令和8年(2026年)9月16日の官報(号外第206号)に、建築物省エネ法の改正に関する政令が2本、公布されました。
- 令和8年政令第291号 建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令
- 令和8年政令第292号 建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律施行令の一部を改正する政令
第291号が定めた施行日は、令和9年(2027年)4月1日です。
どの部分が令和9年4月1日から始まるのか
もとになる法律は、建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第75号)で、令和8年7月31日に公布されました。
この改正法は、施行日が2つに分かれています。国土交通省の法案概要によると、次のとおりです。
| 区分 | 内容 | 施行期日 |
|---|---|---|
| 附則第1条第2号 | 先導的な省エネ技術を評価する大臣認定/上位住宅トップランナー制度 | 公布の日から1年以内 → 令和9年4月1日(政令第291号) |
| 上記以外 | 建築物のライフサイクルカーボン評価制度/環境性能の第三者認証・表示制度/法律名の変更等 | 公布の日から2年以内において政令で定める日 → 未定 |
今回決まったのは前者だけです。ライフサイクルカーボンの届出制度や法律名の変更(「建築物のエネルギー消費性能の向上及び脱炭素化の促進に関する法律」)は、まだ施行日が決まっていません。期限は令和10年(2028年)7月31日です。
上位住宅トップランナーとは
建築物省エネ法には、もともと住宅トップランナー制度があります。規格化された住宅を一定の戸数以上供給する事業者に対し、省エネ性能の向上に努めることを求め、取組が著しく不十分なときは国土交通大臣が勧告できる、という仕組みです。
今回の改正では、この上に「上位」の枠が新設されます。国土交通大臣が、住宅市場に占める割合が特に大きいものを「エネルギー消費性能の一層の向上に特に寄与する必要がある者」として指定し、指定された事業者に計画と報告を義務づけます。
法律上の名前は、区分ごとに次のとおりです。
- 特別特定一戸建て住宅建築主(分譲型一戸建て規格住宅=建売住宅)
- 特別特定共同住宅等建築主(分譲型規格共同住宅等)
- 特別特定一戸建て住宅建設工事業者(請負型一戸建て規格住宅=注文住宅)
- 特別特定共同住宅等建設工事業者(請負型規格共同住宅等=賃貸アパート等)
指定の基準となる戸数
政令第292号が、この指定の基準となる戸数(基準戸数)を定めました。
| 区分 | 根拠条文 | 上位(今回新設) | 参考:現行のトップランナー |
|---|---|---|---|
| 分譲型一戸建て規格住宅(建売住宅) | 法第22条の2第1項 | 2,000戸 | 150戸(法第21条第1項) |
| 分譲型規格共同住宅等 | 法第22条の2第5項 | 2,000戸 | 1,000戸(法第21条第2項) |
| 請負型一戸建て規格住宅(注文住宅) | 法第25条の2第1項 | 2,000戸 | 300戸(法第24条第1項) |
| 請負型規格共同住宅等(賃貸アパート等) | 法第25条の2第5項 | 15,000戸 | 1,000戸(法第24条第2項) |
現行の戸数は施行令第5条と第6条にあり、今回の改正でも変わりません。上位の基準は、新設される施行令第6条と第8条に置かれます(現行の第6条は第7条に、第8条は第10条に繰り下がります)。
賃貸アパート等だけ15,000戸と桁が違うのは、1棟あたりの戸数が多く、年間の建設戸数の規模がほかの区分と大きく異なるためと考えられます。
なお、改正法は法第21条・第24条の「その一年間に新築する」「その一年間に新たに建設する」を「前年度に新築した」「前年度に新たに建設した」に改めています。判定は前年度の実績で行われます。
指定されると何をしなければならないか
指定を受けた事業者(特別特定一戸建て住宅建築主等・特別特定一戸建て住宅建設工事業者等)には、次の義務がかかります。
1. 中長期的な計画の提出(法第22条の4・第25条の4)
指定を受けた日の属する年度の翌年度以降、国土交通省令で定めるところにより、定期に、判断の基準となるべき事項を踏まえて、エネルギー消費性能の一層の向上に係る目標と、その達成のために取り組む事項を定めた中長期的な計画を作成し、国土交通大臣に提出しなければなりません。
2. 毎年度の報告(法第22条の5・第25条の5)
指定を受けた日の属する年度の翌々年度以降、毎年度、計画で定めた事項と、エネルギー消費性能の一層の向上のために必要な措置に係る前年度の取組状況について、国土交通省令で定める事項を国土交通大臣に報告しなければなりません。
3. 勧告と、その先の「命令」
計画の内容や取組状況が、判断の基準となるべき事項に照らして著しく不十分であると認めるときは、国土交通大臣は勧告をすることができます。
さらに、勧告を受けた事業者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合で、省エネ性能の一層の向上を図ることが困難であると認めるときは、国土交通大臣は社会資本整備審議会の意見を聴いて、相当の期限を定めてその措置をとるべきことを命ずることができます。
現行のトップランナー制度は勧告・公表・命令の枠組みがありますが、上位の側では計画の内容や取組状況そのものが勧告の入口になる点が異なります。
指定されていない事業者の届出
基準戸数以上であるのに指定を受けていない事業者は、国土交通省令で定めるところにより、その戸数その他国土交通省令で定める事項を国土交通大臣に届け出なければなりません(法第22条の2第2項・第6項、第25条の2第2項・第6項)。すでに指定を受けている事業者は、この届出は不要です。
逆に、規格住宅の供給をやめたときや、前年度の戸数が基準戸数を下回り、再び基準戸数以上となることがないと明らかに認められるときは、指定の取消しを申し出ることができます。
届出の様式や時期は、今後の国土交通省令で定められます。
いつまでに何をするか
- 令和9年(2027年)4月1日:上位住宅トップランナー制度と、先導的な省エネ技術の大臣認定(同等性の認定)が施行
- それまでに、判断の基準となるべき事項(経済産業省令・国土交通省令)と、届出・計画・報告の様式を定める国土交通省令が公布される見込みです
前年度の戸数で判定される制度なので、令和8年度の実績が最初の判定材料になります。区分ごとの戸数を集計できる状態にしておくことが、まず必要な準備です。
誰に関係するか
大手の住宅供給事業者(建売・注文・分譲共同住宅・賃貸アパート)のうち、区分ごとの年間戸数が基準戸数に届く事業者が直接の対象です。中長期計画と毎年度の報告という継続的な義務がかかります。
住宅を買う人・借りる人に手続きは発生しません。ただし、供給戸数の多い事業者に対して国が継続的に省エネ性能の向上を求める仕組みなので、大手が供給する新築住宅の省エネ性能が底上げされていくことになります。
出典
- 建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(令和8年政令第291号・令和8年9月16日公布/官報号外第206号)
- 建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律施行令の一部を改正する政令(令和8年政令第292号・令和8年9月16日公布/官報号外第206号)
- 「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定(国土交通省報道発表・令和8年3月27日)
- 同 法案概要(国土交通省・PDF)
- 同 法律案・理由(国土交通省・PDF)
- 建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律施行令(平成28年政令第8号・e-Gov法令検索)