令和8年(2026年)9月25日の官報(本紙第1795号)に、一般用医薬品のリスク区分に関する厚生労働省告示第356号・第357号・第358号が掲載されました。いずれも令和8年9月28日から適用されます。
対象は胃腸薬の成分イトプリド塩酸塩です。一般用医薬品では小林製薬の「イラクナ」が該当します。第1類医薬品から第2類医薬品に変わり、そのうち特別の注意を要する「指定第2類医薬品」になりました。
3本の告示で何が変わったか
| 告示 | 内容 |
|---|---|
| 第356号 | 第1類医薬品・第2類医薬品の指定(平成19年厚生労働省告示第69号)を改正し、第2類医薬品の表にイトプリドを新設 |
| 第357号 | 特別の注意を要するものとして指定する第2類医薬品(平成21年厚生労働省告示第120号)を改正し、イトプリドを新設 |
| 第358号 | 区分が変わった医薬品について、変更後の区分の表示を要しない医薬品と期間(施行規則第216条の2第1項)を改正し、イトプリドを新設。経過期間を終えたオキシメタゾリン・クロルフェニラミンを削除 |
イラクナとはどんな薬か
厚生労働省の薬事審議会の資料によると、概要は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 販売名(製造販売業者) | イラクナ(小林製薬株式会社) |
| 成分・含量 | 1日量(3錠)中 イトプリド塩酸塩150mg |
| 効能・効果 | 胃もたれ、胃部・腹部膨満感、食欲不振、胸やけ、はきけ、嘔吐 |
| 用法・用量 | 大人(15歳以上)1回1錠、1日3回 |
| 承認 | 2021年12月27日 |
| 発売 | 2022年9月28日(要指導医薬品として) |
医療用医薬品として使われてきた成分を一般用に転用した、いわゆるスイッチOTCです。新しくスイッチされた成分は、最初は薬剤師が対面で販売する「要指導医薬品」として出て、製造販売後調査を経てリスク区分が見直されます。イトプリドは2022年9月(要指導)→ 令和7年9月(第1類)→ 令和8年9月28日(指定第2類)と、4年かけて段階的に区分が下がりました。
第1類と第2類で何が違うか
| 第1類医薬品 | 第2類医薬品(指定第2類を含む) | |
|---|---|---|
| 販売できる人 | 薬剤師のみ | 薬剤師または登録販売者 |
| 購入者への情報提供 | 書面による情報提供が義務 | 努力義務 |
| 陳列 | 購入者が直接手に取れない場所 | 指定第2類は、情報提供を行う場所から7メートル以内など |
いちばん大きな違いは、薬剤師が不在の時間帯でも、登録販売者がいれば買えるようになることです。指定第2類医薬品の外箱には、「2」の数字を丸や四角で囲んだ表示が付きます。
なぜ「指定」第2類なのか
厚生労働省の資料(令和8年6月18日の医薬品等安全対策部会・資料1-2)は、令和8年4月24日の安全対策調査会での議論を次のようにまとめています。
本剤について、作用が比較的穏やかであること、重篤な副作用が見られていないとの意見のほか、類薬と比較して、作用機序に起因すると考えられる相互作用の確認が多いこと、ラットでの胎児移行に関する薬物動態学的な特徴等から、相対的リスクとしては第2類としつつ、そのうち特別の注意を要するものとして指定第2類医薬品に指定することが妥当との結論となった。
同じ資料によると、製造販売後調査(2022年9月28日〜2025年9月27日)の特別調査3,056症例で、副作用は63例111件(2.06%)、重篤な副作用はなしでした。未知の副作用として、おくび・口渇(各4件)、腹部膨満感・上腹部痛など(各2件)が報告されています。
「第1類医薬品」の箱は1年間そのまま売られる
告示第358号は、区分が変わった製品について、変更後の区分の表示をしなくてよい期間を適用日から1年間設けます。すでに製造されて流通している製品の表示をすぐに変えるのが難しいためです。この間、店頭には「第1類医薬品」と表示された箱と、「第2類医薬品」と表示された箱が並ぶことがあります。
意見募集では、表示と実際の区分が一致しない商品が並ぶと消費者が混乱するという意見が寄せられました。これに対し厚生労働省は、都道府県と関係団体に通知を出し、表示にかかわらず変更後の区分に従った陳列、販売、情報提供が行われるよう対応すると回答しています。また、「要指導医薬品」と表示された製品が流通できるのは令和8年9月27日までで、9月28日以降に出回る製品の表示は「第1類医薬品」か「第2類医薬品」のどちらかになる、とも説明しています。
買うときに気をつけたいこと
- 区分が下がっても、成分・分量・効能は変わりません。箱の表示が「第1類」でも「第2類」でも中身は同じです。
- 資料が「相互作用の確認が多い」と指摘しているとおり、ほかに飲んでいる薬がある人は店頭で伝えてください。指定第2類医薬品は、相談を受けやすい場所の近くに置かれます。
- 15歳未満は服用しないことになっています。妊娠中・授乳中の人は、購入前に薬剤師か登録販売者に相談してください。
意見募集の結果
| 告示 | 意見募集期間 | 意見数(e-Gov) | 案の修正 |
|---|---|---|---|
| 第356号・第357号 | 令和8年5月1日〜5月30日 | 0件 | なし |
| 第358号 | 令和8年7月14日〜8月13日 | 4件(うち1件は案と無関係) | なし |
第358号には、表示の猶予期間を設けること自体に反対する意見もありました。厚生労働省は、施行前に製造販売された製品の置き換えに必要な期間を考慮して1年間とした、と回答しています。