電動車椅子の補装具費の上限価格が約10%引上げ 標準形(低速用)は486,300円→534,900円 令和8年(2026年)8月31日公布・適用(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第9号)

電動車椅子の補装具費の上限価格が、令和8年(2026年)8月31日から約10%引き上げられました。

「補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第528号)を改正する令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第9号が、同日の官報(号外第193号)に掲載されています。

引き上げられたのは電動車椅子の「本体価格」だけです。ほかの種目や、電動車椅子のほかの費用区分は変わりません。

新しい上限価格

名称区分改正前改正後差額
標準形低速用486,300円534,900円+48,600円
標準形中速用502,300円552,500円+50,200円
簡易形切替式393,900円433,200円+39,300円
簡易形アシスト式412,600円453,800円+41,200円

4区分とも、引上げ率はおよそ10%です。

改正されたのは、告示の別表1「購入基準」のうち電動車椅子の「ウ 本体価格」の表です。「ア」「イ」「エ」「オ」の各項目(基本価格・完成用部品など)は改正の対象外で、告示の新旧対照表でも「(略)」とされています。

なぜ電動車椅子だけなのか

厚生労働省は、意見募集の結果公表資料で次のように説明しています。

令和7年度に実施した補装具事業者における原材料の仕入れ価格等に関する調査結果を踏まえ、緊急応急的な対応として、他の種目に比して、構成材料の価格が著しく上昇している電動車椅子のみを、対象とするものです。

財源についても、

執行状況を勘案しつつ、令和8年度予算額の範囲内において、電動車椅子の購入に係る「本体価格」のみに限って例外的な緊急対応として実施するものであり、ご理解いただけますと幸いです。

としています。

つまり、これは3年に1回の定期改定ではなく、単年度の緊急対応です。定期改定は令和9年4月が予定されています。

補装具費支給制度のしくみ

補装具費支給制度は、障害者・障害児・難病患者等が義肢・装具・車椅子・電動車椅子・補聴器などを購入したり借りたり修理したりするとき、費用の一部を市町村が支給する制度です(障害者総合支援法第76条)。

申請先は市町村で、身体障害者更生相談所等の判定を踏まえて市町村長が支給を決定します。

上限価格と実際に支給される額

告示第3条は、補装具の購入等に係る費用の額の基準を「別表の規定による上限価格の100分の106に相当する額」と定めています。上限価格そのものではなく、その106%が基準額になります(レディメイド装具など、別の割合が定められている種目もあります)。

自己負担

利用者負担は原則1割ですが、世帯の所得区分に応じた負担上限月額があります。

所得区分負担上限月額
生活保護世帯0円
市町村民税非課税世帯0円
市町村民税課税世帯37,200円

なお、市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万円以上の場合は、支給の対象外です。

上限価格が上がっても、負担上限月額に達している人の自己負担額は変わりません。

意見募集の結果

この改正案は、令和8年7月15日から8月13日まで意見募集が行われました。提出意見を踏まえた案の修正はありませんでした。

提出意見数について、e-Gov の結果公示は61件としていますが、厚生労働省が公表した結果資料の本文は「27件の御意見をいただきました」と記載しており、両者の数は一致していません。当サイトでは e-Gov の結果公示の値(61件)を採っています。

指摘された課題

意見募集に寄せられた意見のうち、厚生労働省が公表した要旨には次のような指摘が含まれています。いずれも意見提出者の指摘であり、当サイトの評価ではありません。

  • 引上げ幅が物価高騰に追いついていない。 「円安や物価高騰の影響を十分に反映していないのではないか」という指摘があった。
  • メーカーの値上げに吸収されて販売店に届かない。 「公費価格の本体価格が上がっても、メーカー値上げで吸収されてしまい、販売店の利益は上がらないと言った構図ができている」という指摘があった。
  • 本体価格以外の区分も見直してほしい。 重度障害者が使う電動車椅子はセッティングやシーティングが重要であるとして、「基本価格や採算費など、販売店の作業原価を回収できる項目の値上げの検討」を求める意見があった。
  • 部品価格の上昇に対してこの改定では足りない。 「この一年を見ても部品価格の上昇は甚だしく、この改定でそれに対応できるとは思えない」として、車椅子の作製に必要な調整の人件費や搬送実費への目配りを求める意見があった。
  • 簡易型電動ユニットは製造メーカーが1社しかない。 利用者が性能や価格でグレードを選べず、事業者が利益なしで販売している状況だとして、取付けの工賃分の反映を求める意見があった。

厚生労働省はこれらに対し、今回は令和8年度予算額の範囲内での例外的な緊急対応であるとして、案を修正しませんでした。

いつから適用されるか

告示には適用期日を定める規定が置かれていません。したがって、公布の日である令和8年8月31日から適用されます。

すでに支給決定を受けている場合の取扱いは、市町村の判断によります。申請中の人や決定を受けた直後の人は、市町村の障害福祉担当窓口に早めに相談してください。

出典

  • 官報 令和8年8月31日(号外 第193号)35ページ「補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準の一部を改正する件」(こども家庭庁・厚生労働省告示第9号)
  • e-Gov パブリック・コメント 案件番号495260110「補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準の一部を改正する件(案)に関する意見募集の結果について」(令和8年8月31日)
  • 厚生労働省「補装具費支給制度の概要」
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第5条第26項・第76条第2項

家族に説明するなら

体の不自由な人が使う車椅子や義足、補聴器などは「補装具」といって、市町村に申請すると費用の多くを公費で出してもらえる制度があるんだ。いくらまで出せるかは国が『上限価格』として決めていて、その金額が8月31日から電動車椅子だけ約1割上がったよ。たとえば標準形の低速用は486,300円だったのが534,900円になった。理由は、部品の値段が上がりすぎて、この金額では作れなくなってきたから。国は『電動車椅子は材料費の上がり方が特にひどいので、緊急の対応として今回だけ特別に上げる』と説明しているんだ。上がったのは『本体価格』という部分だけで、ほかの車椅子や補聴器などは今までどおり。自己負担は原則1割で、住民税非課税の世帯なら0円のままだよ。これから電動車椅子を申請する人は、市町村の障害福祉の窓口で新しい金額になっているか確認してね。

本記事は公式情報をもとにした要約です。最新かつ正確な情報、申請条件、期限は必ず公式ページでご確認ください。