仕事・雇用 重要度: 高

令和8年熊本地震で雇用調整助成金に特例 全国の事業所が対象・生産指標の確認期間を1か月に短縮 令和8年(2026年)8月25日に関係省令が公布

厚生労働省は令和8年(2026年)8月20日、「令和8年熊本地震」に伴い事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対して、雇用調整助成金の特例措置を実施すると発表しました。

重要な点は、特例の多くが熊本県内に限られないことです。取引先の被災や交通の途絶などによって売上が落ちた事業所であれば、全国どこの事業所でも対象になります。

なお同日開催の労働政策審議会職業安定分科会で審議のうえ答申を得ており、厚生労働省は「速やかに関係省令を公布して施行する」としていました。その関係省令は令和8年8月25日に公布・施行されています(後述)。

雇用調整助成金とは

経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業・教育訓練・出向を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当や賃金等の一部を助成する制度です。

従業員を解雇せずに雇用を維持することが目的の助成金です。

対象になる事業主

令和8年熊本地震に伴う経済上の理由により事業活動を縮小する事業所が対象です。

ここでいう「経済上の理由」(経済的な取引関係の悪化・困難等の事情)の具体的なケースとして、厚生労働省は次の5つを挙げています。

  1. 需要の減少または風評被害による販売または集客の困難
  2. 取引先の被災による、原材料や商品等の取引困難
  3. 交通の途絶による、製品や原材料などの運送、従業員の通勤などの生産及び販売環境の悪化
  4. 電気、水道及びガス等の供給や通信の途絶または困難による生産及び販売環境の悪化
  5. 損壊した施設または設備等の修理業者の手配または修理部品の調達等に関して災害の影響等により期間を要する場合

施設・設備が壊れた場合も対象になりうる

雇用調整助成金は本来、施設や設備の損壊に伴う事業活動の休止・縮小は助成の対象になりません。あくまで「経済上の理由」による縮小が対象だからです。

しかし今回の特例では、地震により施設や設備が直接的な被害を受けた場合でも、上の①〜⑤に掲げる経済上の理由を伴うものであれば助成対象として扱われます。

たとえば「工場の設備が壊れたが、修理業者の手配や修理部品の調達に災害の影響で時間がかかっている」というケースがこれにあたります。

全国の事業所を対象とする4つの特例

特例通常の取扱い特例の内容
生産指標の確認期間最近3か月間の月平均値が前年同期比10%以上減少最近1か月に短縮
雇用量の増加最近3か月平均が前年同期比で5%超かつ6名以上(中小企業は10%超かつ4名以上)増えていると対象外要件を撤廃(増えていても対象)
事業所の設置から1年未満対象外対象とする
計画届事前の提出が必要事後提出も可能

1. 生産指標の確認期間を3か月から1か月に短縮

通常は、販売量・売上高等の事業活動を示す生産指標の最近3か月間の月平均値が、前年同期と比べて10%以上減少している事業所であることが要件です。

特例では、この比較期間を最近1か月とします。3か月分の数字がそろうのを待たずに申請できるため、迅速な適用が可能になります。

2. 雇用量が増えていても対象

通常は、その事業所で雇用している労働者と受け入れている派遣労働者の合計人数の最近3か月の平均値が、前年同期比で5%超かつ6名以上(中小企業事業主の場合は10%超かつ4名以上)増加している場合は助成対象になりません。

特例では、この要件を撤廃します。

3. 設置後1年未満の事業所も対象

通常は、雇用保険適用事業所の設置後1年未満の事業主は対象になりません。

特例では、令和8年7月28日時点において事業所設置後1年未満の事業主も助成対象とします。この場合、生産指標は地震発生日前のいずれかの1か月(雇用保険適用事業所の設置後であって労働者を雇用している場合に限る)の数値と比較します。

4. 計画届の事後提出が可能

通常は、助成対象となる休業等を行うにあたり、事前に計画届の提出が必要です。特例では事後の提出も可能になります。

届出が間に合わないことを理由に、休業の開始を遅らせる必要はありません。

熊本県内の事業所への追加特例

熊本県内に所在する事業所については、上の4つに加えて次の2つが実施されます。

残業相殺のルールの撤廃

通常は、休業等をさせる一方で所定外労働(残業)を行わせた場合、支給対象となる休業等の延べ日数から所定外労働時間分を控除します。特例ではこの取扱いを撤廃します。

教育訓練の実施状況による助成率引下げの撤廃

通常は、支給日数が30日を経過した日以降の期間について、教育訓練の実施率が10%未満の場合に助成率を引き下げます。特例ではこの取扱いを撤廃します。

関係省令が公布された(令和8年8月25日)

令和8年(2026年)8月25日、雇用保険法施行規則の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第134号)が公布されました。官報特別号外第46号に掲載されています。根拠は雇用保険法(昭和49年法律第116号)第62条第1項第1号及び第2項です。

省令は、雇用保険法施行規則の附則に第15条の4の5を新設しました。内容は次のとおりです。

第百二条の三第一項第一号イに該当する事業主であつて、令和八年熊本地震に伴う経済上の理由により、急激に事業活動の縮小を余儀なくされたものが行う令和八年熊本地震に際し熊本県の区域内に所在する事業所における第百二条の三第一項第二号イに規定する対象被保険者の休業等(同項第二号イの対象期間の初日が令和八年七月二十八日から起算して六月が経過する日までの間にあるものに限る。)については、同条第二項第二号の規定は、適用しない。

適用が外される第102条の3第2項第2号は、支給日数が30日に達した日の属する判定基礎期間の後の期間について、休業等の実施日に対する教育訓練の実施日の割合が10分の1未満の場合に助成額を引き下げる(4分の1、中小企業事業主は2分の1とする)規定です。つまり、上で挙げた熊本県内の事業所への追加特例のうち「教育訓練の実施状況による助成率引下げの撤廃」を、省令の条文として手当てしたものです。

省令の附則は次のとおりです。

この省令は、公布の日から施行し、この省令による改正後の雇用保険法施行規則の規定は、令和八年七月二十八日以降に開始した同令第百二条の三第一項第二号イに規定する休業等について適用する。

公布の日(8月25日)から施行され、発災日である令和8年7月28日以降に開始した休業等にさかのぼって適用されます。すでに休業を始めている事業主も対象です。

なお、全国の事業所を対象とする4つの特例と、熊本県内の残業相殺の撤廃については、この省令に対応する条文は置かれていません。取扱いは厚生労働省の発表資料とリーフレットで示されています。

パブリックコメントは実施されていない

この省令について、意見公募手続(パブリックコメント)は行われていません。厚生労働省は同じ8月25日、その理由をe-Govで公示しました。

今般制定された、雇用保険法施行規則の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第134号)は、令和8年熊本地震の影響を踏まえ、雇用調整助成金の特例を緊急に定める必要があるものであり、行政手続法(平成5年法律第88号)第39条第4項第1号に該当するため、意見公募手続を実施いたしませんでした。

行政手続法第39条第4項第1号は、「公益上、緊急に命令等を定める必要があるため、意見公募手続を実施することが困難であるとき」に意見公募手続を要しないと定めています。

いつの休業が対象になるか

発災日(令和8年7月28日)から令和9年1月27日までの間に開始した休業等が対象です。

この期間内に開始した休業・教育訓練・出向であることが基準です。

本特例は1年の期間内に実施した休業等が助成の対象になりますが、支給の上限日数(1年間で100日)に達した場合は、上限日数までが助成対象となります。

申請にあたっての注意

  • 雇用保険の適用事業所であることなど、その他の要件もあります。
  • 雇用調整助成金を申請した事業主は、提出または提示した書類の写しその他支給要領に規定する各種書類を、支給決定日の翌日から起算して5年間保存する必要があります。
  • 具体的な助成率や申請書類は、厚生労働省の雇用調整助成金特設ページのガイドブック等で確認してください。

まず確認すること

  • 熊本県外の事業主でも、取引先の被災・交通の途絶・電気や水道の途絶などで売上が落ちていれば対象になりえます。管轄の都道府県労働局またはハローワークに相談してください。
  • 生産指標は最近1か月で前年同月比10%以上の減少を確認します。
  • 施設・設備が直接壊れて休業している場合も、経済上の理由を伴うかという観点で事情を整理して相談してください。

被災した事業者向けの支援制度全般は令和8年熊本地震のまとめ、被災者向けの支援は災害で被災したときの公的支援・相談先まとめにまとめています。熊本地震で有効期間が延びる許認可等については熊本地震で有効期間が延びる免許・資格の一覧、税の特例は令和8年熊本地震の税の特例、被災中小企業向けの信用保証・融資は災害関係保証の記事をご覧ください。

出典

家族に説明するなら

熊本の地震のせいで仕事が減ってしまった会社のための助成金の話だよ。雇用調整助成金というのは、売上が落ちて仕事が減ったときに、会社が従業員を辞めさせずに休ませて休業手当を払った場合、その一部を国が肩代わりしてくれる制度なんだ。ふつうは「過去3か月の売上の平均が前の年より10%以上減っている」ことを確かめないと使えないんだけど、今回の地震の特例では「1か月分」で確認できるようになるから、早く申請できるようになるよ。しかもこの特例は熊本県の会社だけじゃなくて、全国の会社が対象。取引先が被災して品物が入ってこない、交通が止まって運べない、といった理由で仕事が減った会社なら、どこの県でも使えるんだ。熊本県内の会社にはさらに条件がゆるくなる特例が2つ追加されるよ。対象になるのは、令和8年7月28日から令和9年1月27日までの間に始めた休業。お店や工場が壊れて休んだ場合でも、修理の業者さんの手配や部品の取り寄せに時間がかかっているといった事情があれば対象になるからね。まずはハローワークに相談してみてね。

本記事は公式情報をもとにした要約です。最新かつ正確な情報、申請条件、期限は必ず公式ページでご確認ください。