令和8年(2026年)8月10日、電気通信事業法施行規則等の一部を改正する省令(令和8年総務省令第107号)と、関係する告示(令和8年総務省告示第305号)が公布されました。
避難所などに設置される「災害時用公衆電話」の維持にかかる費用を、電話のユニバーサルサービス交付金で補填できるようにする改正です。
災害時用公衆電話(特設公衆電話)とは
災害の発生時などの緊急時に避難所等に設置され、通話料が無料で利用できる電話です。総務省の資料では「特設公衆電話」と呼ばれています。
- 事後設置型:災害等の発生後に設置するもの。従来はこちらが主流でした。
- 事前設置型:避難所として指定される施設等にあらかじめ加入者回線を設置しておき、災害発生後にその回線に電話機を接続して使うもの。東日本大震災のあと、災害発生後に速やかに使えるよう設置が進められてきました。
災害時は携帯電話網が混雑したり、基地局が被災したりして通じにくくなることがあります。特設公衆電話は、そうしたときの連絡手段として用意されているものです。
何が変わるのか
今回の改正で、令和8年度の認可申請分から、災害時用公衆電話の補填が始まります。
電話のユニバーサルサービス制度は、NTT東日本・NTT西日本が全国であまねく電話サービスを提供するために必要なコストの一部を、NTT東西の電気通信設備に接続する接続電気通信事業者等(負担事業者)が負担金を拠出し、基礎的電気通信役務支援機関を通じてNTT東西に交付金を交付するしくみです。NTT東西の自助努力だけでは電話のユニバーサルサービスの提供を維持することが困難になるおそれが生じたことから創設されました。
総務省によると、電話のユニバーサルサービスについて、NTT東西では令和6年度に約649億円の赤字が生じており、約65億円の交付金を交付することとしています。
なお、負担金について、負担事業者が直接負担するのか、利用者に負担を求めるのかは、各事業者の経営判断に委ねられています。携帯電話や固定電話の請求に「ユニバーサルサービス料」として計上されているのは、この負担金を利用者に求めているものです。
根拠となる規定
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 省令 | 電気通信事業法施行規則等の一部を改正する省令(令和8年総務省令第107号) |
| 告示 | 第一号基礎的電気通信役務の提供に係る第一種交付金及び第一種負担金算定等規則第五条第一項第五号イに規定する総務大臣が告示する額を定める件(令和8年総務省告示第305号) |
| 根拠法令 | 電気通信事業法第108条第1項第1号、第109条第1項から第3項まで、第176条の2 |
| 公布日 | 令和8年8月10日 |
| 施行日 | 令和8年8月10日(改正省令の附則により、公布の日から施行) |
改正省令の附則は「この省令は、公布の日から施行する。」と定めており、公布と同日の令和8年(2026年)8月10日から施行されています。
意見募集の経過
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 意見募集の期間 | 令和8年4月25日〜5月29日 |
| 提出意見数 | 3件(法人1件、個人1件、匿名1件) |
| 案の修正 | 有 |
修正されたのは、算定等規則第五条第一項第五号イ(1)の書きぶりです。「第三号及び前号」と規定していたところ、額の合計を行う規定であるため「前二号」と規定すればよいという個人からの指摘を踏まえたものです。総務省は、このほかにも用語・規定の整理など、実質的な内容の変更をもたらさない形式的な修正を行ったとしています。
指摘された課題
意見募集では、災害時用公衆電話の補填を開始する制度整備の方向性に賛同する意見が寄せられた一方、次のような指摘がありました。
ブロードバンドと一体の制度設計への移行 KDDI株式会社から、今後メタル回線の縮退が本格化してメタル固定電話の契約数が減少する一方、光ブロードバンド上のIP電話の利用が拡大するなど、電話サービスを取り巻く環境は大きく変化することが想定されるとして、ユニバーサルサービス交付金制度も、電話サービスとブロードバンドサービスを一体的に捉えた制度設計へ移行していくことが不可欠であり、速やかに本格的な検討を開始してほしいという要望が出されました。
総務省は、ユニバーサルサービス交付金制度の見直しは現在情報通信審議会で検討が行われていると承知しているとした上で、NTT東西によるメタル回線の巻取りと代替サービスへの移行等を踏まえて、引き続き適時適切に検討を行うことが適当と回答しています。
利用者負担のあり方 匿名の意見として、通信費が事業者の言い値になっており、今回の制度整備も大手キャリアのインフラ維持コストを国民に転嫁する枠組みではないか、ユニバーサルサービス料等の強制徴収を廃止すべきという指摘が出されました。総務省は、制度の趣旨と交付額の実績を示した上で、負担金を利用者に求めるかは各事業者の経営判断に委ねられていると回答しています。
災害時の連絡手段
災害時に使える連絡手段としては、特設公衆電話のほかに次のものがあります。
- 災害用伝言ダイヤル「171」・災害用伝言板「web171」
- 災害時の無料Wi-Fi「00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」
- 大規模災害時の非常時事業者間ローミング(契約先以外の回線を通じて一部のサービスが使える)
災害時に確認する公式サイトは災害時に確認する公式サイト一覧にまとめています。