【9月29日 追記】 第22条(災害公営住宅)の特例を受ける区域が、9月29日の官報で国土交通省告示第1173号として定められました。対象は熊本県八代市、宇城市及び八代郡氷川町の3市町です。詳しくは下の「措置4」を参照してください。
令和8年(2026年)9月17日の官報(特別号外第50号)に、「令和八年熊本地震による災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令の一部を改正する政令」(令和8年政令第298号)が掲載され、同日公布・施行されました。9月15日に閣議決定されたものです。
令和8年熊本地震を激甚災害に指定する政令は8月7日に公布・施行されていますが(令和8年政令第259号)、その後の被害状況の調査が進んだ結果、適用すべき措置が4項目追加されました。
追加された4つの措置
改正政令の本体は1行です。
本則の表中「まで」の下に「、第十六条、第十七条、第十九条、第二十二条」を加える。
激甚災害法(激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律・昭和37年法律第150号)の条文番号だけを足す改正ですが、中身は次の4つです。
| 条 | 措置 | 通常の災害 | 激甚災害の指定時 |
|---|---|---|---|
| 第16条 | 公立社会教育施設災害復旧事業に対する補助 | 補助なし | 経費の2/3を補助 |
| 第17条 | 私立学校施設災害復旧事業に対する補助 | 補助なし | 経費の1/2を補助 |
| 第19条 | 市町村が施行する感染症予防事業に関する負担の特例 | 国1/3・都道府県1/3・市町村1/3 | 国2/3・都道府県1/3(市町村の負担なし) |
| 第22条 | 罹災者公営住宅建設等事業に対する補助の特例 | 補助率2/3・滅失戸数の3割まで | 補助率3/4・滅失戸数の5割まで |
第16条と第17条は、通常の災害ではそもそも国庫補助がない事業です。激甚災害に指定されて初めて補助の対象になるという点で、今回の追加で変化が大きいのはこの2つです。
措置1:公民館・図書館・体育館の復旧に2/3の補助(第16条)
特定地方公共団体が設置する公立の公民館、図書館、体育館等の災害復旧事業に要する経費の2/3が補助されます。
補助の対象になるのは、復旧事業費が1つの施設ごとに60万円以上のものです(激甚災害法施行令第34条)。
措置2:私立学校の復旧に1/2の補助(第17条)
私立の学校の災害復旧事業に要する経費の1/2が補助されます。対象になるのは、次の2つの条件を両方満たす場合です(激甚災害法施行令第36条・第37条)。
- 工事費 ÷ 児童等の数 が 750円以上であること
- かつ、1つの私立学校あたりの工事費が次の額以上であること
| 学校の種類 | 工事費の下限 |
|---|---|
| 幼稚園 | 60万円以上 |
| 特別支援学校 | 90万円以上 |
| 小学校、中学校 | 150万円以上 |
| 高等学校 | 210万円以上 |
| 短期大学 | 240万円以上 |
| 大学 | 300万円以上 |
内閣府の資料には参考として、激甚災害法第3条・第4条の局激が適用される災害では補助率2/5以内の予算補助(私立学校施設整備費補助金)が局激適用区域内の私立学校を対象に行われる、と注記されています。今回のように本激として第17条が指定される場合は、法律に基づく1/2の補助になります。
措置3:市町村の感染症予防事業の負担がなくなる(第19条)
災害時の感染症の発生予防・まん延防止のために行う消毒、害虫駆除等の事業について、通常は国1/3・都道府県1/3・市町村1/3の負担ですが、激甚災害の指定により国2/3・都道府県1/3となり、特定地方公共団体である市町村の負担がなくなります。
内閣府の激甚災害制度Q&Aは、この第19条の特例について「局激においてはこの特例措置は適用されず、本激の場合のみ適用されます」と明記しています。令和8年熊本地震は本激の指定なので、この特例が働きます。
措置4:災害公営住宅の補助率3/4・戸数5割まで(第22条)
激甚災害により滅失した住宅に居住していた低額所得者に賃貸するための公営住宅(罹災者公営住宅)を建設等する場合、建設費等に要する費用の補助率が2/3から3/4に、補助対象戸数が滅失戸数の3割から5割に引き上げられます。
ここは条件が細かい部分です。内閣府の激甚災害制度Q&Aによると、特例を適用すべき地域は激甚災害法施行令第41条第2項により国土交通大臣が告示することになっていて、対象は次のいずれかを満たす市町村です。
- 滅失住宅の戸数が100戸以上
- 滅失住宅の戸数の割合が、当該市町村の住宅戸数の1割以上
つまり、政令で第22条が指定されたからといって、県内のどの市町村でも3/4の補助が受けられるわけではありません。
9月29日に対象の3市町が告示された
この地域は、令和8年9月29日の官報に「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律施行令第四十一条第二項の規定に基づき、令和八年熊本地震による災害に係る同条第一項の市町村の区域を定める件」(国土交通省告示第1173号)として告示されました。定められた区域は次のとおりです。
| 県 | 市町村 |
|---|---|
| 熊本県 | 八代市、宇城市、八代郡氷川町 |
いずれも第12条(中小企業の災害関係保証)の局激の対象にも入っている市町です。一方、局激の対象に入っている御船町・嘉島町は、この告示には入っていません。この2町で災害公営住宅を建てる場合は、特例ではなく公営住宅法の通常の補助(2/3・滅失戸数の3割まで)が前提になります。
年度末に一括して告示される第16条・第19条とは違い、第22条の区域は政令の追加から12日で告示されました。
いまの指定の全体像
9月17日時点で、令和8年熊本地震による災害に適用される措置は次のとおりです。
本激(災害そのものを指定するもの)
| 条 | 措置 | 追加日 |
|---|---|---|
| 第3条・第4条 | 公共土木施設災害復旧事業等に関する特別の財政援助(過去5カ年平均で71%→84%) | 8月7日 |
| 第5条 | 農地等の災害復旧事業等に係る補助の特別措置(農地は86%→97%) | 8月7日 |
| 第6条 | 農林水産業共同利用施設災害復旧事業費の補助の特例(20%→50%、告示地域は90%) | 8月7日 |
| 第16条 | 公立社会教育施設災害復旧事業に対する補助(2/3) | 9月17日 |
| 第17条 | 私立学校施設災害復旧事業に対する補助(1/2) | 9月17日 |
| 第19条 | 市町村が施行する感染症予防事業に関する負担の特例(国2/3) | 9月17日 |
| 第22条 | 罹災者公営住宅建設等事業に対する補助の特例(3/4・5割) | 9月17日 |
| 第24条 | 小災害債に係る元利償還金の基準財政需要額への算入等 | 8月7日 |
局激(市町村を指定するもの)
| 条 | 措置 | 対象市町村 |
|---|---|---|
| 第12条 | 中小企業信用保険法による災害関係保証の特例 | 熊本県八代市、宇城市、御船町、嘉島町、氷川町 |
第12条の災害関係保証については、熊本地震の被災中小企業に「災害関係保証」で詳しく扱っています。
指定政令が出ても、それだけでは補助率は上がらない
ここが誤解されやすい部分です。内閣府の「激甚災害制度Q&A」(平成25年3月・令和6年11月一部更新)は、問13で次のように説明しています。
指定政令は、本激の場合、あくまで激甚災害を指定するとともに、激甚災害法の第何条の措置が適用になるかということを指定しているに過ぎません。 一方、年度末の告示は、事業所管省庁の主務大臣により、特定地方公共団体等の基準に該当する具体的な地域を定めるものです。 つまり、地方公共団体の立場から見ると、激甚災害の指定政令が制定される(激甚災害の指定がされる)ということと、年度末に告示される(実際に財政援助がされる)ということは必ずしもイコールではありません。
第16条・第19条は「特定地方公共団体」であることが前提の措置で、その特定地方公共団体を決めるのは年度末の告示です。第22条は上に書いたとおり国土交通大臣の告示で地域が決まり、9月29日に八代市・宇城市・氷川町が告示されました。
内閣府がこの説明を置いているのは、年度途中に激甚災害の指定を受けて特定地方公共団体になると見込んでいた自治体でも、その後に別の(激甚災害でない)災害が重なると、母法である公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の国庫負担率が超過累進的に上がり、結果として自治体の負担額が特定地方公共団体の基準を下回って該当しなくなることが起こり得るためです。だから年度末に母法の補助率が確定してから一括して告示する、というのが内閣府の説明です。
なお内閣府の資料にも「激甚災害の措置は、いずれも一定以上の被害が生じた場合に適用され、その程度、範囲等は政令で定める基準に基づく」という注記があります。
追加指定はこの先もありうる
内閣府の激甚災害制度Q&Aは、問15で「ひとつの災害において、激甚災害と適用すべき措置が指定される政令が公布・施行された後に、被害状況の調査が進み、激甚災害指定基準(昭和37年12月7日中央防災会議決定)又は局地激甚災害指定基準(昭和43年11月22日中央防災会議決定)を満たす別の特例措置が生じた場合、先に公布・施行された当該政令を改正して、別の特例措置を追加指定することがあります」と説明しています。
令和8年熊本地震については、8月7日の指定政令の公布以降、内閣府が次のように段階的に追加指定の見込みを公表してきました。
| 公表日 | 内容 |
|---|---|
| 8月3日 | 激甚災害の指定見込み |
| 8月7日 | 指定政令(令和8年政令第259号)の公布。あわせて中小企業に関する特別の助成(第12条)の追加指定見込み |
| 8月12日 | 第12条の対象市町村の追加見込み |
| 8月18日 | 第12条の対象市町村の追加見込み(2回目) |
| 8月22日 | 適用措置の追加指定見込み(2回目) |
| 8月25日 | 適用措置の追加指定見込み(3回目) |
| 9月15日 | 改正政令を閣議決定 |
| 9月17日 | 改正政令(令和8年政令第298号)の公布・施行 |
今回の4措置で打ち止めとは限りません。今後さらに被害状況の把握が進めば、同じように指定政令を改正する形で措置や区域が追加される可能性があります。
いま確認したいこと
- 激甚災害の指定は、市町村・都道府県・学校法人などが行う復旧事業への財政援助の仕組みです。被災した個人が申請して受け取るお金ではありません。個人向けの支援は令和8年熊本地震 いま確認したいことと支援・相談先と被災者生活再建支援法の適用を確認してください。
- 補助の対象になるかどうかは、施設ごと・学校ごとの工事費の下限があります。小さな被害は対象外になることがあります。
- 政令の公布と実際の財政援助は別です。年度末の主務大臣の告示まで見てください。第22条(災害公営住宅)の区域だけは9月29日に先に告示されています(八代市・宇城市・氷川町)。