令和8年(2026年)8月28日、「地方自治法施行令及び公職選挙法施行令の一部を改正する政令」(令和8年政令第262号)が公布されました(官報号外第192号)。施行は令和8年9月3日です。
地方公共団体が外部監査契約を結んだときに告示する事項から、外部監査人の「住所」が削除されます。役所が個人の住所を公表しない方向への見直しの一つです。
何が変わるか
包括外部監査契約(令第174条の49の28第1号)
地方自治法第252条の36第6項に基づく告示事項が、次のように改まります。
| 現行 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 第1号 | 包括外部監査契約を締結した者の氏名及び住所 | 包括外部監査契約を締結した者の氏名 |
| 第2号 | 包括外部監査契約を締結した者に支払うべき監査に要する費用の支払方法 | 変更なし |
個別外部監査契約(令第174条の49の35第1号)
地方自治法第252条の39第9項に基づく告示事項も同じ形です。
| 現行 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 第1号 | 個別外部監査契約を締結した者の氏名及び住所 | 個別外部監査契約を締結した者の氏名 |
| 第2号 | 個別外部監査契約を締結した者に支払うべき監査に要する費用の支払方法 | 変更なし |
| 第3号 | 個別外部監査契約が当該個別外部監査契約を締結した普通地方公共団体の包括外部監査人と締結されたものである場合には、その旨 | 変更なし |
削られるのは住所だけで、費用の支払方法などほかの告示事項はそのまま残ります。
補助者の住所告示は法律のほうで廃止
外部監査人の監査の事務を補助する者(補助者)の住所告示については、この政令ではなく、分権一括法(地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律・令和8年法律第27号)の本則第2条による地方自治法の改正で廃止されます。総務省は「法の一部改正により補助者の住所告示を廃止するとともに、令の一部改正により外部監査人の住所告示を廃止する」と説明しています。
法律側と政令側で片方ずつ措置されているため、政令だけを見ても全体像が分かりません。施行日が同じ9月3日にそろえられているのはこのためです。
なぜ変わるのか
総務省は、令和7年の地方分権改革に関する提案募集において「外部監査人及び外部監査人の監査の事務を補助する者の住所の告示を廃止すること」という提案があったことを受けた措置だとしています。自治体側からの提案が出発点です。
公職選挙法施行令の改正は引用条項の整理
同じ政令で、公職選挙法施行令第141条第1項(財産区の議会の議員の選挙事務の管理)の引用が、「地方自治法第295条に規定する条例で定めるもの」から「地方自治法第295条第1項に規定する条例で定めるもの」に改められます。
これは分権一括法によって地方自治法第295条の規定が改正されることに伴う整理で、制度の中身は変わりません。総務省は、行政手続法施行令第4条第2項第1号に該当し、行政手続法第39条第4項第8号の「他の法令の制定又は改廃に伴い当然必要とされる規定の整理」にあたるとして、この部分については意見公募手続を実施していません。
なお意見公募のときの政令名は「地方自治法施行令の一部を改正する政令」でしたが、公布時に「地方自治法施行令及び公職選挙法施行令の一部を改正する政令」に改められています。
指摘された課題
意見公募(パブリックコメント)は令和8年6月13日から7月13日まで行われ、7件の意見が提出されました(ほかに案と無関係と判断されたものが2件)。提出意見を踏まえた案の修正はありません。
住所の告示をやめること自体には賛成しつつ、透明性が下がることへの懸念と、住所に代わる情報を告示事項に加えるべきだという指摘が複数ありました。
住所の公表を廃止すること自体には異論はありません。しかし、氏名のみの公表では、住民が監査人の資格や所属を容易に確認することができず、監査制度の透明性が低下するおそれがあります。特に、同姓同名の公認会計士や弁護士等が存在する場合には、住民が公的な登録情報等を検索しても対象者を正確に特定できず、誤認や混同が生じる可能性があります。
この意見は、住所に代えて所属監査法人・法律事務所等の名称及び所在地、公認会計士・弁護士等の登録番号など、公的登録情報と照合できる事項を告示事項に追加すべきだとしています。別の意見も、所属する事務所の所在地や所属団体(公認会計士協会、弁護士会など)の名称を登録・公表する運用上の配慮を求めています。
総務省は、いずれの意見に対しても同じ考え方を示しています。
地方公共団体の長は、外部監査契約を締結する過程で、公認会計士や弁護士等の一定の資格を有するものであることを証する書面や履歴書等の書類を徴することとされており、これにより、地方公共団体は個人を特定する事項を把握することができます。
また、地方公共団体が外部監査契約を締結するには、契約を締結する前に監査委員の意見を聴取し、議会の議決を経る必要があること、地方公共団体の長は候補者の資格を証する書面を一定期間一般の閲覧に供しなければならないとされていることから、住所告示が廃止された場合も外部監査人の特定性や透明性は確保できると考えております。
つまり、告示以外の手続(監査委員の意見聴取、議会の議決、資格を証する書面の閲覧)で透明性は担保されるという整理です。住所に代わる告示事項の追加は行われません。
このほか「多様性の時代になり高度人材の日本人以外の方々がなることも出てくると思うので国籍表示や都道府県までの表示は必要かと思います」という意見や、「外部監査人の補助者については法律自体で決まっているのに、外部監査人そのものについては委任立法になっているというのはどういうことなのか」という制度の建て付けへの疑問も出ています。