産省令第72号 農地法施行規則及び農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律施行規則の一部を改正する省令
- 農林水産省説明資料(令和8年4月・大臣官房環境バイオマス政策課、農村振興局農村計画課)
- 再生可能エネルギー発電設備を設置するための農地転用許可(農林水産省)
- 農山漁村再生可能エネルギー法(農林水産省)