成年後見制度「必要な人に届いていない」 市区町村の85%が利用ニーズを把握せず 総務省が厚生労働省に改善を要請 令和8年(2026年)7月21日

認知症などで判断能力が不十分な人を支える成年後見制度について、総務省行政評価局が全国調査の結果を令和8年(2026年)7月21日に公表し、厚生労働省へ改善を要請しました。約85%の市区町村が地域の利用ニーズを把握しておらず、約37%は家庭裁判所と連携していないなど、「制度を必要とする人に届いていない」実態が示されています。制度そのものが今すぐ変わるわけではありませんが、住む地域によって使いやすさに差があることが公的に確認されました。

認知症や知的障害・精神障害などで判断能力が不十分になった人に代わって、家庭裁判所が選んだ後見人等が財産管理や施設入所の契約などを行うのが成年後見制度です。この制度について、総務省行政評価局が全国の市区町村や家庭裁判所を対象に実施した調査の結果を、令和8年(2026年)7月21日に公表し、厚生労働省に対して改善を要請しました(「結果に基づく通知」)。

制度そのものが今すぐ変わるわけではありませんが、「制度を必要とする人に届いていない」実態が公的に確認されたという点で、利用を考えている家族にとって知っておく価値のある内容です。

何が確認されたのか

調査で示された主な数字は次のとおりです。

調査項目結果
地域の利用ニーズを把握していない市区町村約85%(把握しているのは14.5%)
家庭裁判所と連携していない市区町村約37%
家庭裁判所と意見交換の場を設けている市区町村約4割
親族後見人への支援を行っていない市区町村約7割
中核機関を整備済みの市区町村77.0%(1,741団体中1,340団体・令和7年4月1日時点)

ニーズを把握していない市区町村のうち、半数以上が「必要性は感じているが、把握方法や手順が分からない」と答えています。「把握する必要性を感じていない」は約1割にとどまり、やる気がないというよりやり方が分からないという状態であることが読み取れます。

家庭裁判所と連携していない市区町村のうち約3割は、理由として**「連携を考えているが、司法機関である家庭裁判所に依頼することに抵抗感がある」**と回答しました。一方、家庭裁判所側は、意見交換をしていない理由として約7割が「市区町村からの求めがない」と答えており、双方が待っている状態になっています。

相談の入り口でも詰まっている

成年後見制度の相談は、多くの場合まず地域包括支援センター(高齢者向け)や基幹相談支援センター(障害のある人向け)が受けます。こうした相談支援機関は、制度が必要と判断した人を、地域の司令塔である中核機関につなぐ役割とされています。

しかし調査では、地域包括支援センターの約3割、基幹相談支援センター等の約2割が**「どのようなケースを中核機関につなげばよいかが分かりにくい」**と回答しました。判断の基準を明文化している市区町村は約2割にとどまり、多くは職員の経験に頼っているのが実態です。中核機関側からも「類似した事案でも、つながれるケースとつながれないケースがある」との声が上がっています。

総務省が厚生労働省に求めたこと

総務省は厚生労働省に対し、次の5点を要請しました。

  1. 市区町村が利用ニーズを把握できるよう、アンケート調査票の例や、利用者数からニーズを推計する具体的な手法の例を示すこと
  2. 相談支援機関に対する研修の充実と、中核機関へつなぐ際の基準・目安の作成によって支援を強化すること
  3. 市区町村と家庭裁判所が意見交換できる機会を設けるよう、好事例や広域実施の方法を周知して促すこと
  4. 親族後見人の連絡先を市区町村が把握するための方策を検討すること(本人の同意がある場合に家庭裁判所から中核機関へ氏名等を情報提供することなど)
  5. 全国の市区町村ごとの利用者数を都道府県・市区町村に提供すること

なお、厚生労働省は相談支援機関の職員に向けた成年後見に関する研修を実施していないことも指摘されています。

制度の現状

成年後見制度の利用者数は、令和7年(2025年)12月末時点で259,901人(約26万人)です。令和3年末の239,933人から緩やかに増え続けていますが、市区町村ごとの利用率には大きなばらつきがあります。

利用を始めるきっかけとなった原因は、**認知症が61.3%**と最も多く、次いで知的障害9.6%、統合失調症9.3%、高次脳機能障害4.4%と続きます。

制度自体も大きく変わる予定

今回の通知とは別に、「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が令和8年(2026年)6月24日に公布されています。この法律の施行後は、成年後見人・保佐人は廃止され、「補助人」に一本化されることになっています。

施行日は、公布の日(令和8年6月24日)から2年6か月を超えない範囲内で政令で定める日とされており、まだ具体的な日は決まっていません。施行日が決まり次第、あらためてお伝えします。

今できること

今回の通知は行政どうしのやり取りであり、利用者や家族が行う手続きはありません。ただし、次の点は覚えておくと役に立ちます。

  • 判断能力の低下で財産管理や契約に不安が出てきたら、まず市区町村の中核機関、または地域包括支援センター(障害のある人は基幹相談支援センター)に相談してください。
  • 中核機関は約8割の市区町村で整備されていますが、市区町村の直営のほか、社会福祉協議会などへ委託されている場合もあります。窓口で「中核機関はどこか」を最初に確認するとスムーズです。
  • 親族後見人として家庭裁判所への報告書作成などに負担を感じている場合も、中核機関や市区町村の権利擁護担当に相談できる体制がないか確認してください。今回の調査でも、親族後見人から「報告書の作成の負担が大きい」「横のつながりがないため講習会等の機会を設けてほしい」という声が挙がっています。

出典

家族に説明するなら

認知症などで自分ではお金や契約の判断がむずかしくなった人のかわりに、家庭裁判所が選んだ人が手続きをしてくれる『成年後見制度』というしくみがあるよ。でも総務省が全国を調べたら、市区町村の約85%が『自分の町にこの制度を必要としている人が何人いるか』を調べていなかったんだ。しかも約37%の市役所は家庭裁判所とやりとりをしていなくて、その理由には『裁判所に頼むのは気が引ける』という答えもあった。つまり、住んでいる場所によって制度の使いやすさに差がある、ということ。総務省は2026年7月21日に厚生労働省へ『ここを直してください』と伝えたよ。今すぐ制度が変わるわけではないけれど、困ったときの相談先は市区町村の『中核機関』や地域包括支援センターだよ。

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