予防接種法の一部を改正する法律が、令和8年(2026年)7月31日に公布されました(令和8年法律第76号)。第221回国会に内閣から提出された法律案(閣法第63号)で、衆議院は令和8年6月30日に全会一致で、参議院は7月24日に可決しました。
改正の内容は1点だけで、予防接種法上の「予防接種」の定義を広げるものです。
いまの予防接種法では「ワクチン」しか使えない
予防接種法では、予防接種を次のように定義しています。
疾病に対して免疫の効果を得させるため、疾病の予防に有効であることが確認されているワクチンを、人体に注射し、又は接種すること
つまり、ワクチン以外の医薬品は、予防接種法に基づく予防接種には使えませんでした。定期接種や臨時接種といった予防接種法上の仕組みは、すべてこの定義の上に組み立てられているためです。
何が変わるのか
今回の改正で、この定義に次の医薬品が加わります。
単クローン抗体を有効成分として含有し、かつ、ワクチンと同程度にその効果が長期間にわたる医薬品
単クローン抗体(モノクローナル抗体)は、特定の病原体などにねらいを定めて結びつく、1種類に揃えられた抗体のことです。ワクチンが「体の中で自分の免疫をつくらせる」のに対し、抗体製剤は「できあがった抗体を直接体に入れる」という違いがあります。
厚生労働省は改正の趣旨を、近年における医薬品技術の高度化を踏まえ、ワクチンと同程度に疾病の予防に有効であることが確認されている医薬品を予防接種法に基づく予防接種に用いることができるようにするためと説明しています。
RSウイルス感染症の抗体製剤が議論の対象に
厚生労働省の法律案の概要では、この改正の具体的な効果として次のように説明されています。
- 本改正により、今後、審議会において、すでに薬事承認を得ているRSウイルス感染症に対する抗体製剤の定期接種化に係る議論が可能になる
- そこで認められた場合には、政省令の必要な改正を行うことにより、RSウイルス感染症の予防接種について、母子免疫ワクチンに加えて抗体製剤を用いることができるようになる
RSウイルス感染症は、乳幼児が重い呼吸器の症状を起こしやすい感染症です。現在は、妊婦に接種して赤ちゃんに免疫を渡す母子免疫ワクチンが使われています。今回の改正は、これに抗体製剤という選択肢を加えるための入り口を開くものです。
ただし、この改正だけで抗体製剤が定期接種になるわけではありません。実際に定期接種の対象になるかどうかは、今後の審議会での議論と、それを受けた政令・省令の改正によって決まります。
いつから始まるのか
改正法の公布日は令和8年(2026年)7月31日です。
施行期日は、公布の日から起算して6か月を超えない範囲内において政令で定める日とされています。具体的な施行日は今後公布される政令で決まるため、現時点では確定していません。
誰に関係するか
乳幼児を育てている人やこれから出産を迎える人にとっては、RSウイルス感染症の予防の選択肢が広がる可能性があります。ただし、対象となる医薬品や自己負担の扱いは、今後の審議会と政省令で決まるため、続報を確認してください。
予防接種を実施する医療機関や市区町村の担当者は、施行期日を定める政令と、あわせて改正される政省令の内容を確認することになります。
出典
- 予防接種法の一部を改正する法律(令和8年法律第76号・令和8年7月31日公布)
- 第221回国会(令和8年特別会)提出法律案(厚生労働省)
- 予防接種法の一部を改正する法律案の概要(厚生労働省・PDF)
- 予防接種法の一部を改正する法律案 議案情報(参議院)
- 令和8年1月1日から現在までに公布された法律(内閣法制局)