令和8年(2026年)9月16日の官報(号外第206号)で、建築基準法施行令の一部を改正する政令(令和8年政令第284号)が公布されました。施行は令和8年11月1日です。
改正は4つの項目からなります。そのうち3つは、具体的な対象を国土交通大臣の告示に委ねていて、その告示はまだ出ていません。
4つの改正点
| 項目 | 条文 | 中身 | 具体的な対象 |
|---|---|---|---|
| 型式適合認定 | 施行令136条の2の11第1号・10条1号 | 構造耐力の規定だけを対象にした類型を新設 | 政令で確定 |
| 採光 | 施行令19条2項4号 | 滞在時間が短いなどで衛生上支障がない施設の居室を採光規制から除外 | 告示で定める(未公布) |
| 防火・避難 | 施行令109条の2の2、112条1項・4項・5項・11項 | 延焼防止建築物などの一部を防火区画などの規制から除外 | 告示で定める(未公布) |
| 危険物 | 施行令130条の9第1項 | 水素などを燃料に使う設備を用途地域の危険物貯蔵量規制から除外 | 告示で定める(未公布) |
① 構造だけの型式適合認定を新設
型式適合認定は、建築材料や建築物の部分の「型式」が基準に適合していることを、国土交通大臣(指定認定機関)があらかじめ認定しておく制度です。認定を受けた型式を使えば、個々の建築確認で同じ審査を繰り返さずに済みます。
これまでの建築物単位の類型は、構造に加えて防火・避難や設備などの規定もまとめて認定するものでした。今回、その手前に、建築物の構造耐力に係る規定だけに適合していることを認める類型が加わります(改正後の施行令136条の2の11第1号イ)。対象は、建築基準法20条(構造耐力)と37条(建築材料の品質)、施行令第3章(構造強度)の規定です。国土交通省は意見募集の回答でこれを「構造型式認定」と呼んでいます。
意見募集の回答で示された運用は次のとおりです。
- 導入の理由:災害などで建築材料の調達が突発的に難しくなる事態に備えて、構造の規定だけをあらかじめ認定しておけるようにする。平時でも建築確認の事務負担の削減につながるとしています
- 構造以外の規定(一般構造・防火避難・建築設備)は、これまでどおり個々の建築確認で審査する
- 審査が省略されるのは同じ型式の繰り返しに限る。認定を構成する部材の大臣認定品を変えるときは、新たに構造型式認定を取り直す必要がある
- 型式部材等製造者認証の有効期間は現行と同じ5年。申請手数料も現行と同額の予定
- 特定行政庁・指定確認検査機関・指定認定機関には、運用の考え方を技術的助言などで示す予定
これまでの類型は番号が1つずつ繰り下がり(イ→ロ、ロ→ハ)、附則で、施行前に受けた認定は改正後の対応する類型の認定を受けたものとみなすとされています。すでに受けている認定を取り直す必要はありません。
② 通所型の福祉施設の採光規制を一部除外
建築基準法28条1項は、住宅や学校、病院、児童福祉施設等の居室に、床面積に応じた採光のための窓を求めています。施行令19条2項4号は、児童福祉施設等(老人福祉施設や障害者支援施設なども含む)の居室のうち、入所する人や通う人の保育・訓練・日常生活の支援などに使う居室を対象にしていて、保育所はここから除かれています。
改正で、保育所と並んで、利用者の滞在時間が短いことその他の理由により衛生上支障がないものとして国土交通大臣が定めるものが除かれます。
国土交通省は、告示では老人福祉法の老人デイサービスセンターのうち、利用者の滞在時間が短時間であるものを定める予定だと回答しています。通所型でも、宿泊型に切り替えた場合は採光規制の対象になることを関係者に周知するとしています。ショートステイや入所者も使う施設まで広げるべきだという意見には、滞在時間が特に短いことが確保される施設に限ると答えています。
③ 延焼防止建築物などの一部を防火区画などの規制から除外
防火地域・準防火地域では、耐火建築物・準耐火建築物のほか、それと同等以上の延焼防止性能を持つ建築物(延焼防止建築物・準延焼防止建築物。施行令136条の2第1号ロ・第2号ロ)を建てることができます。これらの建築物には、耐火建築物などと同じく、面積区画(施行令112条1項など)、竪穴区画(同条11項)、層間変形角(施行令109条の2の2)の規定がかかっています。
改正で、そのうち構造・用途・周囲の状況を考慮して防火上(竪穴区画などは避難上も)支障がないものとして国土交通大臣が定めるものが、これらの規定の対象から外れます。国土交通省は「技術的知見の蓄積に基づく」合理化と説明していますが、どの建築物が対象になるかは告示で示すとしていて、意見募集の時点では明らかにしていません。
④ 水素などを燃料に使う設備を危険物の貯蔵量規制から除外
建築基準法48条の用途規制では、用途地域ごとに、建築物に貯蔵・処理できる危険物の量の上限が決められています(施行令130条の9第1項)。圧縮ガスや可燃性ガスもこの危険物に含まれます。
改正で、圧縮ガス・可燃性ガスを燃料として使う設備(一体として置かれる貯蔵設備を含み、安全上・防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するものに限る)によって貯蔵・処理されるガスが、この上限の計算から外れます。
国土交通省は、対象として圧縮水素を想定していると回答しています。水素の社会実装に向けた措置で、基準は用途地域ごとではなく一律とし、貯蔵容器だけでなく消費設備につながる配管も含めて安全性を担保する基準にする予定です。
指摘された課題
意見募集には、18の個人・団体から68件の意見が寄せられました。案は修正されていません。
採光:滞在時間だけで判断してよいか
「自宅で十分に自然光を浴びられない高齢者や障害者もいる。滞在時間だけでなく、利用頻度や健康状態を踏まえて対象を限定すべき」という意見と、「採光の要件はむしろ強化すべき」という意見が出ました。国土交通省は、利用頻度などの利用実態を踏まえ、滞在時間が特に短い施設に限定すると回答しています。告示の制定にあたって高齢者や障害当事者の意見を反映してほしいという意見には「今後の施策の参考にする」と答えています。
防火:多様な利用者の避難を前提にしているか
「健常者の自力避難だけでなく、障がい者などを含めた多様な利用者の避難を想定すべきで、十分な安全が確保できない場合は対象にすべきでない」という意見に、国土交通省は「避難上及び防火上支障のないように検討する」と回答しました。「事業者の利益だけを考えた緩和で、反対する」という意見もありました。
中身を政令ではなく告示で決めること
防火の除外と危険物の基準について、具体的な内容を政令ではなく告示で定めることに反対する意見が出ました。国土交通省は、技術的基準を政令に、その具体的内容を告示に置くのが建築基準法令の例で、政令と告示が一体となって安全を確保していると回答しています。告示案については別途意見募集を行う予定です。
構造型式認定は災害時に間に合うのか
「型式適合認定には相応の審査期間がかかり、災害による突発的な資材不足に迅速に対応できるのか疑問」という意見には、災害に備えてあらかじめ認定しておく制度だと回答しています。「手抜き工事や不適正な資材の使用につながるのでは」という意見には、工事中に認定するものではなく、認定した構造部材と異なる部材は使えないので、つながらないとしています。
水素:熊本地震のガス爆発事故の後で
「令和8年熊本地震でLPガスによる爆発事故が起きたばかり。原因究明と再発防止策が確立してからにすべき」という意見に対し、国土交通省は、対象として想定する圧縮水素はLPガスとは性質が異なり、求められる技術基準も異なるとしたうえで、安全性が確保されなければならない点は同じだと回答しています。
効果を測る指標は置かない
「客観的で具体的なKPIを公表してほしい」という意見には、本改正に係るKPIは設定していないと回答しています。
誰に関係するか
型式適合認定を使っている住宅・部材メーカーは、構造だけの類型に切り替えるかどうかを、指定認定機関が示す運用を見て判断することになります。既存の認定はそのまま引き継がれます。
デイサービスなど通所型の福祉施設の開設を計画している人、水素の燃料設備を置こうとしている事業者、防火地域・準防火地域で延焼防止建築物などを計画している設計者にとっては、11月1日の施行と同時に何が対象になるかは告示次第です。告示案の意見募集が始まったら、e-Govで要件を確認してください。