令和8年(2026年)9月16日の官報(号外第206号)に、対内直接投資の審査制度に関する政令が2本、公布されました。
- 令和8年政令第295号 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令
- 令和8年政令第296号 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令
政令第295号は1行で、「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律の施行期日は、令和9年4月1日とする」と定めています。改正法(令和8年法律第30号)は令和8年6月5日に公布され、附則第1条で施行日を「公布の日から1年以内において政令で定める日」としていました。これが確定しました。
改正法(令和8年法律第30号)は何を変えるのか
財務省が法律案の段階で示した概要によると、改正の内容は次の5つです。
| 内容 | 施行 | |
|---|---|---|
| (1) | 外国投資家が本邦企業に対して一定の投資をしている海外法人等の議決権を50%以上取得する行為等について、対内直接投資等として規制対象に加える | 令和9年4月1日 |
| (2) | 事前届出において、国の安全等を損なうおそれをなくするための措置(リスク軽減措置)を講ずる場合には当該措置を届け出なければならない。届け出た内容を変更しようとするときは、あらかじめ変更を届け出なければならない | 令和9年4月1日 |
| (3) | 外国投資家以外の者が、契約等に基づき、非居住者等のために当該非居住者等の名義によらないで行う対内直接投資等・特定取得について、その者を外国投資家とみなして外国投資家に係る規定を適用する | 令和9年4月1日 |
| (4) | 事前届出の対象でない対内直接投資等・特定取得のうち、将来において国際情勢の変化その他の事由により国の安全を損なうおそれが大きいものに該当するおそれが大きいものについて、特に必要があるときは報告を求めることができることとし、該当すると認められるときは株式等の処分等の勧告・命令ができる | 令和9年4月1日 |
| (5) | 財務大臣及び事業所管大臣は、審査等において必要があると認めるときは、関係行政機関の長に意見を求めなければならない | 公布の日(令和8年6月5日)にすでに施行済み |
(5)だけは公布の日から施行されているので、すでに動いています。今回の政令で決まったのは(1)〜(4)の施行日です。
法律の趣旨として財務省は、「我が国経済の健全な発展に寄与する対内直接投資の一層の促進を図っていくことは重要な政策課題である。他方、国際情勢の複雑化や社会経済構造の変化等により、安全保障の裾野が経済分野に急速に拡大する中、国の安全等を損なうおそれがある対内直接投資に適切に対応する必要がある」と説明しています。投資を促す側と、安全保障上の審査を強める側の両方を同時に動かすという立て付けです。
政令第296号:間接保有の数え方が変わる
政令第296号は、外国為替令・対内直接投資等に関する政令をはじめとする関係政令を整備するものです。分量が多い政令ですが、実務への影響が大きいのは対内直接投資等に関する政令(昭和55年政令第261号)第2条第1項の書き換えです。
外為法第26条第1項第3号は、本邦法人のうち、外国法人等が直接または間接に保有する議決権の割合が50%以上のものを「外国投資家」としています。いわゆる外資系日本法人です。このうち「間接に保有される議決権の数」を政令で定めるのが、対内直接投資等に関する政令第2条第1項です。
改正前
議決権を直接保有する会社として数えていたのは、次のものでした。
- 当該会社の株主または出資者である他の会社(外国法人等の出資比率が100分の50以上であるものに限る)
- またはその子会社(会社法第2条第3号の子会社。外国法人・外国に主たる事務所を有する団体を除く)
改正後
この部分が「次に掲げるもの」に置き換えられ、次の2つの号が加わります。
- 法第26条第1項第1号または第2号に掲げるもの(=外国法人等)の出資比率が100分の50以上である会社
- 外国法人等の被支配会社等(個人または法人その他の団体がその経営を支配している法人その他の団体として主務省令で定めるもの)である会社(前号に掲げる者を除く)
つまり、出資比率が50%に届かなくても、外国法人等が経営を支配している会社であれば、その会社が直接保有している議決権が間接保有としてカウントされるようになります。「被支配会社等」の具体的な線引きは主務省令(対内直接投資等に関する命令)に委ねられており、その改正命令も同じ9月16日に公布されています。
施行日は4月1日、新しい判定が効くのは5月1日から
ここが読み落としやすい部分です。政令第296号の附則は、施行期日と適用日を分けています。
附則第1条(施行期日)
- 原則:改正法の施行の日(令和9年4月1日)から施行する
- ただし、次の部分は公布の日(令和8年9月16日)から施行する
- 第1条中、外国為替令第7条の改正規定の一部(第17条第3号の下に括弧書きを加える部分に限る)と、同令第7条の2から第7条の3までの改正規定
- 第2条中、対内直接投資等に関する政令第2条第11項第3号の改正規定の一部、同条第13項の改正規定、同令第3条第11項第1号および第2号の改正規定の一部
附則第2条(経過措置)
新しい第2条第1項および第4項の規定は、この政令の施行の日から起算して30日を経過した日(附則ではこれを「適用日」と呼んでいます)以後に行う資本取引・対内直接投資等・特定取得について適用し、適用日前に行ったものはなお従前の例による、と定めています。
施行の日が令和9年4月1日なので、適用日は令和9年5月1日です。
| 日付 | 何が起きるか |
|---|---|
| 令和8年6月5日 | 改正法の公布。関係行政機関の長への意見照会の義務化はこの日から施行 |
| 令和8年9月16日 | 政令第295号・第296号の公布。政令第296号のうち附則第1条ただし書に掲げる部分はこの日から施行 |
| 令和9年4月1日 | 改正法((1)〜(4))と政令第296号(一部を除く)の施行 |
| 令和9年5月1日 | 対内直接投資等に関する政令の新第2条第1項・第4項の適用開始(適用日) |
4月1日から5月1日までの1か月は、法律は動いているが、間接保有の数え方は従前のままという期間になります。案件のクロージング日をこの前後に置く場合は、どちらの基準で判定されるかが変わります。
同じ日に公布された下位法令
政令第295号・第296号のほかに、同じ9月16日の官報(号外第206号)で次のものが公布されています。いずれも対内直接投資の審査に関わるものです。
| 法令 | 内容 |
|---|---|
| 内閣府・総務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省令第6号 | 対内直接投資等に関する命令および外国為替法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則の一部を改正する命令 |
| 同告示第3号 | 対内直接投資等に関する命令第3条第6項の規定に基づき財務大臣及び事業所管大臣が定める対内直接投資等を定める件等の一部を改正する告示 |
| 同告示第4号 | 対内直接投資等に関する命令第3条第2項及び第6項、第3条の2第4項、第4条第3項並びに第4条の3第3項の規定に基づき、財務大臣及び事業所管大臣が定める技術又は情報を定める件 |
| 財務省・経済産業省告示第9号 | 対内直接投資等に関する命令第3条第14項の規定に基づき、財務大臣及び経済産業大臣が定める特定技術を定める件 |
| 財務省令第60号 | 外国為替に関する省令の一部を改正する省令 |
「被支配会社等」の範囲や、事前届出が必要になる業種・技術の細目はこれらの命令・告示で定まります。実務では、政令だけでなくこちらまで見る必要があります。
いま確認したいこと
- これは事業者向けの制度です。個人が外貨預金や海外送金をするときの手続が変わる話ではありません。
- 影響が出るのは、外国法人等が議決権を持っている日本法人と、日本企業に投資しようとする海外の事業者です。自社が外為法第26条第1項第3号の「外国投資家」に当たるかどうかは、新しい判定で数え直す必要があります。
- 施行日(令和9年4月1日)と、間接保有の新しい判定が効く適用日(令和9年5月1日)は別の日です。
- 政令第296号の一部はすでに令和8年9月16日から施行されています。附則第1条ただし書に掲げられた条文が自社に関係するかを確認してください。
出典
- 官報 令和8年9月16日(号外 第206号)13ページ 政令第295号「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」
- 官報 令和8年9月16日(号外 第206号)14〜26ページ 政令第296号「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令」
- 財務省「「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律」について」
- 財務省「「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案」について(令和8年3月)」
- e-Gov法令検索「対内直接投資等に関する政令(昭和55年政令第261号)」(改正前の第2条第1項)