総務省は令和8年(2026年)8月6日、「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律第26条に関するガイドライン」(通称:違法情報ガイドライン)を改定し、意見募集の結果とあわせて公表しました。
追加されたのは、SNSでよく見かける次の2つです。
| 追加されたもの | どんな情報か | 関係する法律 |
|---|---|---|
| なりすまし型偽投資広告 | 著名人の名義を無断で使い、虚偽の投資実績を表示する広告 | 刑法(偽造私電磁的記録文書等行使の罪) |
| 「送金犯罪」の依頼・誘引行為 | 「送金するだけ」「報酬あり」などとして、他人の資金移動を請け負わせる募集 | 犯罪による収益の移転防止に関する法律第32条 |
そもそも「情プラ法26条のガイドライン」とは
情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)は、SNSなどで権利を侵害する情報が流れたときの対応を定めた法律です。このうち第26条は、大規模特定電気通信役務提供者(利用者数などが一定規模以上のSNS・動画共有サービスなどの事業者)に対し、送信防止措置(削除等)の実施に関する基準を定めて公表することを求めています。
その第26条第1項第2号にある「他人の権利を不当に侵害する情報の送信を防止する義務がある場合その他送信防止措置を講ずる法令上の義務(努力義務を除く。)がある場合」を国が具体的に例示したものが、このガイドラインです。
ガイドラインは大きく2部構成です。
- 1. 他人の権利を不当に侵害する情報:名誉権、名誉感情、プライバシー、私生活の平穏、肖像権、氏名権、パブリシティ権、著作権、商標権、営業上の利益
- 2. その他送信防止措置を講ずる法令上の義務がある場合:わいせつ関係、薬物関係、特殊詐欺等関係、犯罪実行者の募集関係、金融業関係、消費者取引における表示関係、銃刀法関係、違法オンラインギャンブル等関係
今回の追加は、このうち「特殊詐欺等関係」と「犯罪実行者の募集関係」に入りました。
なお、ガイドラインには「列挙されている対象となる権利・利益及び対象情報は例示である」と明記されており、ここに載っていない情報が対象外になるという意味ではありません。
ガイドラインは令和7年3月11日に制定され、令和7年9月25日に改定されています。今回は2回目の改定です。
選挙に関する情プラ法の改正(令和8年7月17日公布)についてはこちらの記事で確認できます。
追加された①:なりすまし型偽投資広告
「著名人が『この投資で儲かった』と言っている」という体裁の広告です。ガイドラインは、次の①〜③をすべて満たす投資広告について、偽造私電磁的記録文書等行使の構成要件を満たすなりすまし型偽投資広告を掲載する行為に該当する情報であると判断することができるとしています。
| 要件 | 内容 | 例として挙げられているもの |
|---|---|---|
| ① 権利、義務または事実証明に関する電磁的記録文書等であること | 社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りるもの | 具体的な投資先に投資を行い利益が出たことを記載するなど投資実績を表示する広告/名義人が開催するセミナーの参加者が投資により具体的に利益が出ていることを表示したセミナー勧誘広告 |
| ② 偽造されたものであること | 名義人と作成者との間の人格の同一性を偽ること | 実在する著名人の同意を得ることなく、その名前を使用するなどして著名人になりすまし、その著名人が名義人となった①のような広告 |
| ③ 行使したこと | 偽造電磁的記録文書等を真正なものとして使用すること | SNS上に①②に該当するものを掲載する行為 |
③については、SNSに投稿した広告のリンク先に①②に該当するものを掲載する行為も「行使」に該当し得ると注記されています。広告本体は無難に見せて、リンク先に偽の実績を置くケースを想定したものです。
総務省は、この追加の背景を「令和7年6月施行の改正刑法によって違法化された偽造私電磁的記録文書等の行使に該当し得る」ものとして説明しています。
追加された②:「送金犯罪」の依頼・誘引行為
ガイドラインは「送金犯罪」を、脚注で次のように定義しています。
通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で預貯金口座等の金融サービスを利用して自己以外の者に財産を移転する行為のこと。「送金バイト」等と表記されることもある。
そのうえで、次のすべてを満たす情報は、インターネット上に流通させる行為が犯罪収益移転防止法違反の構成要件に該当する情報であると判断できるとしています。
「送金犯罪」をするよう依頼・誘引する行為(同法第32条第1項関係)
- 「送金」「振込み」「暗号資産の移転」等の、預貯金契約等に係る役務を利用して財産を移転することを意味する表現
- 「有償」「報酬」「即金」「手数料」等の、有償であることを意味する表現
- 「副業」「案件」「バイト」「送金するだけ」「送金してください」等の、依頼または誘引する表現
「送金犯罪」の実施を自己に依頼するよう誘引する行為(同法第32条第2項後段関係)
- 上記1つ目・2つ目と同じ表現に加えて
- 「副業」「案件」「バイト」「送金します」等の誘引する表現
総務省は、これを「令和8年7月施行の改正犯罪による収益の移転防止に関する法律によって違法化された」ものと説明しています。
同じ「犯罪実行者の募集関係」の項目には、以前から闇バイト(職業安定法第63条関係)が例示されています。「闇バイト」「裏バイト」「叩き」などの表現と、「受け子」「出し子」「かけ子」「運びの仕事」などの表現が併記されている場合が、違反する疑いのある具体例として挙げられています。
指摘された課題
意見募集(令和8年7月3日〜7月16日)には21件の意見が寄せられました。提出者は一般社団法人日本インタラクティブ広告協会、株式会社JPIX、個人19件です。
一般社団法人日本インタラクティブ広告協会は、なりすまし型偽投資広告について、実務上の困難を複数指摘しています。
- 該当するかを調査・判定する過程で、本人やその代理人に直接確認できず、同意の有無を確認することが実務上困難なケースが想定される。著名人でない場合は、その人物の実在性自体の確認が困難な場合もある
- インターネット広告は、掲載媒体の運営者とは異なる事業者が配信する場合があり、掲載媒体のURLや遷移先URL、スクリーンショットだけでは対象広告を同定できないことがある。広告IDなど一意に特定するための情報が必要になる場合がある
- 特定の広告を削除しても、同一または酷似した広告が配信・掲載されることがあり、対応していないとの印象を与える可能性がある
これらに対し総務省は、「今後のガイドラインに関する検討を進めていく上での参考とさせていただきます」「関係省庁にも共有しつつ」と回答しています。
個人からの意見では、改定の方向性には賛成しつつ、過剰削除への懸念が示されました。詐欺広告や送金犯罪の手口を注意喚起・報道・批評・研究の目的で紹介する投稿まで削除対象とならないよう、違法行為への誘引意思がない情報は対象外であることをより明確に記載すべきという指摘です。あわせて、削除等を行った場合に理由分類を明示し、利用者が異議申立てできる手続を整備することが望ましいとの意見も出されました。
このほか、生成AIによる虚偽情報についてガイドラインが触れていないという指摘も複数ありました。総務省は、これらは今回の改定箇所ではないとしたうえで、「今後の各法令における対応の動向等も踏まえつつ、今後のガイドラインに関する検討を進めていく上での参考とさせていただきます」と回答しています。
事業者に新たな義務を課すものではない
総務省は意見への回答のなかで、このガイドラインについて次の点を繰り返し確認しています。
- 情プラ法第26条第1項第2号に定める場合を例示したものであり、違法情報ガイドラインをもってプラットフォーム事業者に対して新たな義務を課すものではない
- 通報に係る手続を定めたものではない
- 名誉毀損などについて、ガイドラインをもって法的解釈を行っているものではない(記載は判例で摘示された内容)
削除等の基準を実際に定めて公表するのは、情プラ法第26条にもとづき各事業者が行うことになります。また、事業者は法第28条にもとづき措置の実施状況等を公表することとされており、ガイドラインは、その公表項目を可能な限りこのガイドラインの分類に基づいて区分するよう求めています。
同じ時期に出た関連の動き
翌8月7日、警察庁・金融庁・消費者庁・デジタル庁・総務省・法務省・経済産業省の7府省庁が、Google LLC、LINEヤフー株式会社、Meta Platforms, Inc.、TikTok Pte. Ltd.、X Corp. の各社に対し、SNS等におけるなりすまし詐欺広告に関する対策強化の合同要請を文書で実施しました。
総務省はその背景として、ディープフェイクを用いて著名人の肖像や音声を無断で利用したなりすまし広告を含む詐欺広告が広く流通し、それを端緒とする投資詐欺等の被害が拡大している状況を挙げています。閲覧した消費者・利用者に財産上の被害をもたらすおそれがあるだけでなく、なりすまされた人の社会的信頼を著しく損なうおそれもあるとして、プラットフォーム事業者による自主的取組のさらなる強化を求めるものです。
ガイドラインの改定が「削除等の基準を作るときの例示」であるのに対し、こちらは事業者への要請という位置づけです。
いま確認したいこと
- 著名人が投資の実績を語る広告や、「送金するだけ」「報酬あり」の副業募集を見かけても、連絡したりお金を動かしたりしないでください。送金を請け負う行為自体が犯罪収益移転防止法違反となり得ます。
- 見かけた場合は、各SNSの通報機能から運営に申し出てください。自分の名前や写真が無断で使われている場合も同じです。
- 実際に被害にあった、または不安があるときは、消費者ホットライン188(くわしくはこちら)や警察相談専用電話#9110に相談できます。
- あわせて詐欺メール(フィッシング)の見分け方、ネット証券口座の不正アクセス・不正取引への注意も確認できます。