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経済安保推進法とJBIC法の改正が令和8年(2026年)9月18日に施行されました 海外事業を国が認定してJBICが劣後出資する「OESA」が始まる(令和8年政令第288号)

令和8年(2026年)9月16日の官報(号外第206号)に、令和8年政令第288号「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律及び株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」が掲載されました。

この政令が定めた施行日は、令和8年(2026年)9月18日です。

どの法律の、いつの話か

もとになる法律は、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律及び株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律(令和8年法律第38号)です。令和8年6月10日に成立し、同年6月17日に公布されました。

この改正法の附則第1条は、施行日を次のように分けていました。

区分対象施行日
本文上記以外のすべての規定(OESA・JBIC法改正が中心)公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日 → 令和8年9月18日
第1号附則第3条から第6条まで・第10条(準備行為等)公布の日(令和8年6月17日)
第2号推進法第53条第1項等の改正規定公布の日から起算して1月を経過した日(令和8年7月17日)
第3号推進法第2条第2項、第3条の次に3条を加える改正、第6条・第7条ほかの改正規定公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日 → 令和8年9月18日
第4号推進法第50条第1項の改正規定公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日 → 未定

今回の政令第288号は、このうち本文と第3号の2つを、いずれも令和8年9月18日と定めたものです。

9月18日から何が始まるのか

1. 経済安保海外事業促進制度(OESA)

今回いちばん大きいのが、特定海外事業の促進に関する制度です。内閣府はOESA(Overseas Economic Security Arrangement)と呼んでいます。

内閣府の改正概要によれば、これは「我が国の経済安全保障上重要であるが、採算性に不確実性があるため、既存の支援ツールだけでは、民間企業から十分な投資が行われない海外事業」を支援するための制度です。

対象となる特定海外事業は、海外において事業者が行う次の3つです。

  1. 国際的な輸送網の強靱化のための施設等の整備・運用
  2. 重要サービスの提供に用いられる施設等の整備・運用
  3. 重要技術の海外展開のための施設等の整備・運用

想定される事業のイメージとして、内閣府の資料は外航船の燃料補給拠点、衛星通信システムの地上設備、オープンRANシステムの導入を挙げています。

手続きの流れは次のとおりです。

  1. 民間事業者が特定海外事業計画を作成し、主務大臣(内閣総理大臣および財務大臣)に申請する
  2. 主務大臣は、関係省庁と連携して経済安全保障上の重要性を判断したうえで、計画を認定する
  3. 認定を受けた事業者は、株式会社国際協力銀行(JBIC)からの劣後出資等や、主務大臣からの情報提供・助言等の支援を受けられる

劣後出資とは、通常の出資よりも後に利益の分配を受け、損失を先に負担する出資の形です。国が先に損を引き受けることで、民間のお金を呼び込むという設計になっています。

2. JBICに新しい勘定ができる

JBIC法も同時に改正されます。

  • JBIC法の目的規定に、認定特定海外事業の実施に必要な金融を行い、経済安全保障の推進に寄与することが追加される
  • JBICは、認定特定海外事業促進業務について、他の業務と経理を区分し、勘定を設けて整理する
  • この新勘定の業務は、収支相償の原則(勘定全体で収支のバランスが保たれていることを求める原則)と償還確実性の原則(融資等に係る資金の償還が確実であることを求める原則)の適用を受けない

JBICの既存の一般勘定・特別勘定にはこれらの原則が(一部)かかっていますが、新勘定はどちらもかからない設計です。内閣府の資料は、新勘定について「一般会計予算から資本金を支出予定」としています。

3. 特定重要物資に「役務」が加わる

附則第1条第3号で同日施行になる部分には、サプライチェーン強靱化の制度の見直しが含まれます。内閣府の改正概要によれば、次の2点です。

  • 重要な物資の供給に不可欠な役務に外部依存性・供給途絶蓋然性等がある場合、特定重要物資として指定・支援する仕組みを整備する
  • 安定供給確保に向けた相互連携・協力の努力義務と、支障が生ずるおそれがある場合の協力要請等を規定する

これまで「物資」を対象にしてきた制度に、その供給に欠かせない「役務(サービス)」が入ります。

4. シンクタンクと官民協議会

同じく第3号で、次の2つが新設されます。

  • 総合的な経済安全保障シンクタンク:内閣官房を司令塔とし、外交・情報・防衛・経済・技術の専門知識を集めて総合的な調査研究・政策提言を行う業務を、独立行政法人経済産業研究所に追加する
  • 官民協議会:官民の関係者が参画して、経済安全保障を確保するための対策等について協議を行う協議会を創設する

5. 先端的な重要技術の開発支援の基金

研究開発等の伴走支援を行う指定基金協議会を設置できる基金の対象範囲が拡大されます。

同じ日に公布された関係の政省令・告示

9月16日の官報(号外第206号)には、OESAを動かすための関係規定がまとめて掲載されました。

番号名称
令和8年政令第289号内閣府本府組織令の一部を改正する政令
令和8年政令第290号株式会社国際協力銀行法施行令の一部を改正する政令
令和8年内閣府・財務省令第5号株式会社国際協力銀行法施行規則
令和8年内閣府・財務省令第6号株式会社国際協力銀行の会計に関する命令
令和8年内閣府・財務省告示第6号認定特定海外事業促進業務指針
令和8年内閣府・財務省告示第7号株式会社国際協力銀行法施行令第5条の2第4号に規定する主務大臣が定める基準を定める件
令和8年内閣府・財務省告示第8号株式会社国際協力銀行法第36条第3号の規定に基づき主務大臣の指定する金融機関を定める件
令和8年財務省告示第265号経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律及び株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律の施行に伴う財務省関係告示の整備に関する告示

政令第289号と第290号は、いずれも附則で「改正法の施行の日(令和8年9月18日)から施行する」と定めています。

まだ施行日が決まっていない部分

改正法のうち、推進法第50条第1項の改正規定(附則第1条第4号)は、今回の政令に含まれていません。

推進法第50条第1項は、基幹インフラ制度(特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する制度)の対象となる特定社会基盤事業を列挙している条文です。今回の改正では、ここに医療分野(医療情報基盤・診療報酬審査支払機構が行う医療DX関連業務および一定の病院が行う医業等)が追加されます。

この部分の施行日は「公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日」のままで、期限は令和9年(2027年)12月17日です。病院や医療情報の基盤に関わる事業者にとっては、こちらが本番になります。施行期日を定める政令が出たら、あらためて確認が必要です。

指摘された課題

改正法にもとづく基本方針・各基本指針の案について、内閣府は令和8年7月28日から8月26日まで意見を募集し、30通・88件の意見が寄せられました。結果は令和8年9月11日に公示されています。制度の運用に向けて、次のような指摘が出ています(いずれも意見の要旨)。

  • 境界が不明確という指摘:基本方針案では「何が『経済安全保障』に該当し、どこからが通常の産業政策・成長戦略となるのか、その境界が明確ではない」。支援・規制を行う場合の判断基準について、通常の経済政策・産業政策との区別を含め具体的な考え方を明示すべき
  • 裁量の拡大への懸念:「『経済安全保障上必要』という抽象的な理由だけで行政の裁量を広げれば、将来的に対象分野や規制が際限なく拡大」するおそれがある。対象範囲、指定基準、政府が取得できる情報、情報の利用目的、保存期間、第三者提供について明確な制限を設けるべき
  • 中小企業の負担:中小企業は法務や情報管理を担当する人員・資金が限られるため、調査・報告・届出等は必要最小限とし、同じ情報を複数の省庁や機関に重複して提出させないようにしてほしい
  • 窓口の一元化:複数省庁にまたがる制度運用で事業者が問い合わせ先に困らないよう、事業者向け相談窓口の一元化、Q&Aや技術的解説、過去の事例集の定期的な更新・公表を明記してほしい
  • 海外事業支援の説明責任:特定海外事業への支援について、支援対象の選定理由、期待される国内裨益、継続評価の方法、計画変更・取消しの判断基準、撤退・失敗時の検証方法を、営業秘密や安全保障上の機微を除いた範囲で公表できる形に整理すべき
  • 指定要件の定量化:特定重要物資の指定要件に「特定国への依存度が50%超」といった定量的な閾値を設定すべき

内閣府は、窓口の一元化や事例集については「今後の制度運用の参考とさせていただきます」、指定要件の定量化については「各物資ごとにサプライチェーンやその強靱化に向けた取組が異なることから、指定の要件に定量的な基準を設けることや具体的な代替調達先として具体的な地域を念頭において示すことは困難です」と回答しています。

誰に関係するか

海外で事業を行う(行おうとする)民間事業者のうち、国際的な輸送網、重要サービスの提供、重要技術の海外展開にあたる事業を検討している企業は、特定海外事業計画の認定という新しい選択肢が増えます。認定基準(実施体制、資金の額と調達方法、情報管理体制)を確認してください。

特定重要物資に関わる事業者は、指定の対象に「役務」が加わったこと、安定供給確保に向けた協力要請の規定が設けられたことを確認してください。

特定社会基盤事業者に指定されている事業者にとっては、事業者指定の直後から届出ができるようにする運用改善(推進法第53条第1項ただし書)が、9月18日以後に指定を受けた者から適用されます。

病院や医療情報基盤に関わる事業者は、今回の政令の対象外です。施行期日を定める政令が出るまでは、基幹インフラ制度の届出義務はかかりません。

出典

家族に説明するなら

国の「経済安全保障」の法律が、9月18日から新しくなるよ。いちばん大きいのは、海外でやる事業を国が支援する新しい仕組み。たとえば船の燃料を補給する海外の拠点や、衛星通信の地上設備みたいに、日本にとって大事だけど「もうかるかどうか分からない」から会社だけでは手を出しにくい事業がある。そこで、会社が計画を出して国が「これは大事だ」と認めたら、国際協力銀行というお金を貸す政府の銀行が、損をしたときに先に負担する形でお金を出す――という仕組みができたんだ。ほかにも、足りなくなると困る「物」だけでなく「サービス」も国の支援の対象になったり、国と民間が集まって話し合う会議ができたりするよ。普通に暮らしている人が何か手続きをする話ではないけれど、輸入に頼っているものを減らしていこう、という国の動きのひとつだよ。ちなみに、病院やお医者さんの分野を「重要インフラ」に加える部分だけは、まだ始まる日が決まっていないんだ。

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