くらし・税金 重要度: 中

空き家対策の国の基本指針が変わりました 令和8年(2026年)9月3日施行 商工会議所も支援法人に、統計は「空き家900万戸」に更新(令和8年総務省・国土交通省告示第1号)

何が起きたか

令和8年(2026年)9月3日の官報(号外第197号)に、総務省・国土交通省告示第1号が掲載されました。

空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)第六条第一項の規定に基づき、空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針(平成二十七年総務省・国土交通省告示第一号)の一部を次のように変更したので、同条第四項の規定に基づき公表する。

附則は次のとおりです。

この告示は、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(令和八年法律第二十七号)の施行の日(令和八年九月三日)から施行する。

つまり、第16次地方分権一括法の施行日にそろえて、同じ9月3日から施行されています。

「基本指針」は、市区町村が空き家対策をどう進めるかの土台になる文書です。空家法第6条第2項により、①空家等に関する施策の実施に関する基本的な事項、②空家等対策計画に関する事項、③所有者等による空家等の適切な管理について指針となるべき事項、④その他必要な事項——の4つを定めることになっています。

支援法人に商工会議所・商工会が加わる

いちばん実質的な変更です。

空家法第23条第1項は、市町村長が「空家等管理活用支援法人」を指定できると定めています。支援法人は、空家等の所有者等に対する情報提供や相談対応、市町村からの委託に基づく空家等の管理・活用などを行う法人です。

第16次地方分権一括法(令和8年法律第27号)によって、この指定の対象が広がりました。

指定できる法人
改正前特定非営利活動法人、一般社団法人、一般財団法人、空家等の管理若しくは活用を図る活動を行うことを目的とする会社
改正後上記に加えて 「その他の営利を目的としない法人」

国土交通省・総務省は、この「その他の営利を目的としない法人」として商工会議所・商工会を挙げています。地方からの提案を受けた地方分権改革の一環で、施行日は令和8年9月3日です。

基本指針の該当箇所も、これに合わせて改められました。

市町村長は、法第二十三条第一項に基づき、特定非営利活動法人、一般社団法人、一般財団法人その他の営利を目的としない法人又は空家等の管理若しくは活用を図る活動を行うことを目的とする会社であって、法第二十四条各号に掲げる業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを空家等管理活用支援法人として指定することができる。

指針は、支援法人に期待される役割として、市町村における人員等の不足を補うこと、空家等の管理・活用に係る専門的知見やネットワークを活かして所有者等や活用希望者に相談対応・普及啓発を行うこと、所有者等の委託に基づき自ら管理や活用を行うこと、市町村等の委託に基づき所有者等の探索を行うことなどを挙げています。

統計が令和5年調査に更新された

基本指針の冒頭にある「空家等の現状」が、平成30年の住宅・土地統計調査から令和5年の調査(令和6年9月25日公表)に差し替えられました。

項目改正前(平成30年調査)改正後(令和5年調査)
全国の総住宅数6,240万戸6,505万戸
総世帯数5,400万世帯5,622万世帯
空き家の数849万戸900万戸
総住宅数に占める割合13.6%13.8%
使用目的のない空家349万戸386万戸
総住宅数に占める割合5.6%5.9%
過去20年間の増加約1.9倍約1.8倍

あわせて、住宅・土地統計調査の区分名の変更を反映して、指針が使う「空き家」「使用目的のない空家」の定義の注記も改められました。「使用目的のない空家」は、令和5年調査でいう「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」に属するものを指します(改正前は「その他の住宅」)。

市町村の取組の実績も更新されています。

  • 除却・修繕等の対応がなされた空家等——約14.6万物件(令和4年度末)→ 約22万物件(令和6年度末)
  • 空家等対策計画を作成済み又は作成予定の市町村——94%(令和4年度末)→ 95%(令和6年度末)
  • 協議会を組織済み又は組織予定の市町村——69%(令和4年度末)→ 70%(令和6年度末)

「これから相続で空き家が増える」という見通しが書き加えられた

現状の記述に、次の一文が加わりました。

また、近年、高齢者のみが居住する持ち家住宅が増加しており、こうした住宅が多い地域を中心に、今後、大量に発生することが見込まれる相続等をきっかけとして更に空家の増加が見込まれるところである。

国土交通省の説明によれば、これは住生活基本計画(全国計画)(令和8年3月27日閣議決定)を踏まえて、住宅・宅地の相続の大量発生が見込まれる背景事情を反映したものです。

この見通しは、データベースの記述にもつながっています。

なお、当該努力義務の対象とは別に、近年、高齢者のみが居住する持ち家住宅が増加し、今後、大量に発生することが見込まれる相続等をきっかけに空家等が増加することが見込まれており、こうした空家等になることが予見される住宅についてもデータベース化に取り組むことも考えられる。

空家法第11条は、市町村に空家等のデータベース整備の努力義務を課しています。今回の変更は、まだ空き家になっていないが、そうなることが予見される住宅まで市町村が把握することも選択肢だと示したものです。

データベースの情報の取扱いについての追記

データベースの整備・共有に関して、次の記述が加わりました。

なお、上記による情報の共有・管理においては、個人情報保護法に基づき適正に取り扱う必要があるほか、法第十条第一項に基づき把握された空家等の所有者等に関する情報については、この法律の施行のために必要な限度において内部で利用することができることに留意が必要である。

空家法第10条第1項は、固定資産課税台帳に記載された所有者等に関する情報を、空家等対策のために市町村の内部で利用できるようにする規定です。地方税法第22条の守秘義務との関係で、以前は同じ市町村の他部局に対してであっても提供できないのが原則とされていました。今回の追記は、内部利用が「法の施行のために必要な限度において」という枠の中にあることを念押しするものです。

税の特例の説明も更新された

空家の発生を抑制するための所得税・個人住民税の特例(いわゆる相続空き家の3,000万円特別控除、租税特別措置法第35条第3項から第11項まで及び第14項)についての説明も、最新の調査に更新されました。

改正前改正後
参照する調査令和元年空家所有者実態調査(令和2年12月16日公表)令和6年空き家所有者実態調査(令和7年8月29日公表)
旧耐震基準の下で建築されたもの約78%約70%
うち耐震性がないと推計されるもの約53%約48%
耐震化の進捗状況の推計値平成30年時点(令和2年5月公表)令和5年時点(令和7年2月公表)

制度そのものは変わっていません。指針は、被相続人の居住用家屋(昭和56年5月31日以前に建築、区分所有建築物を除く)とその敷地を相続で取得した個人が、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に譲渡した場合(相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡に限り、譲渡対価が1億円を超えるもの等を除く)に、譲渡所得から3,000万円を特別控除できる、と説明しています。

相続登記の義務化との連携

「空家等の発生又は増加の抑制等に資する施策」の項目に、次の記述が加わりました。

また、令和六年四月一日から不動産の相続登記の申請が義務化されたことに伴い、空家等の権利義務関係が明らかになっていくことが期待されるため、当該制度をはじめとする相続空き家に係る関連制度の周知が図られるよう、市民部局等と連携することが重要である。

空き家対策の担当部局が、戸籍・住民票を扱う市民部局と組んで周知するように、という趣旨です。

同じ日にガイドラインも改正された

基本指針が引用する「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」も、同じ令和8年9月3日に改正されました。基本指針の本文でも、ガイドラインの最終改正日が「令和五年十二月十三日」から「令和八年九月三日」に改められています。

ガイドラインは、管理不全空家等・特定空家等に当たるかどうかの判断基準や、指導・勧告の考え方、所有者等の探索方法などを定めた文書です。国土交通省のサイトから改正後の本文(PDF)を確認できます。

注意点

  • 住民が直接行う手続きが増える改正ではありません。 基本指針は国が市区町村に示す方針の文書で、これ自体が所有者に義務を課すものではありません
  • 支援法人がどの市区町村にあるかは自治体ごとに異なります。 指定は市町村長の判断で行われるため、法人の範囲が広がったからといって、すぐに身近な商工会議所が支援法人になるわけではありません
  • 税の特例の適用期限(令和9年12月31日)は、指針の記載時点のものです。 譲渡を検討する場合は、国税庁のタックスアンサーや税務署で最新の要件を確認してください
  • この基本指針の変更については、令和8年6月9日から7月9日まで「任意の意見募集」が行われました(行政手続法に基づく意見公募手続ではありません)。本記事の確認時点(令和8年9月3日)では、その結果は公示されていません
  • 管理不全空家等・特定空家等に指定されると、固定資産税の住宅用地特例の対象から除外される場合があります。 これは今回の変更で新設された仕組みではなく、以前からある扱いです

公式リンク

根拠

  • 空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針の一部を変更する件(令和8年総務省・国土交通省告示第1号・令和8年9月3日/官報号外第197号)
  • 空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針(平成27年総務省・国土交通省告示第1号)
  • 空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第6条、第10条、第11条、第23条、第24条
  • 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(令和8年法律第27号・第16次地方分権一括法)
  • 「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」の変更について(令和8年6月・国土交通省住宅局/総務省地域力創造グループ)

家族に説明するなら

誰も住まなくなった家が、そのまま放っておかれて傷んでいくと、屋根が飛んだり壁が崩れたりして近所に迷惑がかかるよね。そういう「空き家」をどうするかを決めた法律があって、その法律に基づいて国が『基本指針』という方針の文書を出しているんだ。2026年9月3日に、この基本指針が新しくなったよ。大きな変更は2つ。ひとつは、市や町が「空き家の相談に乗ってくれる団体」として指定できる相手に、商工会議所や商工会が加わったこと。もうひとつは、数字が新しくなって、日本の空き家は900万戸、家全体の13.8%になったこと。それと「これから相続がたくさん起きて、空き家がもっと増えそうだ」という見通しが書き足された。いますぐ何か手続きをする話ではないけれど、実家をどうするか考えるときは、市役所の空き家相談窓口に聞いてみるといいよ。

本記事は公式情報をもとにした要約です。最新かつ正確な情報、申請条件、期限は必ず公式ページでご確認ください。