令和8年(2026年)8月7日、警察庁・金融庁・消費者庁・デジタル庁・総務省・法務省・経済産業省の7府省庁が合同で、SNS等を提供する大規模事業者5社に対し、なりすまし詐欺広告への対策強化を文書で要請しました。
なりすまし詐欺広告とは
ディープフェイクを用いて著名人の肖像や音声を無断で利用したなりすまし広告を含む詐欺広告のことです。7府省庁は、こうした広告が広く流通し、これを入口とするSNS型投資詐欺などの被害が拡大しているとしています。
広告を見た人に財産上の被害をもたらすおそれがあるだけでなく、なりすまされた人の社会的信頼を著しく損なうおそれもあるとして、消費者・利用者の保護の観点から看過できないとしています。
警察庁の「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」によると、SNS型投資詐欺の当初の接触手段のうち、バナー等広告の接触ツールの割合は次のとおりです。
| サービス | 割合 |
|---|---|
| YouTube | 27.1% |
| 16.3% | |
| TikTok | 10.4% |
| 6.5% | |
| LINE | 4.8% |
| X | 2.1% |
要請の相手方
要請は次の5社に対して行われました。
- Google LLC
- LINEヤフー株式会社
- Meta Platforms, Inc.
- TikTok Pte. Ltd.
- X Corp.
なお、この要請は行政手続法第2条第6号に規定する行政指導に該当するもので、処分(同条第2号)ではありません。従わなかったからといって、ただちに罰則や不利益処分があるわけではありません。
要請された3つのこと
1. 広告主への本人確認の確実な実施
広告主の特定と追跡を可能にすることで、なりすまし詐欺広告の流通を抑止するためのものです。
- 電子的な認証手段の活用を含む広告主への本人確認を確実に実施すること
- 個人の確実な本人確認の手段の一つとしてマイナンバーカード、法人の確実な本人確認の手段の一つとして商業登記電子証明書が挙げられています
2. 広告の透明性向上に係る措置の実施
広告主や広告の信頼性を、消費者・利用者が自分で確認できるようにするためのものです。掲載される広告において、次のような情報を確認できるようにすることが求められています。
- 広告主に関する情報(広告主の名称、所在地、身元確認の有無など)
- 広告の情報(広告である旨、主に生成AI技術を用いて作成された広告である旨、広告表示理由など)
3. 削除要請への対応の徹底
- 刑法や金融商品取引法などの各種法令に違反するおそれがあるなりすまし詐欺広告について、インターネット・ホットラインセンター等の既存の窓口や法令所管省庁から削除要請を受けた際には遅滞なく判断を行い、迅速かつ適切に削除等の対応を行うこと
- 各社の広告の審査基準等において、なりすまし詐欺広告に関連する内容をどのように記載しているかを報告すること
報告の期限
各社は、デジタル庁(戦略・組織グループ)に対し、次のとおり文書で報告することが求められています。
| 報告内容 | 期限 |
|---|---|
| 3項目それぞれの具体的な実施内容 | 令和8年10月16日まで |
| 令和8年10月1日〜令和9年2月28日に実施した取組の結果 | 令和9年3月16日まで |
結果の報告では、本人確認の手段ごと・国内外別の実施件数と割合、掲載却下の件数と割合、削除したなりすまし詐欺広告の理由別・契機別の削除件数、削除要請に対する削除件数の割合や平均対応所要時間、未削除件数の理由別内訳などが求められています。
どの法律に違反しうるのか
要請文では、なりすまし詐欺広告が違反しうる法令として次のものが挙げられています。
- 刑法第161条第1項(偽造私電磁的記録文書等行使の罪)等:著名人の名義を無断で使用して虚偽の投資実績を紹介する内容を表示するなどして、偽造された事実証明に関する電磁的記録文書等をインターネット上に流通させるなどして行使した場合
- 金融商品取引法第29条等:無登録業者等が、一見してそれ自体では金融商品取引業に該当しないかのような広告等を入口として、誘導した先のウェブサイトやSNS等において金融商品取引業に該当する行為等を行う場合
これに合わせて、次の2つのガイドラインが改定され、なりすまし詐欺広告が違法情報として明記されました。
- インターネット・ホットラインセンターの「ホットライン運用ガイドライン」(令和8年8月7日改定)
- 総務省の「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律第26条に関するガイドライン」(令和8年8月6日改定)→ SNSの「なりすまし投資広告」と「送金バイト」が違法情報の例に追加
自分でできること
- SNSの広告に著名人が出ていても、それだけで信用しない。 ディープフェイクによる肖像・音声の無断利用が広がっています。
- 投資の勧誘を受けたら、金融庁の登録業者かどうかを確認する。 金融庁のウェブサイトで免許・許可・登録等を受けている業者の一覧を確認できます。
- 詐欺広告を見つけたら通報する。 インターネット・ホットラインセンターが違法情報の通報を受け付けています。
- 迷ったとき・被害にあったときは相談する。 消費者ホットライン188から、お住まいの地域の消費生活センターにつながります。
関連する注意点は詐欺メール(フィッシング)の見分け方、ネット証券口座の不正アクセス・不正取引に注意もあわせてご覧ください。