行政・手続き 重要度: 中

選挙のネット運動ルールが変わる AI生成画像には表示義務・電子メールの規制は廃止 公職選挙法と情プラ法の改正が公布 令和8年(2026年)7月17日

選挙とインターネットに関するルールを見直す法律が、令和8年(2026年)7月17日に公布されました。「公職選挙法及び特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律の一部を改正する法律」(令和8年法律第58号)です。衆議院議員が提出した議員立法で、令和8年6月26日に衆議院、7月13日に参議院で可決されました。

改正の対象は、選挙のルールを定める公職選挙法と、SNSなどでの権利侵害への対応を定める情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)の2つです。

公職選挙法の改正

1. AIで作成・改変した画像や映像には表示が必要になる

インターネット等を利用する方法により頒布される文書図画に、AI(人工知能関連技術)を利用して作成・改変された画像または映像が掲載されている場合、原則としてその旨を表示しなければならないことになりました。

生成AIで作った候補者の画像や、加工した映像が、実際の出来事と区別がつかないまま広まることへの対応です。

新しい公職選挙法第142条の5の条文を読むと、「原則として」の中身が分かります。

  • 表示が要らないもの:改変の内容が社会通念に照らして軽微なものと、実際に撮影されたものと誤認されるおそれのないものは除かれます。イラストと一目で分かる画像などは、表示義務の対象外になり得ます。
  • 対象になる文書図画:①選挙運動のために使用する文書図画と、②当選を得させないための活動(落選運動)に使用する文書図画のうち、公示・告示の日から選挙の当日までに頒布されるものです。
  • 何をすればよいか:AIで作成・改変したものである旨が、受け取った人の通信端末の画面に「正しく表示されるようにしなければならない」とされています。
  • 「人工知能関連技術」の定義は、AI推進法(令和7年法律第53号)第2条を引用しています。

2. 電子メール特有の規制を廃止し、ウェブサイト等と同じ扱いに

これまで公職選挙法では、電子メールを利用する選挙運動用文書図画の頒布は、候補者と政党等に限られていました。一般の有権者はウェブサイトやSNSへの投稿はできる一方、SNSのメッセージ機能(ダイレクトメッセージ)は「電子メール」に当たるとされ、使えませんでした。

今回の改正で、電子メールを利用する方法による文書図画の頒布に係る規制は廃止され、ウェブサイト等を利用する方法に係る規制に統一されます。メールだけを別扱いにする仕組みがなくなる、ということです。

3. 虚偽の情報で選挙の公正を害さないようにする

選挙に関しインターネット等を利用する者は、公職の候補者に関し虚偽の事項を公にし、または事実をゆがめて公にして、選挙の公正を害することがないようにしなければならないとされました。

情プラ法の改正

大規模特定電気通信役務提供者(利用者数などが一定規模以上の、SNSや動画共有サービスなどの事業者)に対して、次のことが定められました。

  • 選挙の公正を害するおそれのある情報の流通による悪影響を軽減するため、提供する役務の特性に応じて必要な措置を講ずる義務を課す
  • 事業者が実施すべき措置について、その適切かつ有効な実施に資するために必要な指針を総務大臣が定めて公表する
  • 事業者が講じた措置の内容は、毎年1回公表する

いつから始まるのか

この法律は、一部を除き令和9年(2027年)3月1日から施行されます。

適用の切り替えには経過措置があります。改正後の公職選挙法の規定は、施行の日以後にその期日を公示・告示される選挙について適用され、施行の日の前日までに公示・告示された選挙については、従前の例によるとされています。選挙の途中でルールが変わることのないようにするためです。

あわせて置かれた検討規定

この法律には、次の2点について検討規定(今後の検討を求める規定)が置かれました。

  • 在外選挙インターネット投票の導入
  • 街頭演説等の妨害行為への対応

いずれも今回の改正で制度化されたものではなく、今後の検討課題として明記されたものです。

指摘された課題

総務省 情報通信政策研究所の情報通信法学研究会 AI分科会(令和8年度第1回・令和8年9月7日)で、湯淺墾道・明治大学専門職大学院ガバナンス研究科長は、第142条の5について次の点を挙げています。

  • 表示の具体的な方法の例示がない。「正しい表示」とは何か(位置、場所、方法、デジタル透かしなど)が条文からは分からない
  • 表示義務の例外(軽微な改変、誤認のおそれがないもの)の基準をどう判断するか
  • 選挙管理委員会のリソース不足と、違法行為を認知する方法の問題があり、執行が難しい

同じ報告は、今回の改正を、政府が情報の真偽を判定するのではなく、表示・利用者の責務・事業者の対策を組み合わせて選挙の公正を確保しようとするものと整理しています。

誰に関係するか

選挙のときにSNSやウェブサイトで情報発信をする有権者に関係します。とくに、選挙に関してAIで作成・加工した画像や映像を投稿する場合は、その旨の表示が原則として必要になります。

具体的な表示の方法や、どこまでが「AIを利用して作成・改変された」に当たるかといった運用面は、施行までに示される総務省の解説や通知を確認してください。

出典

家族に説明するなら

選挙のときのインターネットの使い方のルールが変わるよ。①AIで作った・加工した写真や動画を選挙に関して載せるときは、『これはAIで作ったものです』と原則として書かないといけなくなる。②これまで電子メールでの選挙運動は候補者と政党だけに許されていたけれど、その特別なルールをなくして、ホームページやSNSへの投稿と同じ扱いにそろえる。③候補者についてうその情報や、事実をゆがめた情報を広めて選挙をゆがめないように、という決まりも置かれた。あわせて、XやYouTubeのような大きなサービスの会社にも、選挙をゆがめるおそれのある情報への対策をとる義務ができる。始まるのは2027年3月1日からで、それより後に日程が発表される選挙から適用されるよ。

本記事は公式情報をもとにした要約です。最新かつ正確な情報、申請条件、期限は必ず公式ページでご確認ください。