くらし・税金 重要度: 高

給付付き税額控除の制度導入の基本方針を閣議決定 令和11年度に本格導入

その後の動き(2026年9月15日):この基本方針を具体化する「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」が、令和8年9月15日の臨時閣議で決定されました。給付の名称は「就業者負担軽減支援金」に決まり、支給要件・支給方法・費用負担が示されています。→ 飲食料品の消費税率1%への引下げ/就業者負担軽減支援金

令和8年(2026年)8月5日の臨時閣議で、「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針が決定されました。担当は内閣官房、総務省、財務省、厚生労働省です。

ただし、まだ制度を実施する法律はできていません。現在は基本方針が閣議決定された段階で、給付額や対象となる具体的な所得水準も決まっていません。政府は国と地方の間で協議した上で、必要な法制上の措置を可及的速やかに講ずるとしています。

基本方針は、令和8年7月29日の社会保障国民会議の「中間とりまとめ」を踏まえ、その内容を十分尊重して定められました。中間とりまとめは基本方針の別紙として添付されています。

いつ何が起きるか

時期内容
令和8年8月5日基本方針を閣議決定
令和9年4月1日から2年間軽減税率の対象となっている飲食料品の消費税率を1%に
令和9年度「所得に連動したきめ細かな給付」を先行導入(つなぎ)
令和11年度「所得に連動したきめ細かな給付」を本格導入

制度の基本的な考え方

制度は、諸外国との比較を通じて純負担率の改善が必要であることが明らかになった中低所得の現役勤労者に着目しています。純負担率とは、税・社会保険料の負担と現金給付を総合的に捉えた負担の割合です。

対応する課題は、負担軽減によって所得に応じて手取りが増えるようにすることと、いわゆる年収の壁などによる「働き控え」を緩和して就労を促すことです。環境を整えた上で、純負担率を調整する「所得に連動したきめ細かな給付」を令和11年度に導入します。

令和11年度に本格導入する制度

本格制度は一律の金額を配る給付ではなく、所得に連動した給付を毎年度継続的に行うものです。実態に即した制度の名称とすることを含め、国民に違いが分かりやすく伝わるよう必要な対応に努めるとされています。

  • 個人単位の制度とし、単身者も対象にします。
  • 一定の勤労性の所得があり、一定の税・社会保険料負担がある人を対象にします。具体的な基準はまだ決まっていません。
  • 勤労性の所得には、事業所得、給与所得、業務に係る雑所得を含めます。個人事業者・フリーランスも対象です。事業所得と業務に係る雑所得は、就労とみなせる一定額以上の場合に含めます。
  • 就労し、税・社会保険料負担から年金受取額を差し引いた純負担が現役並みである中低所得の高齢者も対象にします。
  • 原則として、勤労性の所得が一定水準に達するまで給付額を逓増させ、その後は定額とし、総所得が一定額を超える場合は総所得に応じて逓減・消失させます。ただし、非課税ライン以下は所得把握に執行上の課題があり、誤支給の可能性があるため定額とします。
  • 「年収の壁」が解消するまでの時限的な措置として、一定の加算を行います。
  • 18歳以下のこどもの人数に応じた加算を行います。
  • 公平性の観点から、高所得の配偶者がいる場合の一定の例外を設けます。

給付の閾値となる所得水準と給付額は、恒久財源の確保と併せて検討されます。基本方針には具体的な金額は示されていません。制度は定期的に見直せる弾力的な仕組みとします。

ここでいう「所得」は、収入そのものの金額(額面)とは異なります。収入・所得・課税所得の違いは所得税のしくみで確認できます。

国と地方が協力して運営

執行主体を国か地方かの二者択一とはせず、国と地方が協力して運営します。システムなど全国一律にした方が効率的なインフラは国が整備し、住民とのインターフェイスは地方自治体を中心に対応する方向で検討します。

公金受取口座は、現状5割程度にとどまる登録率の向上を国として強力に推進し、この制度の受給時は利用を原則としていく方針です。国によるコールセンターの設置や、受給意思を確認する負担の軽減策も検討します。公金受取口座の登録状況はマイナポータルから確認できます。

給付の対象外で支援が必要な人については、生活困窮者自立支援制度や障害者福祉など既存制度との関係を整理し、本格導入までに結論を得ます。国民年金や国民健康保険の減免・軽減制度の拡充も選択肢として検討します。

本格導入までの2年間の経過措置

本格導入までの2年間に限る経過措置(つなぎ)として、飲食料品に係る消費税率の引下げと、所得に連動した給付の先行導入を組み合わせます。

  1. 令和9年(2027年)4月1日から2年間、軽減税率の対象となっている飲食料品の消費税率を1%にします。
  2. あわせて、飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲内で、現在公的機関が持つ所得情報を使った給付を令和9年度に導入します。

これらにより、全体として飲食料品に係る消費税の実質ゼロ化を実現するとされています。

つなぎの給付では、本格制度と異なり、配偶者の所得を勘案する一定の例外措置を設けません。また、18歳以下ではなく、15歳以下のこどもの人数に応じた加算を行うなどの経過的な措置を講じます。

本格導入が令和11年度になるのは、高所得の配偶者や16歳から18歳までの被扶養者を把握するための追加的な情報確保の仕組みが必要で、その環境が整うことが見込まれるためです。

仕入税額控除の還付を受けられない農業従事者等については、令和9年4月からの実施に支障が生じないよう、現場の納得感のある対応を検討します。外食産業を含め、影響を見極めた上で資金繰り支援等の予算措置を検討し、消費税率の変更に柔軟に対応できるシステムの普及も促進します。

財源

所得に連動した給付は恒久施策であるため、本格導入には恒久財源が必要です。具体策は特例公債に頼らず、補助金・租税特別措置など歳出・歳入のあらゆる見直しを通じて確保し、早期に結論を得ます。

つなぎの財源も特例公債に頼らず、補助金・租税特別措置の見直しや追加的な税外収入の確保などを通じて確保し、令和9年度予算編成プロセスで結論を得ます。

検討の過程で指摘された課題

基本方針の別紙である「中間とりまとめ」(令和8年7月29日・社会保障国民会議)には、検討の過程で指摘された課題や、まとまらなかった意見が記載されています。以下は、その内容を紹介したものです。

つなぎの消費税率引下げについて指摘された課題

本制度の経過措置(つなぎ)としての飲食料品に係る消費税率の引下げについては、次の課題が指摘されました。

  • 仕入税額控除の還付が受けられない農業従事者等や、外食産業への影響
  • 高所得者ほど恩恵が大きいこと
  • 減税分ほど税込価格が下がらない可能性
  • 2年後の税率引上げに係る懸念
  • 関係する事業者の事務負担
  • 地方を含めた財源の確保
  • 消費税率の変更に柔軟に対応できるシステムにする必要性

これらの課題を踏まえ、実務者会議では、つなぎの対応について次の意見がありました。

  • 消費税率の時限的な引下げではなく、給付で対応すべきとの意見がありました。理由として、減税を終了した際に負担増となる人が多く、1%への引下げは反動が大きいこと、財源が明確でないこと、2年間の引下げのためにシステム改修等を行う負担、第一次産業・外食産業における課題への具体的な対応が明確でないことなどが挙げられました。
  • 財源を確保した上で、飲食料品に係る消費税を恒久的に減税すべきとの意見がありました。生活必需品である飲食料品に係る消費税率引下げを福祉・社会保障政策として位置付け、つなぎではなく恒久的な減税として実施すべきというものです。
  • つなぎとして、できるだけ早期に飲食料品に係る消費税率の引下げを行うべきとの意見がありました。半年で実施できる1%への引下げに1%相当分の給付を組み合わせることで、実質的に0%を達成しつつ、「消費税減税は高所得者優遇になる」との批判にも対応できるというものです。

現下の物価高や税・社会保険料負担に苦しむ中低所得者への対応が必要であることは実務者会議で共有されましたが、経過措置の具体案について意見の一致には至りませんでした。

制度設計について示された意見

対象となる給与収入の線引きについて、有識者会議では、被用者保険の短時間労働者の適用ラインを超える所得約32万円超(給与収入約106万円超)とする意見と、給与所得0円超(給与収入74万円超)とする意見がありました。実務者会議では、これらに加えて、雇用保険の適用ラインを超える水準(給与収入約53万円超)とする意見がありました。いずれも検討段階の意見であり、基本方針で決まった基準ではありません。

このうち約106万円超と約53万円超は、令和7年度における全国で最も低い地域別最低賃金である時給1,023円に、被用者保険の短時間労働者の適用労働時間である週20時間、令和10年10月から施行される雇用保険の適用労働時間である週10時間をそれぞれ乗じ、年間の収入・所得に換算したものです。

このほか、制度設計について、次の意見や考え方が示されました。

  • 子育て世帯に配慮することについては、制度の複雑化に対する懸念から慎重な意見がありました。
  • 金融所得、預金の利子所得、資産の保有状況を勘案した給付付き税額控除を、当初から導入すべきとの意見がありました。
  • 税額控除と給付の組合せについては、経済的な効果は変わらない中で制度が複雑化することによる事務負担の増加や諸外国の例等を勘案し、短期的には給付への一本化が望ましいとの考え方が示されました。一方で、当初から両者を組み合わせることが望ましいとの意見や、将来的には両者の組合せとすべきとの考え方も強く示されました。

将来的な方向性

今回の制度は、本格的な「給付付き税額控除」を導入する第一歩と位置づけられています。金融所得、預金の利子所得、資産保有の勘案は、段階的な精緻化の中で、または将来の課題として検討します。税額控除と給付の組合せも、将来的に給付のみと決めず検討を続けます。

第3号被保険者制度の見直しと被用者保険の適用拡大の更なる加速は、次期年金法改正が予定される令和12年までに結論を得ます。令和7年度税制改正法の附則等に基づき、人的控除の在り方を含む所得税の抜本的な改革も検討を進めます。

いま確認できること

基本方針で、公金受取口座の登録率向上と制度受給時の利用の原則化が示されています。現時点では、公金受取口座の登録状況を確認しておくことができます。給付額や対象所得の具体的な基準はまだ決まっていないため、今後の法制上の措置を確認してください。

出典

本記事は公式情報をもとにした要約です。最新かつ正確な情報、申請条件、期限は必ず公式ページでご確認ください。