医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律が、令和8年(2026年)7月31日に公布されました(令和8年法律第77号)。第221回国会に衆議院の委員会から提出された議員立法(衆第29号)で、衆議院は令和8年7月14日、参議院は7月24日に、いずれも全会一致で可決しました。
施行は令和9年(2027年)4月1日です。
医療的ケア児支援法とは
医療的ケアとは、たんの吸引、経管栄養、人工呼吸器の管理など、生活していくうえで日常的に必要になる医療行為のことです。こうしたケアが必要な子どもを医療的ケア児といいます。
令和3年(2021年)に施行された医療的ケア児支援法は、医療的ケア児とその家族への支援を国・自治体の責務と位置づけ、保育所や学校での受入れ体制の整備、相談窓口となる医療的ケア児支援センターの設置などを定めていました。
ただし、この法律が対象としていたのは18歳未満の子ども(および高校等に在学する18歳以上の者)でした。そのため、成人すると法律上の支援の枠組みから外れてしまうことが課題とされてきました。
何が変わるのか
1. 支援の対象が広がり、題名も変わる
支援の対象に、次の人が加わります。
- 成年に達した医療的ケア児
- 18歳以上で医療的ケアが不可欠であり、これにより自立した生活を営むことが困難な状態にある者
- 重症心身障害者
これにあわせて、法律の題名が次のように改められます。
| 題名 | |
|---|---|
| 改正前 | 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律 |
| 改正後 | 医療的ケア児等及び重症心身障害者並びにそれらの家族に対する支援に関する法律 |
2. 基本理念に「尊厳」を明記
基本理念に、医療的ケア児等及び重症心身障害者が基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を営むことができるようにすることなどが明記されます。
3. 支援施策の充実
保育・教育等に係る施策として、次の3点が新たに定められます。
- 喀痰吸引等を行うことができる介護従事者を保育所や学校等に配置すること
- 社会的養護が必要な医療的ケア児・重症心身障害児のための体制を整備すること
- 医療的ケア児等・重症心身障害者のための生涯学習を推進すること
生活・就労等に係る施策として、日常生活における支援を充実させるほか、次の施策が新たに定められます。
- 切れ目のない医療の提供
- 就労の支援
- 住居の確保
- ピアサポート(医療的ケア児等・重症心身障害者とその家族が互いに支え合うために交流する活動に対する支援等)
人材確保等に係る施策として、医療的ケア等の支援に係る研修の実施方法の見直しと、医療的ケアの提供の在り方の見直しが新たに定められます。
4. 支援センターと地域協議会
医療的ケア児等支援センターについては、次のように見直されます。
- これまでの都道府県知事に加え、指定都市・中核市・特別区等の長も設置できるようになる
- 業務として、進行性の疾病を有する者等も相談支援の対象とする
- 業務に災害時の情報提供等を追加する
また、都道府県等は、支援体制の整備を図るための関係者等による協議の場として、医療的ケア児等支援地域協議会を置くことができます。その構成員は、協議の結果を尊重するものとされます。
いつから始まるのか
- 公布日:令和8年(2026年)7月31日
- 施行日:令和9年(2027年)4月1日
誰に関係するか
医療的ケアが必要な人とその家族にとっては、これまで18歳で途切れていた支援の根拠が、大人になった後も続くことになります。就労や住居の確保といった、成人期に必要になる支援も法律に位置づけられます。
重症心身障害児・者とその家族は、新たに法律の対象になります。
保育所・学校・障害福祉サービス事業所は、喀痰吸引等を行える介護従事者の配置が施策として位置づけられるため、施行までに人材の確保と研修の状況を確認することになります。
都道府県・市区町村の担当者は、支援センターの設置主体が広がること、地域協議会を置けるようになることを踏まえた体制の検討が必要です。
出典
- 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第77号・令和8年7月31日公布)
- 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律案 議案情報・議案要旨(参議院)
- 議案要旨(参議院・PDF)
- 令和8年1月1日から現在までに公布された法律(内閣法制局)