令和8年(2026年)7月28日に発生した令和8年熊本地震による災害について、「特定非常災害」に指定する政令が令和8年8月7日に閣議決定され、同日公布・施行されました。あわせて、激甚災害の指定と、法テラスの無料法律相談に関する政令も同日に公布・施行されています。
| 指定 | 主な内容 | 期限など |
|---|---|---|
| 特定非常災害 | 運転免許などの有効期間の延長 | 令和9年1月27日まで |
| 特定非常災害 | 期限に間に合わなかった届出等の免責 | 令和8年11月27日まで |
| 特定非常災害 | 相続の承認・放棄をすべき期間の伸長 | 令和9年3月31日まで |
| 特定非常災害 | 民事調停の申立手数料が不要 | 令和11年6月30日まで |
| 特定非常災害 | 法人の破産手続開始の決定の特例 | 令和10年7月27日まで |
| 総合法律支援法の指定 | 法テラスの無料法律相談(資力を問わない) | 令和9年7月27日まで |
| 激甚災害(本激) | 災害復旧事業の国庫補助率の引上げ | ― |
令和8年熊本地震のまとめ、税の特例、手続の特例もあわせて確認できます。
「特定非常災害」とは
特定非常災害の指定は、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成8年法律第85号)に基づくものです。この法律は、行政上の権利利益の満了日の延長などの特別措置をあらかじめ用意しておき、政令で指定することで災害時に迅速に発動できるようにした仕組みです。
総務省は今回の指定の理由について、人的被害・住家被害の程度が多数であること、多くの被災者が避難生活を余儀なくされ被災地域全体の日常生活や業務環境に多大な支障が生じていること、復旧・復興に時間を要することが見込まれることを挙げています。
適用される5つの措置
1. 運転免許などの有効期間が延長される
被災者が、運転免許証のような有効期間がある許認可等について、更新等のために必要な手続をとれない場合があることを考慮した措置です。許認可等に係る有効期間を令和9年1月27日まで延長することができます(法第3条、政令第3条)。
ただし、この政令だけで自動的にすべての免許が延びるわけではありません。延長措置を講ずる具体的な行政上の権利利益、地域、対象者、延長後の満了日は、各府省等の告示によって別途指定されます。総務省はその内容を取りまとめた「存続期間(有効期間)が延長される許認可等一覧」を公表し、随時更新しています。令和8年8月10日15時現在の版には、警察庁・法務省・国土交通省の3府省庁分(運転免許証、教習所の卒業証明書、猟銃の許可、在留カード、宅地建物取引士証、建設業許可、海技免状など)が掲載されています。
一覧の内容は延長される免許・資格の一覧の記事で整理しています。
自分の免許や資格が対象かどうかは、この一覧が公表されてから確認してください。告示による個別の指定は同日から始まっており、第1弾として「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第三条第二項に基づき、同条第一項の規定による延長の措置の対象となる特定権利利益、当該措置の対象者及び延長後の満了日を指定する件」(令和8年法務省・厚生労働省告示第6号)が8月7日に公布されています。
2. 期限に間に合わなかった届出等の責任を問われない
事業報告書の提出、薬局の休廃止等の届出のような、履行期限のある法令上の義務が、特定非常災害によって本来の履行期限までに履行されなかった場合であっても、令和8年11月27日までに履行すれば、行政上および刑事上の責任を問われないとされます(法第4条、政令第4条)。
3. 法人の破産手続開始の決定の特例
特定非常災害により債務超過となった法人については、債権者から破産手続開始の申立てがされたとしても、支払不能等の場合を除き、令和10年7月27日までは破産手続開始の決定をすることができないとされます(法第5条、政令第5条)。
4. 相続の承認・放棄をすべき期間の伸長
特定非常災害の発生日(令和8年7月28日)において、令和8年熊本地震に際し災害救助法が適用された区域に住所を有していた相続人については、相続の承認または放棄をすべき期間(いわゆる熟慮期間)が令和9年3月31日まで伸長されます(法第6条、政令第6条)。
相続をするかどうかを判断するには財産や負債の把握が必要ですが、被災するとその調査自体が難しくなります。この措置は、その判断のための時間を確保するものです。
5. 民事調停の申立手数料が不要になる
発生日において災害救助法が適用された区域に住所等を有していた方が、今般の災害に起因する民事に関する紛争について、令和11年6月30日までの間に民事調停法による調停の申立てをする場合には、申立手数料が不要になります(法第7条、政令第7条)。
法テラスの無料法律相談(総合法律支援法の指定)
同じ8月7日に閣議決定された「令和八年熊本地震による災害についての総合法律支援法第三十条第一項第四号の規定による指定等に関する政令」により、令和8年熊本地震による災害が総合法律支援法第30条第1項第4号の非常災害に指定されました。
これにより、日本司法支援センター(法テラス)は、令和9年7月27日までの間、被災者に対し、資力の状況を問わずに、生活の再建に当たり必要な無料法律相談を実施できるようになります。対象の地区は、令和8年熊本地震に際し災害救助法が適用された災害発生市町村の区域です。
法テラスは政令の施行に合わせ、被災者専用のフリーダイヤル「法テラス災害ダイヤル」(0120-078309/おなやみレスキュー)で問合せを受け付けています。
激甚災害の指定(国庫補助率の引上げ)
同日、「令和8年熊本地震による災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」も閣議決定され、公布・施行されました。激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律に基づき、令和8年熊本地震による災害を激甚災害として指定し、適用すべき措置を指定するものです。全国を対象とする指定(いわゆる本激)です。
農林水産省関係では、次の措置が指定されました(補助率は農林水産省が示す過去5カ年の実績の平均値)。
| 措置 | 国庫補助率 |
|---|---|
| 公共土木施設災害復旧事業等(漁港等・激甚災害法第3条、第4条) | 71%→84%に嵩上げ |
| 農地等の災害復旧事業等(農地、農業用施設、林道・第5条) | 農地は86%→97%に嵩上げ |
| 農林水産業共同利用施設災害復旧事業(農協等の倉庫等・第6条) | 20%→50%(農林水産大臣が告示した市町村は90%) |
これは地方公共団体や事業者への財政援助の仕組みで、被災した個人が直接申請するものではありません。
いま確認したいこと
- 自分の免許・資格の有効期間が延びるかどうかは、各府省の告示と、総務省が取りまとめる一覧で確認してください。政令の公布だけでは個別の免許は特定されません。一覧は随時更新されるため、いま載っていなくても後日追加されることがあります(一覧の内容はこちら)。
- 相続については、令和8年7月28日時点で災害救助法適用区域に住所があったかどうかが要件です。判断に迷う場合は法テラス災害ダイヤルへ相談できます。
- 期限に間に合わなかった届出等の免責は令和8年11月27日までです。時間の余裕があるうちに、所管の窓口に事情を伝えて手続を進めてください。