不動産クラウドファンディングの情報開示ルールが改正 令和8年(2026年)8月21日公布 利回りの根拠や利害関係人取引の説明が義務に

令和8年(2026年)8月21日、不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正する命令(令和8年内閣府・国土交通省令第4号)が公布されました(官報号外第187号)。同日、e-Govでパブリックコメントの結果も公示されています。

国土交通省は改正の背景について、「不動産特定共同事業の市場規模が拡大し、特に近年、インターネット上の契約を通じた一般投資家の参加拡大など、事業環境が変化する中」での投資家保護の実効性向上を図るものだと、意見に対する考え方の中で説明しています。いわゆる不動産クラウドファンディングを利用する側から見ると、事業者が示す「想定利回り」や「物件の価格」の裏づけが、これまでより詳しく書面に出てくることになります。

改正の6つの柱

パブリックコメントに寄せられた意見の中で、改正の内容は次の6つに整理されています(意見No.3。国土交通省はこれに対して「本改正による改正後の規定の趣旨等については、『不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について』において明確化いたします」と回答しています)。

改正の柱主な関係条文
利害関係人取引に関する価格妥当性の説明規則第40条第5号、第43条第2項第2号
想定利回り等の根拠開示規則第43条第2項第6号ロ・ハ
工事完了前案件に関する説明・報告規則第43条第1項 ほか
出資金の使途の説明規則第50条第9号 ほか
財産管理報告書の記載事項の拡充規則第50条
電子取引業務に係るホームページ等掲載事項の拡充法第31条の2第3項、規則第55条第1項

利害関係人に売るときの「鑑定評価」

事業者(またはその関係会社)が保有する物件をファンドに売る、あるいはファンドの物件を関係会社に売る——こうした利害関係人との取引は、価格の付け方次第で投資家の利益を損ないます。

改正後の規則第40条第5号は、対象不動産の売却等を行う場合(売却するときは利害関係人に対して売却する場合に限る)に、利害関係を有しない不動産鑑定士による鑑定評価の評価額に相当する額で売却等をするために必要な措置を講じていない状況を、禁止される行為として位置づけます。

意見募集で示された案の段階では「不動産鑑定士であって利害関係人等でないもの」という書きぶりでしたが、公布された条文では「利害関係を有しない不動産鑑定士(不動産の鑑定評価に関する法律(昭和38年法律第152号)の規定により、不動産の鑑定評価に係る業務をすることができない者を除く。)」に改められました。

契約成立前書面の側でも、鑑定評価の有無、利害関係人でない売主が過去に行った直近の売買の価格・売買契約の締結の日・売主の商号や氏名(やむを得ない事情により開示できない場合はその旨)、近傍同種の不動産の売買価格若しくはその水準、そして鑑定評価額や近傍の価格と取引額との差額および当該差額を妥当と判断する理由を記載することとされました(規則第43条第2項第2号)。

賃貸のケースについても同様に、賃料の鑑定評価の有無、近傍同種の不動産の賃料またはその水準、差額と差額を妥当と判断する理由を記載します(同項第3号)。

「想定利回り」の数字の裏づけを書く

勧誘に際して分配見込額(収益または利益の分配により得ることが見込まれる額)や利回り等を表示する場合、その数字がどこから来ているかを書くルールが加わりました。

改正後の規則第43条第2項第6号ロ・ハは、分配見込額の算定の根拠となる不動産取引ごとに、次の事項を記載することを求めています。

  • 不動産取引の額
  • 対象不動産の所在、地番、用途、土地面積、延べ床面積その他の対象不動産を特定するために必要な事項
  • 不動産取引の取引態様の別
  • 将来行われることが見込まれる不動産取引を算定の根拠とする場合は、当該不動産取引が予想に基づくものである旨

あわせて、分配見込額の算定の基礎となる期間が契約期間より長い場合には、契約期間での分配見込額とその期間を示すこと、予想に基づくものであり不確実である旨を示すことも必要です。

「根拠」の書き方については、国土交通省は意見への回答の中で、当該不動産取引の額が「実現困難な額になっていないかを不動産取引相場などの具体的な根拠によって示す」こと、および「当該不動産取引に関する契約の状態を記載するなど、不動産取引が行われる蓋然性の程度が根拠をもって記載すること」が考えられるとし、記載例を「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」で明確化するとしています。

集めたお金を「何に使ったか」

財産管理報告書について、金銭をもって出資の目的とする契約では、これまでの案の「その期間において出資された金銭の額及び使途」が、公布時には「その期間において支出した金銭の額及び使途」に改められました(規則第50条第9号)。集めた額ではなく、実際に何に支出したかを報告する形です。

いつから適用されるか

附則の施行期日と経過措置は、意見募集時の案から後ろ倒しになっています。

内容案(意見募集時)公布された内容
原則の施行期日公布の日公布の日(令和8年8月21日)
第9条・第17条第2項の改正規定令和8年5月1日令和8年10月1日
新規則第40条の適用開始(この日以後に締結される契約)令和8年9月1日令和8年12月1日
既存業者が第43条・第50条・第55条第1項について従前の例によれる期限令和8年9月1日令和8年11月30日

なお、経過措置の対象は第43条(契約成立前書面)・第50条(財産管理報告書)・第55条第1項(電子取引業務のホームページ掲載事項)です。これら以外の改正規定は、公布の日から効力を持ちます。

指摘された課題

意見募集は令和8年3月26日から4月26日まで行われ、154件(47者)の意見が寄せられました。国土交通省は「提出意見を踏まえた案の修正」があったと公示しています。寄せられた意見には、方向性に賛同したうえで実務への影響を指摘するものが目立ちます。

小規模事業者が市場から退出するおそれ(意見No.4)——「一連の義務付けによる事業者負担の増大が不動産クラウドファンディング市場の健全な発展を阻害するという本末転倒の結果をもたらさないか危惧する」とし、鑑定評価費用・資料作成コスト・システム対応費用などのコンプライアンスコストの増加が「資本力の小さな事業者を市場から退出させ、大規模事業者への集中を促しかねない」と指摘されました。あわせて、コスト増が「最終的に投資家が受け取る利回りの低下として顕在化する」というパラドックスにも触れ、施行から一定期間(例えば2年)経過時点で規制の実効性と市場への影響を体系的に検証するよう求めています。国土交通省は、本改正が有識者・業界の意見を踏まえた中間整理を踏まえたものであり「投資家にとってわかりやすく安心して投資できる市場の整備のために必要な措置」と回答したうえで、「今後とも、法令の趣旨や市場の変化に合わせて、その時々の状況に応じた制度ベースの検討を行ってまいります」としています。

準備期間が足りない(意見No.132〜134)——「契約成立前書面、募集画面、HP掲載事項、財産管理報告書、社内審査資料及びシステム改修等の見直しが必要」であり、経過措置期間を「少なくとも令和9年4月1日まで延長すること」を求める意見が出ました。国土交通省は「実務対応の準備に要する期間として必要な期間を定めていると考えております」と回答しています。結果として、公布された附則の期限は案の令和8年9月1日から令和8年11月30日・12月1日に改まりました。

判断基準を明確にしてほしい(意見No.3ほか)——「投資家保護の充実を図りつつ、実務において過度な萎縮や形式負担を招かないよう、規則本文、監督上の考え方又はQ&A等において判断基準を明確化していただきたい」との意見に対し、国土交通省は「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」で明確化するとしています。

二重管理のリスク——電子取引業務のホームページ表示と契約成立前書面の双方で同一内容を管理することになると「更新漏れや整合不一致のリスクが高まる」との指摘に対して、国土交通省は、法第31条の2第3項・規則第55条第1項が求める事項を記載した書面へのハイパーリンクが「電子取引業務の相手方の一部のみに表示されるサイト構成になっている場合」や、リンク先にそれらの事項があることを案内する表示・タグを「ハイパーリンク自体又はそれに近接した分かりやすい場所に表示していない場合」は、法第31条の2第3項の趣旨に照らして適切とは言えない状態にあると考えられる、と回答しました。

同時に改正された関連文書

規則の改正にあわせて、次の文書の改正も同じ時期に公示されています。いずれも規則の解釈・運用を示すもので、実体的なルールは上記の命令に定められています。

  • 「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」の一部改正(e-Gov案件番号155260308)
  • 「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」の一部改正(同155260310)
  • 「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)7 不動産特定共同事業関係」等の一部改正(同225026062)

誰に関係するか

不動産特定共同事業の許可を受けた事業者、小規模不動産特定共同事業の登録を受けた事業者、特例事業者・委託特例事業者、そして電子取引業務を行う事業者に、書面・画面・報告書の見直しが必要になります。既存の許可・登録業者には令和8年11月30日までの猶予があります。

出資する側から見ると、令和8年12月以降に交付される契約成立前書面では、想定利回りがどの不動産取引を前提に計算されているか、利害関係人との取引かどうか、鑑定評価が取られているかが読み取れるようになります。数字そのものより、その数字の根拠が書かれているかを確認する材料が増えた、という位置づけです。

出典

家族に説明するなら

インターネットで少しずつお金を出し合って不動産に投資する仕組みがあるんだ。そのときに、会社が『どれくらい儲かる見込みか』をどうやって計算したのか、集めたお金を何に使ったのかを、これまでよりくわしく説明しなければいけなくなったよ。2026年8月21日に決まって、くわしい説明は同じ年の12月から本格的に始まるよ。

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