令和8年(2026年)10月1日の官報(号外第217号)に、食品表示基準の一部を改正する内閣府令(令和8年内閣府令第89号)が公布され、同日施行されました。食品表示法第4条第1項にもとづき、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の別表第11を改正するものです。所管は消費者庁です。
別表第11は、栄養機能食品のルールを定めた表です。栄養機能食品は、ビタミンやミネラルなどの機能を、国が定めた文言で表示できる食品です。商品ごとに国の審査を受けるのではなく、1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が表の下限値と上限値の範囲内にあれば、事業者の責任で表示できます。
今回の改正で、この下限値・上限値、表示する機能の文言、摂取をする上での注意事項が見直されました。
なぜ見直されたのか
栄養機能食品の制度は平成13年に始まり、いまは20種類の栄養成分(脂肪酸1種類、ミネラル6種類、ビタミン13種類)が対象です。下限値・上限値は平成17年に、下限値は平成27年にも見直されましたが、機能の文言と注意事項は制度創設以来ほとんど見直されていませんでした。
消費者庁の「令和7年度 栄養機能食品に関する検討会 取りまとめ」(令和8年3月)は、機能の文言が、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」に書かれた機能の根拠と食い違っていることが、令和元年度の調査事業報告書で指摘されていたと説明しています。検討会は令和7年10月8日、令和8年1月21日、3月17日の3回開かれ、その取りまとめをもとに今回の改正案が作られました。
下限値・上限値はこう変わった
変わったのは次の成分です(1日当たりの摂取目安量に含まれる量)。表にない成分の下限値・上限値は変わっていません。
| 栄養成分 | 下限値(改正前→改正後) | 上限値(改正前→改正後) |
|---|---|---|
| 亜鉛 | 2.64mg → 2.55mg | 15mg → 17mg |
| カルシウム | 204mg → 210mg | 変更なし |
| 鉄 | 2.04mg → 1.95mg | 変更なし |
| 銅 | 0.27mg → 0.24mg | 6.0mg → 4.6mg |
| マグネシウム | 変更なし | 300mg → 320mg |
| パントテン酸 | 1.44mg → 1.65mg | 変更なし |
| ビタミンB1 | 0.36mg → 0.30mg | 変更なし |
| ビタミンB12 | 0.72μg → 1.20μg | 変更なし |
| ビタミンD | 1.65μg → 2.70μg | 変更なし |
| ビタミンE | 1.89mg → 1.95mg | 変更なし |
下限値は、これまでと同じく栄養素等表示基準値の30%の値をとっています。栄養素等表示基準値は令和7年3月の改正で「日本人の食事摂取基準(2025年版)」にもとづく値に改められており、その新しい値から下限値を計算し直したものです。
上限値は平成17年以降見直されていませんでした。今回変わった3成分の根拠は、検討会の取りまとめで次のように説明されています。
- 亜鉛と銅:医薬部外品の1日最大分量が設定されていないため、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の耐容上限量(UL)から、日本人の摂取量の上位1パーセンタイル値を差し引いて計算しました。亜鉛は35mg − 18.5mg = 16.5mgで17mg、銅は7.0mg − 2.41mg = 4.59mgで4.6mgです。検討会は、ULから日本人の平均的な摂取量を差し引く方法(亜鉛26mg、銅5.7mg)も比べたうえで、そちらでは多くの人がULを超えるおそれがあり、「国が定める上限値である以上、安全性の確保が特に重要である」として、上位1パーセンタイル値を使う方法を採りました
- マグネシウム:制度に加えられたときは、米国の通常の食品以外からの摂取量のUL(350mg)を当時の日本人の体重で補正した値を使っていました。ULも医薬部外品の1日最大分量も設定されていない成分なので、今回は栄養素等表示基準値(320mg)を上限値にしました
機能の文言はこう変わった
機能の文言は、20成分のうち鉄を除く19成分で書き換えられました。主なものは次のとおりです。
| 栄養成分 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 亜鉛 | 味覚を正常に保つのに必要な栄養素です。/皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。/たんぱく質・核酸の代謝に関与して、健康の維持に役立つ栄養素です。 | 味覚を正常に保つのを助ける栄養素です。/皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素のひとつです。 |
| カリウム | 正常な血圧を保つのに必要な栄養素です。 | 血圧を正常に保つのを助ける栄養素です。 |
| カルシウム | 骨や歯の形成に必要な栄養素です。 | 骨や歯を作るのに必要な栄養素のひとつです。 |
| 銅 | 赤血球の形成を助ける栄養素です。/多くの体内酵素の正常な働きと骨の形成を助ける栄養素です。 | 赤血球を作るのを助ける栄養素のひとつです。 |
| マグネシウム | 骨や歯の形成に必要な栄養素です。/多くの体内酵素の正常な働きとエネルギー産生を助けるとともに、血液循環を正常に保つのに必要な栄養素です。 | 骨や歯を作るのに必要な栄養素のひとつです。/エネルギーを作るのを助ける栄養素のひとつです。/血液循環を正常に保つのを助ける栄養素のひとつです。 |
| ナイアシン | 皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。 | エネルギーを作るのを助ける栄養素のひとつです。/皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素のひとつです。 |
| パントテン酸 | 皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。 | エネルギーを作るのを助ける栄養素のひとつです。 |
| ビタミンA | 夜間の視力の維持を助ける栄養素です。/皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。 | 暗所での視力を正常に保つのを助ける栄養素です。/皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素のひとつです。 |
| ビタミンB1 | 炭水化物からのエネルギー産生と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。 | エネルギーを作るのを助ける栄養素のひとつです。 |
| ビタミンB2 | 皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。 | エネルギーを作るのを助ける栄養素のひとつです。/皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素のひとつです。 |
| ビタミンB6 | たんぱく質からのエネルギーの産生と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。 | たんぱく質からエネルギーを作るのを助ける栄養素です。/皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素のひとつです。 |
| ビタミンB12 | 赤血球の形成を助ける栄養素です。 | 赤血球を作るのを助ける栄養素のひとつです。 |
| ビタミンC | 皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です。 | 抗酸化作用により細胞を保護するのを助ける栄養素のひとつです。/皮膚や粘膜、骨、血管のコラーゲン合成を助ける栄養素です。/鉄の吸収を助ける栄養素です。 |
| ビタミンD | 腸管でのカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける栄養素です。 | カルシウムの吸収を助ける栄養素です。/骨を作るのを助ける栄養素のひとつです。 |
| ビタミンE | 抗酸化作用により、体内の脂質を酸化から守り、細胞の健康維持を助ける栄養素です。 | 抗酸化作用により細胞を保護するのを助ける栄養素のひとつです。 |
| ビタミンK | 正常な血液凝固能を維持する栄養素です。 | 骨を作るのを助ける栄養素のひとつです。/正常な血液凝固を助ける栄養素です。 |
| 葉酸 | 赤血球の形成を助ける栄養素です。/胎児の正常な発育に寄与する栄養素です。 | 赤血球を作るのを助ける栄養素のひとつです。/胎児の正常な発育を助ける栄養素です。 |
※各文の主語(「亜鉛は、」など)は省略しています。n-3系脂肪酸とビオチンも、文末が「栄養素です」から「栄養素のひとつです」に変わりました。鉄の文言は変わっていません。
書き換えのルール
消費者庁は意見募集の結果公示で、文言の見直しの観点を次のように説明しています。
- 最新の科学的根拠に沿った表示にする
- 消費者と事業者が容易に理解でき、短い文言にする
- 組織や器官の主な構成要素である成分は「〜を作るのに必要な栄養素のひとつです」とする
- 同じ機能をもつ成分がほかにもある場合は「栄養素のひとつです」とし、その機能をもつ成分が一つだけの場合に限り「栄養素です」とする
亜鉛の「たんぱく質・核酸の代謝に関与して」を削った理由について、消費者庁は、たんぱく質や核酸の代謝を助ける機能は、皮膚や粘膜の健康維持を助ける機能に至る途中の機能であり、最終的な機能を表示するのがよいという検討会の意見を踏まえたと回答しています。
注意事項
摂取をする上での注意事項は、マグネシウムで「多量に摂取すると軟便(下痢)になることがあります」が「マグネシウムを多量に摂取すると軟便(下痢)になることがあります」に改まりました。カリウムの「腎機能が低下している方は本品の摂取を避けてください。」、ビタミンKの「血液凝固阻止薬を服用している方は本品の摂取を避けてください。」は、引き続き表示します。すべての栄養機能食品に付ける「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。一日の摂取目安量を守ってください。」も変わりません。
このほか、同じ内閣府令で、ドレッシングの名称の表示方法を定める別表第4の句読点が整えられています。
機能の文言は省略も言い換えもできない
機能の文言は、これまでどおり別表第11の文をそのまま表示する必要があります。消費者庁の通知「食品表示基準について」(消食表第139号)は、表示内容の主旨が同じでも、変化を加えたり省略したりすることは認められないとしています。
今回、1つの成分に複数の機能が並ぶものが増えました。意見募集では「複数の機能のうち一部だけを表示できるようにしてほしい」という要望も出ましたが、消費者庁は、同じ成分なのに違う文言の商品を消費者が複数選んで重複して摂取するおそれがあるとして、すべての機能を表示する取扱いを維持しました。
一方で、複数の成分の機能が同じ文言のときや、1つの成分の複数の機能の文末が同じときは、まとめて表示してもよいとされています。10月1日付けで改正された消食表第139号には、次の表示例が加わりました。
パントテン酸、ビタミンB1及びビタミンB2 は、エネルギーを作るのを助ける栄養素のひとつです。 ビタミンB2は、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素のひとつです。
いつから・経過措置
- 施行:令和8年10月1日(公布の日)
- 経過措置:令和12年(2030年)3月31日までに製造・加工・輸入される加工食品(業務用を除く)と、同日までに販売される生鮮食品(業務用を除く)は、改正後の別表第11にかかわらず、なお従前の例によることができます
つまり、これから約3年半は、旧基準の表示の商品と新基準の表示の商品が店頭に並ぶことになります。
意見募集で指摘された課題
この改正案には、令和8年7月1日から30日まで意見が募集され、17件(分割すると24項目)の意見が寄せられました。案は修正されていません。主な指摘と消費者庁の回答は次のとおりです。
- 上限値の引上げは慎重に:亜鉛(15mg→17mg)やマグネシウム(300mg→320mg)の引上げについて、複数の商品を併用したときの過剰摂取のリスクを考え、より保守的な安全マージンか、重複摂取への注意喚起の強化を求める意見がありました。消費者庁は、国が定める上限値である以上、安全性の確保を特に重視して慎重に検討したとし、食事からの習慣的な摂取量と栄養機能食品からの摂取量の両方を考慮して算出方法を整理したと回答しています
- 上限値が栄養素等表示基準値を下回る成分がある:ビタミンDは栄養素等表示基準値が9.0μgなのに上限値が5.0μgで、上限まで配合しても基準値に対する割合が56%ほどにしかならず、消費者に過小評価されるという指摘がありました。消費者庁は、栄養素等表示基準値には食事からの習慣的な摂取量が含まれること、ULが設定されている成分は食事と栄養機能食品の合計がULを超えないよう上限値を決める必要があることを説明しています
- 新旧の表示の混在:経過措置の期間中、どちらの基準の表示かを消費者が見分けられるよう、表示区分の明確化を求める意見がありました。消費者庁は「御意見として承ります」と回答しています
- 包材改版が続く事業者の負担:栄養素等表示基準値や特定原材料の改正の経過措置が令和9年度末製造分まで、今回が令和11年度末製造分までと改版が続くとして、令和12年度末までの猶予を求める意見がありました。消費者庁は、製品設計の変更と包材の改版に時間がかかることを踏まえて令和12年3月31日までの経過措置を設けたと回答しています
- 表現が断定的になるおそれ:機能の文言の見直しによって、消費者が摂取の必要性を誤認したり、必要以上に購入したりするおそれがあるとして、慎重な見直しを求める意見がありました。消費者庁は、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」と「消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。」の表示がもともと義務になっていることを示し、制度の周知と普及啓発に努めると回答しています
いま確認したいこと
消費者の方:することはありません。栄養機能食品は、国が商品ごとに審査したものではなく、表示された1日の摂取目安量を守ることが前提です。同じ成分を含む商品をいくつも併用すると、上限値を超えて摂取することになりかねません。表示の文言が新旧で違っても、成分そのものの働きが変わったわけではありません。
栄養機能食品を扱う事業者の方:
- 自社の成分が、下限値・上限値の変わった成分(亜鉛・カルシウム・鉄・銅・マグネシウム・パントテン酸・ビタミンB1・ビタミンB12・ビタミンD・ビタミンE)に当たるかを確認してください。下限値が上がった成分(カルシウム・パントテン酸・ビタミンB12・ビタミンD・ビタミンE)や上限値が下がった銅は、配合量によっては基準を外れます
- 栄養機能食品の基準を満たしているかは販売時に判断しますが、摂取時に基準を満たさなくなる食品に機能を表示することは望ましくないとされています。経時減衰も含めて確認してください
- 包材は、令和12年3月31日までに製造・加工・輸入する分までに、新しい文言へ切り替えてください
問合せ先:消費者庁食品表示課(電話03-3507-9138)