令和8年(2026年)8月24日、金融庁は自己資本比率規制(第1の柱・第3の柱)に関する告示の一部改正を公布しました(官報号外第188号、金融庁告示第52号〜第65号ほか、計29本)。あわせて「自己資本比率規制に関するQ&A」の一部改正も公表されています。
金融庁は案件の概要を次のように説明しています。
本件は、銀行等によるリスクマネー供給を円滑化する観点から、一定の要件を満たす出資について100パーセントのリスク・ウェイトを適用可能とするバーゼル合意上の規定を踏まえた制度整備を行うものです。
何が変わるか
自己資本比率は、大まかにいえば「自己資本の額 ÷ リスク・アセットの額」です。リスク・アセットは、資産ごとにリスク・ウェイトを掛けて算出します。リスク・ウェイトが高いほど、同じ額の資産を持つのに厚い自己資本が必要になります。
銀行1柱告示(平成18年金融庁告示第19号)では、株式及び株式と同等の性質を有するものに対するエクスポージャーのリスク・ウェイトは原則250パーセント、投機的な非上場株式に対する投資は400パーセントです。株式への出資は、貸出よりも重い扱いになっています。
今回新設される第76条第4項は、この原則の例外を設けるものです。次の要件をすべて満たすものについて、リスク・ウェイトを100パーセントとすることができます。
第1号:政府関係機関等との共同投資であること
我が国の政府関係機関又はその子法人等(以下この号において「政府関係機関等」という。)と共同で行う投資であって、政府出資その他の財政上の措置により、政府関係機関等が当該投資に係る信用リスクの相当部分を引き受けるものであること。
第2号:投資先が次のいずれかの会社であること
- 銀行法施行規則第17条の2第12項に規定する新規事業分野開拓会社
- 同項本文に規定する事業再生会社
- 同項に規定する地域活性化事業会社、または規則第17条の7の3第1項に規定する特例事業再生会社(同条第3項本文の適用を受けるものを除く)若しくは同条第2項の適用を受ける会社
上限がある
無制限に100パーセントを使えるわけではありません。第76条第4項は、対象を次の範囲に限っています。
| 区分 | 上限の計算 |
|---|---|
| 国際統一基準行 | 総自己資本の額に10パーセントを乗じて得た額を上回らない部分 |
| 国内基準行 | 自己資本の額に10パーセントを乗じて得た額を上回らない部分 |
この枠を超えた部分には、従来どおりのリスク・ウェイトが適用されます。
改正は、標準的手法採用行だけでなく、内部格付手法採用行にも及びます(第166条で第76条第4項を準用)。また、他の金融機関等の資本調達手段に関する第76条の2の3・第178条の2の3にも、第76条第4項により100パーセントが適用されるエクスポージャーは100パーセントとする旨が書き加えられました。
対象となる金融機関の範囲
同じ内容の改正が、業態ごとの告示に横並びで行われています。
- 銀行、銀行持株会社
- 信用金庫・信用金庫連合会
- 信用協同組合・信用協同組合連合会
- 労働金庫・労働金庫連合会
- 農林中央金庫、農業協同組合等、漁業協同組合等
- 株式会社商工組合中央金庫
- 最終指定親会社(およびその子法人等)
第3の柱(開示)に関する告示も同時に改正され、開示事項が手当てされています。
指摘された課題
意見募集は令和8年6月8日から7月8日まで行われ、2先から計3件の意見が寄せられました。件数は少ないものの、要件の読み方をめぐる実務的な確認が中心です。
ファンド経由の出資はどう扱われるか(意見No.1)——「政府関係機関等と共同で出資するファンドを通して行う投資も含まれるのか」との質問に対し、金融庁は「政府関係機関等と共に行う、同一のファンド又は事業法人への出資が該当します」としたうえで、ファンドを通じた出資については共同出資の場合も含めて第76条の5(みなし計算)の規定に従ってリスク・ウェイトを算出することになる、と回答しました。
「政府出資その他の財政上の措置」の範囲(意見No.2)——「基本的には国から政府関係機関等への出資を想定しております」としつつ、金融庁は「政府関係機関等が当該投資の裏付けとなる資金調達を財政融資により行っていたり、当該投資の裏付けとなる資金調達に際して政府保証を付与されている場合も含まれると考えられます」と回答しています。
銀行業高度化等会社を対象に加えてほしい(意見No.3)——「投資専門子会社等の既存の枠組みでは対応が困難な重要インフラ領域(データセンター等のDX関連・電力関連等、わが国の再成長に不可欠な基盤産業・企業)への支援、資金の呼込みを実現するうえで」、投資対象に銀行業高度化等会社(特に他業銀行業高度化等会社)を含めることを検討してほしい、という意見が出ました。金融庁は、銀行法上、健全性確保の観点から議決権保有制限が設けられている趣旨に鑑み、本例外措置の対象を「銀行法において、投資専門子会社を通じた投資について議決権保有制限が緩和された類型」に限定していると説明し、銀行業高度化等会社については「一定以上の議決権保有に認可が必要となっている点を踏まえ、対象に含めないこととしました」と回答しました。
いつから
告示は令和8年8月24日に公布され、令和9年(2027年)3月31日から適用されます。年度末の自己資本比率の算出からの適用になります。
誰に関係するか
直接の名宛人は金融機関ですが、資金を受け取る側から見ると、政府系金融機関やファンドとの協調出資という形をとる場合に、銀行側の自己資本上の負担が軽くなるということです。対象となる会社の類型は、銀行法施行規則が定める新規事業分野開拓(ベンチャー)・事業再生・事業承継・地域活性化の枠組みに対応しています。
出典
- 「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について(自己資本比率規制(第1の柱・第3の柱)に関する告示)(金融庁・令和8年8月24日)
- 銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準の一部を改正する件(令和8年金融庁告示第52号・令和8年8月24日公布/官報号外第188号)
- 令和8年8月24日付 官報 目次(インターネット版官報)