行政・手続き 重要度: 低

カナダなど4か国の国の紋章と国際3機関の標章が「商標登録できないもの」に 経済産業省告示第105号〜第111号 令和8年(2026年)8月24日公布

令和8年(2026年)8月24日、商標登録を受けることができない紋章・標章を追加する7本の告示が公布されました(官報号外第188号)。令和8年経済産業省告示第105号から第111号までです。

追加された紋章・標章

商標法第4条第1項第2号は国の紋章その他の記章を、同項第3号は国際機関を表示する標章を対象にしています。どちらも、経済産業大臣が指定したものが対象になる仕組みです。

第2号(国の紋章)に基づく指定

告示番号指定された紋章
令和8年経済産業省告示第105号カナダの紋章
同第106号コロンビア共和国の紋章
同第107号デンマーク王国の紋章
同第108号キルギス共和国の紋章

第3号(国際機関を表示する標章)に基づく指定

告示番号指定された標章
令和8年経済産業省告示第109号持続可能な発展のためのフランコフォニー機構(Institut de la Francophonie pour le développement durable/略称 IFDD)の標章
同第110号装備協力共同機関(OCCAR)の標章
同第111号国際オリーブ協会の標章

いずれも「世界知的所有権機関の国際事務局から通知された」ものとして指定されています。告示には図柄が掲載されており、色(黄緑・薄い水色・紫・深緑など)まで特定されています。

なぜ指定されるのか——パリ条約の義務

特許庁は、意見公募の結果の中で根拠を説明しています。

パリ条約第6条の3(1)は、同盟国の紋章・旗章その他の記章と、政府間国際機関の紋章・旗章その他の記章・略称・名称について、商標登録を拒絶し又は無効とすることを加盟国に義務付けています。特許庁はその理由を、こう述べています。

そのような商標の登録が、国家主権の象徴の使用を統制する国家の権利を侵害することになるうえ、さらに、そのような標章が付される商品の出所について公衆に誤認を与えるおそれがあるため

日本はこの義務を商標法第4条第1項第2号・第3号で担保しており、国際事務局から通知があったものを大臣指定していく、という運用です。

商標法第4条第1項第2号・第3号の条文

第2号

パリ条約(略)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国の紋章その他の記章(パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国旗を除く。)であつて、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標

第3号

国際連合その他の国際機関(ロにおいて「国際機関」という。)を表示する標章であつて経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標(次に掲げるものを除く。)

イ 自己の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似するものであつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

ロ 国際機関の略称を表示する標章と同一又は類似の標章からなる商標であつて、その国際機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれがない商品又は役務について使用をするもの

第3号にはイ・ロの除外があります。すでに自分の商品・サービスのマークとして広く知られている商標や、その国際機関と関係があると誤解されるおそれのない使い方は、対象から外れます。国旗そのものは第2号の括弧書きで除かれていますが、これは第1号(国旗・菊花紋章・勲章・褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標)で別に手当てされているためです。

指摘された課題

意見公募は令和8年5月7日から6月5日まで行われ、2件(個人1件、匿名1件)の意見が提出されました。

一般的なデザインまで保護対象にすると民間の商標活動が萎縮する(意見1)——フランコフォニー機構、OCCAR、国際オリーブ協会の3つの標章について、「その構成が一般的かつ抽象的であり、民間の商標使用・創作活動を不当に制限するおそれがある」として、指定範囲の再検討を求める意見が出ました。円環や抽象的な線図形、単純な図形の組合せといった「民間企業のロゴにも広く見られる構成」を公的標章として保護すると、民間の商標出願が「公的標章に類似」として拒絶される範囲が過度に広がり、デザイナーの創作活動が萎縮する、という指摘です。

特許庁は、これらの機関がいずれも国際事務局に対して条約の適用を請求していることを踏まえ、パリ条約上の義務を適切に履行するために大臣指定が必要だと回答しました。そのうえで、パリ条約第6条の3(1)(c)が善意の既得権を害しないことと、当該国際機関との関係を公衆に暗示・誤信させないものについては拒絶・無効の義務を課していないことを挙げ、商標法第4条第1項第3号のイ・ロの除外がその趣旨を反映していると説明しています。

商標法第4条第1項第3号の規定は、事業者の活動を過度に制限することのないよう、国際機関と関係があると誤認させるおそれのない商標等には適用されない

審査基準を明確にし、権威の私物化を防ぐべき(意見2)——判断基準が不透明なままでは特定の企業・団体が「国の権威を借りたブランド」を構築する道具になりかねないとして、審査プロセスの透明化を求める意見も出ました。特許庁は、パリ条約上の義務を履行するために指定が必要であるとの説明を繰り返したうえで、商標登録出願の審査における指針や判断基準となる「商標審査基準」を特許庁ウェブサイトで公開していると案内しています。

実務でどうなるか

指定された紋章・標章と同一又は類似の商標は、商標登録を受けることができません。すでに登録されているものについては、無効審判の対象になり得ます。

ロゴの制作段階で意識しておきたいのは、対象が「国旗」だけではないという点です。国の紋章(国章)は国旗とは別に指定され、政府間国際機関の略称も対象になります。IFDD、OCCAR といったアルファベットの略称は、第3号ロの除外に当たらない限り、単独では登録が難しくなります。

なお、これらの指定は継続的に追加されていくもので、今回が最後というわけではありません。出願前の調査では、最新の指定状況を確認してください。

出典

家族に説明するなら

国の紋章(国章)や、国連のような国際機関のマークは、勝手に会社のロゴや商品マークとして登録できないことになっているんだ。どの国・どの機関のマークを対象にするかは、経済産業大臣が「これです」と指定して、官報に載せることで決まる。2026年8月24日に、その指定にカナダ・コロンビア・デンマーク・キルギスの国の紋章と、3つの国際機関のマークが追加されたよ。これから商標を出願する人は、自分が考えたロゴがこれらに似ていないか気をつける必要がある、という話だね。

本記事は公式情報をもとにした要約です。最新かつ正確な情報、申請条件、期限は必ず公式ページでご確認ください。