令和8年(2026年)8月20日、PCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物の処理に関する2本の告示が公布され、同日から適用されました(官報号外第186号)。
- 令和8年環境省告示第39号「無害化処理に係る特例の対象となる一般廃棄物及び産業廃棄物の一部を改正する告示」
- 令和8年環境省告示第40号「低濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物に係る無害化処理の内容等の基準等の一部を改正する告示」
どちらも本文に「公布の日から適用する」と書かれており、経過措置期間はありません。
何が変わるか——「低濃度」の枠が外れる
廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)には、環境大臣が個別に施設と処理方法を審査して認定する無害化処理認定制度があります(同法第9条の10、第15条の4の4)。石綿含有廃棄物と、低濃度のPCB廃棄物が主な対象でした。
今回の改正は、この枠に高濃度のPCB廃棄物を加えるものです。
告示第39号は、認定の対象となる産業廃棄物のうち廃ポリ塩化ビフェニル等に、次の2つを追加しました。
- ポリ塩化ビフェニル原液が廃棄物となったもの
- ポリ塩化ビフェニルを含む油が廃棄物となったもののうち、当該廃棄物に含まれるポリ塩化ビフェニルの重量の割合が0.5パーセントを超えるもの
「PCBの重量割合0.5パーセント超(=5,000mg/kg超)」は、従来から高濃度PCB廃棄物の目安とされてきた濃度です。低濃度側の基準(廃油で試料1キログラムにつき0.5ミリグラム超など)はそのまま残り、その上に高濃度の区分が積み増された形になります。
ポリ塩化ビフェニル汚染物にも、次の3つが追加されました。
| 追加された廃棄物 | 濃度の要件 |
|---|---|
| 汚泥、紙くず、木くず、繊維くずにPCBが塗布され、又は染み込んだ物が廃棄物となったもの | PCBを含む部分1キログラムにつき、PCBの重量が10万ミリグラム超 |
| 廃プラスチック類のうち、PCBが付着し、又は封入されたもの | 同10万ミリグラム超 |
| 金属くず、ガラスくず・陶磁器くず、工作物の新築・改築・除去に伴って生じたコンクリートの破片その他PCBが付着し、又は封入された物が廃棄物となったもの | 同5千ミリグラム超 |
一般廃棄物の側も変わりました。これまで環境大臣が定める一般廃棄物は石綿含有一般廃棄物だけでしたが、PCB原液・PCBを含む油・PCBが塗布され、染み込み、付着し、若しくは封入された物が一般廃棄物となったもの(またはそれらを処分するために処理したもの)のうち、廃油で試料1キログラムにつき0.5ミリグラム超、廃酸・廃アルカリで試料1リットルにつき0.03ミリグラム超などの要件に当たるものが、第2号として加えられました。
告示第40号は、こうした対象拡大に合わせて処理の基準を書き換えるものです。告示の題名そのものから「低濃度」が削られ、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物に係る無害化処理の内容等の基準等」となりました。
なぜいま——JESCOの処理事業が終わったから
環境省は、意見公募の結果の中でこの改正の位置づけを説明しています。
高濃度PCB廃棄物は、これまでJESCO(中間貯蔵・環境安全事業株式会社)の処理施設で国の事業として処理されてきました。その処理事業は終了しています。
一方で、意見を寄せた人が指摘したとおり、「古い建物、倉庫、工場、電気設備等からPCB廃棄物が散発的に発見される可能性」は残ります。処理先がなければ、見つかっても行き場がありません。
環境省は、この改正を踏まえ「廃棄物処理法に定める環境大臣による無害化処理認定制度によって高濃度PCB廃棄物の処理施設を確保していく」とし、あわせて、令和8年6月19日に公布されたポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法及び中間貯蔵・環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律(令和8年法律第44号)に基づき処理を進めるとしています。
指摘された課題
意見公募は令和8年5月8日から6月8日まで行われ、4件の意見が提出されました。件数は少ないものの、安全管理をめぐる具体的な注文が並んでいます。
薄めて基準をクリアする不正が起きないか——「産廃として扱うPCBに濃度の指定があるが、水や土などで薄めて廃棄、などという不正が起きない様、追加の条文を考えた方が良いのではないか」という意見が出ました。環境省は、無害化処理認定を受けた者が基準に合致しない処理を行った場合や、認定を受けていない者が処理を行った場合は改善命令等や罰則の対象になるとし、「既に不適正な処理を防ぐための規定は廃棄物処理法に規定されているため、現時点では、規定の追加は考えていません」と回答しました。
JESCOと同等以上の安全管理水準を明記すべき——高濃度PCB廃棄物を民間の制度に位置付けるなら、安全性の担保・監視体制・情報公開についてより具体的な基準を設けるべきだとして、排ガス・放流水の数値基準と監視方法、前処理後の投入基準の科学的根拠、試験頻度(「6か月に1回以上」では不十分でロットごとの確認を義務付けるべき)、高濃度と低濃度の混合の原則禁止、情報公開義務の強化、自治体への支援、十分な準備期間など、10項目の指摘が寄せられました。
環境省は、これらに対して次のように回答しています。
安全性の担保、監視体制、情報公開については、今後、「PCB廃棄物収集・運搬ガイドライン」、「微量PCB汚染廃電気機器等の処理に関するガイドライン(洗浄処理編)」及び「低濃度PCB廃棄物の処理に関するガイドライン(焼却処理編)」を改訂し、高濃度PCB廃棄物の処理に必要な事項等について具体的な基準や方法等を示すこととしています。
認定にあたっては、PCB廃棄物の処理技術や作業上の安全衛生について、多様な分野の専門家からなる技術評価委員会の確認を受けること、申請書類を公告縦覧して利害関係者からの意見を考慮すること、認定を受けた事業者は定期的なモニタリングの結果を環境省令の定めるところにより公表しなければならないことも示されました。
つまり、告示で数値基準まで書き切るのではなく、ガイドラインの改訂と個別の認定審査で担保する、というのが環境省の立場です。ガイドライン改訂の内容は、この告示の時点ではまだ公表されていません。
誰に関係するか
直接の名宛人は、無害化処理の認定を受ける処理業者です。ただし、実務上影響が大きいのはPCB廃棄物を出す側です。
古い建物や設備の解体・更新で、PCBを含むおそれのある変圧器・コンデンサー・安定器などが見つかった場合、これまでは「高濃度なら処理先がない」という状態が生じ得ました。今後は、環境大臣の認定を受けた民間施設が受け皿になり得ます。
ただし、認定は施設ごと・処理方法ごとに個別に行われます。処理を委託する際は、委託先が認定を受けているか、認定の範囲に自社の廃棄物の種類と濃度が含まれているかを確認してください。判断に迷う場合は、都道府県・政令市のPCB廃棄物担当部署が相談窓口です。
出典
- 「無害化処理に係る特例の対象となる一般廃棄物及び産業廃棄物の一部を改正する告示(案)」及び「低濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物に係る無害化処理の内容等の基準等の一部を改正する告示(案)」に対する意見募集の結果について(環境省・令和8年8月20日)
- 無害化処理に係る特例の対象となる一般廃棄物及び産業廃棄物の一部を改正する告示(令和8年環境省告示第39号・令和8年8月20日公布/官報号外第186号)
- 低濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物に係る無害化処理の内容等の基準等の一部を改正する告示(令和8年環境省告示第40号・同日公布)
- 令和8年8月20日付 官報 目次(インターネット版官報)