行政・手続き 重要度: 中

ヒトゲノム編集胚等の取扱いを規制する法律が公布 胎内への移植を原則禁止・罰則も新設 令和9年(2027年)7月24日施行

「ヒトゲノム編集胚等の取扱いの規制に関する法律」(令和8年法律第70号)が、令和8年(2026年)7月24日に公布されました。新たに制定された法律です。

立法の理由

法律案の要旨では、次の点に鑑みた立法であると説明されています。

  • ヒト胚またはヒト生殖細胞に対してゲノム編集技術等を用いることが、予測し得ない遺伝子改変をもたらす可能性があり、これによりヒト胚および人の発育に重大な影響を及ぼすおそれがあること
  • 当該遺伝子改変の影響が将来の世代にわたって個人や社会に重大な影響を及ぼすおそれがあること

成立までの経緯

内閣提出法案(閣法第58号)として、令和8年4月10日に衆議院へ提出されました。

日付結果
衆議院 厚生労働委員会令和8年6月12日可決
衆議院 本会議令和8年6月16日可決(起立採決・多数)
参議院 厚生労働委員会令和8年7月16日可決
参議院 本会議令和8年7月17日可決(押しボタン採決・多数)
公布令和8年7月24日令和8年法律第70号

1. 胎内への移植の原則禁止

ヒトゲノム編集胚等を人または動物の胎内に移植することが、原則として禁止されます。

2. 国が定める指針

厚生労働大臣、内閣総理大臣および文部科学大臣は、ヒトゲノム編集胚等の作成、譲受けまたは輸入、使用、管理等の取扱い(以下「ヒトゲノム編集胚等の取扱い」)の適正を確保するため、生命現象の解明に関する科学的知見を勘案し、指針を定め、これを公表しなければならないこととされます。

そして、ヒトゲノム編集胚等の取扱いは、この指針に従って行わなければならないこととされます。

3. 取扱計画書の届出と待機期間

  • ヒトゲノム編集胚等の取扱いを行う者は、取扱いに関する計画書(取扱計画書)を作成し、主務大臣に届け出なければなりません。
  • その届出が受理された日から60日(主務大臣が認める期間に短縮された場合は短縮後の期間)を経過した後でなければ、取扱計画書に基づくヒトゲノム編集胚等の作成、譲受けもしくは輸入、または使用をしてはならないこととされます。

4. 主務大臣の措置命令・報告徴収・立入検査

  • 主務大臣は、ヒトゲノム編集胚等の取扱いが指針に適合しないと認めるときは、取扱計画書の届出をした者に対し、取扱いの中止またはその方法の改善、取扱計画書に記載された事項の変更その他必要な措置をとるべきことを命ずることができます。
  • 主務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、届出をした者に対し、取扱いの状況その他必要な事項について報告を求めることができます。
  • あわせて、その職員に、届出をした者の事務所もしくは研究施設に立ち入り、書類その他必要な物件を検査させ、または関係者に質問させることができます。

5. 罰則

ヒトゲノム編集胚等を人または動物の胎内に移植した者等に対する所要の罰則規定が設けられます。

施行に向けた省令・指針案(令和8年9月2日)

令和8年(2026年)9月2日の「ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の取扱い等に関する合同会議」(第4回)で、文部科学省・こども家庭庁・厚生労働省が、この法律に基づく省令と指針の案を示しました。法律の条文だけでは見えない点として、次のことが分かります。

  • 禁止の例外:動物の胎内に移植した場合でも、胎盤の形成を開始する可能性がないものとして政令で定める要件に当たるときは、移植の禁止の対象から外れます。
  • 「ゲノム編集技術等」の範囲:遺伝子の発現に影響を与え得る技術のうち、政令で定めるものとされています。具体的な範囲は政令で決まります。
  • 指針は既存の案が土台:これまで別の合同会議で検討してきた、ヒト胚・ヒト生殖細胞に関する複数の指針を統合する案(令和8年2月25日に提示)を土台にして、新しい法律に基づく指針を作るとしています。国への届出の様式は省令に、それ以外の多くは指針(告示)に書き分けます。
  • 施行時点では基礎的研究だけ:新しい指針は、施行時点では臨床研究に関する規定は設けない予定とされています。
  • 指針の策定手続:主務大臣は、指針を定めるときに、あらかじめ総合科学技術・イノベーション会議の意見を聴かなければならないと法律第4条第3項に定められています。

これは会議に示された案の段階で、省令・政令・指針はまだ公布・公表されていません。

いつから

施行期日は、一部を除き、公布の日から起算して1年を経過した日とされています。公布日が令和8年7月24日であるため、施行日は令和9年(2027年)7月24日です。

誰に関係するか

一般の住民が行う手続きはありません。ヒト胚・ヒト生殖細胞を扱う研究機関や医療機関を対象とする規制です。

対象となる機関にとっては、施行までに主務大臣が定める指針が公表されること、および取扱計画書の届出と受理から原則60日の待機期間が実務に直結します。

出典

家族に説明するなら

受精卵(ヒトの胚)や精子・卵子の遺伝子を人工的に書きかえる『ゲノム編集』について、ルールを定めた新しい法律が2026年7月24日に決まったよ。いちばん大きいのは、遺伝子を書きかえた胚を人や動物のおなかに戻すこと(=実際に妊娠・出産につなげること)を原則として禁止したこと。破ると罰則がある。理由は、思いがけない遺伝子の変化が起きるかもしれず、生まれてくる子だけでなく、その先の世代にまで影響が残るおそれがあるからだよ。研究として扱う場合も自由ではなく、国(厚生労働大臣・内閣総理大臣・文部科学大臣)が守るべき指針を作って公表し、研究者はその指針に従わないといけない。さらに、扱う人は計画書を国に届け出て、受理から原則60日たつまでは作ったり輸入したり使ったりできない。国は指針に合っていなければ中止や改善を命じられるし、研究施設に立ち入って調べることもできる。始まるのは2027年7月24日から。

本記事は公式情報をもとにした要約です。最新かつ正確な情報、申請条件、期限は必ず公式ページでご確認ください。