何が起きたか
厚生労働省は令和8年(2026年)9月30日、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令」(令和8年厚生労働省令第142号)を公布しました。
令和7年(2025年)5月に成立した薬機法などの改正法(令和7年法律第37号)のうち、公布から2年以内に施行される部分に合わせて、薬機法施行規則や保険薬局の療養担当規則など多くの省令をまとめて改めるものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 命令 | 厚生労働省令第142号(令和8年9月30日公布・官報号外) |
| 施行 | 令和9年(2027年)5月20日(改正法附則第1条第3号に掲げる規定の施行の日) |
| 意見募集 | 令和8年7月31日〜8月29日、54件(e-Gov 案件番号495260120) |
改正点は多岐にわたります。この記事では、薬局の記録の保存期間と、製造販売業者の3つの責任者を中心にまとめます。
薬局:処方箋・調剤録と服薬指導記録の保存が5年に
| 記録 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 保険薬局の処方箋・調剤録(療担規則第6条) | 完結の日から3年 | 完結の日から5年 |
| 調剤した薬の情報提供・服薬指導の記録(薬機法施行規則) | 記載の日から3年 | 最終の記載の日から5年 |
保険薬局の処方箋・調剤録の5年は、保険医療機関が診療録(カルテ)を完結の日から5年保存することとされているのと同じ長さです。
服薬指導の記録は、年数に加えて数え始める日も変わります。同じ患者の記録に書き足していく場合、改正後は最後に書き足した日から5年です。
施行日より前の記録は従来どおり
省令の附則に経過措置があります。
- 施行日より前に完結した保険薬局の処方箋・調剤録は、改正前の規定(3年)による
- 施行日より前に最終の記載がされた服薬指導の記録は、改正前の規定(記載の日から3年)による
意見募集では、薬局のシステムの改修や保存容量の確保が必要になるとして十分な準備期間を求める意見が出ました。厚生労働省は、この経過措置を置いたことと、公布から施行まで一定の期間を確保したことを挙げて答えています。
製造販売業者:3つの責任者
改正法は、医薬品の製造販売業者に、次の責任者を置くことを法律で義務付けました。省令は、その要件や業務、記録の保存を定めています。
| 責任者 | 主な要件(省令・意見募集の回答から) |
|---|---|
| 医薬品品質保証責任者 | 品質保証部門の責任者であること。品質管理に関する業務その他これに類する業務に3年以上従事したこと |
| 医薬品安全管理責任者 | 安全管理統括部門(第1種)または安全確保業務を行う部門(第2種)の責任者であること。3年以上の従事経験は第1種医薬品製造販売業のみ |
| 特定医薬品供給体制管理責任者 | 特定医薬品供給体制管理業務に3年以上従事したこと。総括製造販売責任者や、品質管理・製造販売後安全管理の部門に属さないこと |
品質保証責任者と安全管理責任者は、これまでGQP・GVPの省令(品質管理・製造販売後安全管理の基準)に置かれていた責任者を、法律上の存在にしたものです。厚生労働省は、求める内容の考え方は従来と同じだとしています。社外の人を任命することはできません。
供給体制管理責任者:医療用医薬品の安定供給に責任を持つ人
新しく置かれるのが特定医薬品供給体制管理責任者です。改正後の薬機法第18条の2の2により、特定医薬品の製造販売業者は、製造販売の計画の策定、供給状況の調査、製造業者・卸売販売業者などとの連絡体制の整備といった「供給体制の管理」を統括させるため、この責任者を置かなければなりません。
「特定医薬品」は、医薬品から、要指導医薬品・一般用医薬品・薬局製造販売医薬品・省令で定めるもの・動物用医薬品を除いたものです(改正後の薬機法第2条第17項)。おおむね医療用医薬品が対象になります。
意見募集の回答から分かる運用は次のとおりです。
- 経過措置はない。令和9年5月20日の施行日までに選任する必要がある
- 品質保証・安全管理の業務がおろそかにならないよう、事業規模にかかわらず品質・安全管理部門との兼務を認めない
- グループ会社など別法人の供給体制管理責任者との兼務も認めない
- 置かなかった場合は、許可の取消しや業務停止の対象になり得るほか、罰則もある
- どの業務が「特定医薬品供給体制管理業務」に当たるかなど、運用の詳細は今後通知で示す
責任者が書面で述べた意見や、関係者に連絡・指示した文書の写しは、5年間保存します。
許可台帳の経過措置
製造販売業の許可申請書と許可台帳には、各責任者の氏名などが加わります。施行の時点ですでに許可を受けている業者は、施行後最初の許可更新まで、台帳にこれらを記載しなくてかまいません。
指摘された課題
意見募集(54件)では、次のような指摘が出ています。
- 責任者の独立性:責任者を置いても、経営上の都合や出荷を優先する判断で意見が退けられれば実効性がないとして、経営会議や取締役会への直接の報告権限、意見を採用しなかった場合の理由の記録、意見を述べた責任者への不利益取扱いの禁止を求める意見。厚生労働省は、独立性の確保は慎重に検討すべき事項だとして、今後の検討の参考にすると答えました
- 小規模事業者の兼務と経験者不足:小規模な組織では兼務を認め、3年の経験者がいない場合の経過措置を設けてほしいという意見。厚生労働省は兼務規制を原案どおりとし、経過措置も設けないとしたうえで、兼務できる範囲は小規模事業者にも配慮しつつ業界団体の意見を聞いて検討するとしています
- 第2種の安全管理責任者の経験要件:これまで第2種医薬品製造販売業には3年の従事経験を求めていなかったため、求めると混乱するという意見。厚生労働省はこれを受けて、第1種のみに求める形に修正したと答えています(e-Govの結果公示の「案の修正の有無」欄は「無」となっています)
- 平時からの供給リスクの把握:供給不安が生じてから対応するのではなく、平時から供給リスクを把握し、関係者間で情報を共有する手順書・記録・連絡経路を実効的に機能させる運用を求める意見。厚生労働省は、制度の実効性が担保される運用方法を検討するとしています