子育て・教育 重要度: 高

次期学習指導要領の「審議まとめ」に意見募集 令和8年(2026年)11月5日まで 授業時数を学校が調整できる制度・中学校「情報・技術科」の新設・不登校の子の特別な教育課程

何が起きたか

文部科学省は令和8年(2026年)10月6日、「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」に関する意見募集(パブリック・コメント)を始めました。

審議まとめは、文部科学大臣が令和6年12月に中央教育審議会(中教審)へ行った諮問を受けて、中教審の初等中等教育分科会 教育課程部会が取りまとめたものです。令和10年度以降に順次実施される予定の次の学習指導要領について、基本的な方向性と各教科の改善の方向性を示しています。

学習指導要領そのもの(文部科学省の告示)はまだ出ていません。今回の意見募集は、その前段階の「方向性」に対するものです。

項目内容
意見募集の対象次期学習指導要領等に向けた審議まとめ
受付期間令和8年10月6日(火)14時00分〜11月5日(木)23時59分
提出方法文部科学省のWebフォームのみ(電話・郵送等は受け付けない)
手続の種類行政手続法に基づかない任意の意見募集(e-Gov 案件番号 185001511)
資料審議まとめ本体(PDF・約1,060ページ)、抜粋資料(61ページ)
全面実施の想定小学校:令和12年度(2030年度)〜、中学校:令和13年度(2031年度)〜

高等学校の学習指導要領の改訂は、審議まとめの中で令和9年度末を予定していると書かれています。

学校が授業時数を調整できる「調整授業時数制度」

今回の審議まとめの柱の一つが、小・中学校の「調整授業時数制度」の創設です。

いまの学習指導要領と学校教育法施行規則では、教科ごとに年間の標準授業時数が決まっています。新しい制度では、学校が子どもの実態に合わせて、各教科の標準授業時数を一定の範囲まで下回ることを認め、減らした分(調整授業時数)を次のように使えるようにします。

使い道例(審議まとめの例示)
既存の教科への上乗せ総合的な学習の時間、算数・数学、国語への上乗せ
学校独自の教科の新設地域の課題を探究する独自教科、シチズンシップ教育を重点的に行う独自教科
裁量的な時間(学習枠)苦手・得意教科の自己調整学習、下の学年の学び直し、読解力向上プログラム、いじめ防止や対人関係スキル向上のプログラム
裁量的な時間(研究・研修等枠)教材研究・授業研究、学校が企画する研修、子どもの情報共有・協議、地域との連携体制づくり

減らせる幅の目安は次のとおりです。いずれも「最大限大きくとった場合の想定」で、制度全体は中教審で検討中とされています。

  • 標準を下回ってよい幅は、対象になる教科等それぞれの最大15%程度(標準が年35コマ以下の教科等は対象外)
  • 全ての対象教科等で限度まで減らした場合、最大で小学校138コマ、中学校128コマ程度(週4コマ程度)
  • そのうち「裁量的な時間」に充てられるのは全体で週2コマ(最大70コマ)程度まで。研究・研修等枠は最大35コマ(週1コマ)程度
  • 特別活動、道徳、外国語活動、中学校2・3年の音楽・美術などは対象外

いまもある「授業時数特例校制度」は、対象教科等の標準の10%まで下回ることを認めています。新しい制度はこれより幅を広げ、裁量的な時間にも使えるようにするものです。研究・研修等枠は、年間指導計画に基づく組織的・計画的な取組であることなどの要件を設けるとしています。

実施時期については、全面実施を待たず、令和10年度から全国で先行実施を可能とする方向で検討するとしています。いま全国332校ある「サキドリ研究校」(制度を先取りして試す学校)を今年度中に追加募集し、令和9年度に大幅に増やす方針です。

小学校に「情報の領域」、中学校に「情報・技術科」

情報活用能力を抜本的に高めるため、次の2つを新しく設けます。

  • 小学校:総合的な学習の時間に「情報の領域」を加える(「探究の領域」とは別に標準授業時数を設定)
  • 中学校:「情報・技術科」を新設する(いまの技術・家庭科の技術分野の内容を含む)

高校の「情報科」は、その上に立って内容を充実させます。審議まとめは、高校卒業までにすべての生徒が数理・データサイエンス・AIを「日常の生活や仕事等の場で使いこなす」ことができるリテラシーレベルの力を身に付けることを目指す姿としています。メディアリテラシー、AIを使いこなす力、プログラミング的思考は、小・中・高を通して一貫して育てる内容として整理されています。

授業時数は「広く薄く」減らして確保する

文部科学大臣の諮問は「年間の標準総授業時数を現在以上に増加させない」ことを前提にしています。そのため審議まとめは、新しい教科・領域の時間を次の考え方で確保するとしています。

  • 特定の教科から削るのではなく、小学校3年生以上の各教科等から、それぞれの時数に対して一定の割合で減らす
  • 学習の継続性のため、標準が年35コマ以下の教科等からは減らさない
  • 減らす割合は、一律3〜4%程度になると見込まれる
  • 年間の標準総授業時数は現行を維持する(これ以上減らすと必要な学習時間を確保できない懸念があるとしている)

各教科ごとの具体的な授業時数は、まだ示されていません。審議まとめは「引き続き精査を行った上で教育課程企画特別部会で検討し、適切なタイミングで示すべき」としています。

新しい教科・領域は、全面実施を待たずに小学校は令和10年度から、中学校は令和11年度から段階的に先行実施する経過措置を講じるのが適当だとしています。経過措置の具体的な中身は今後検討されます。

「主体的に学習に取り組む態度」の評価を見直す

通知表や指導要録で使われている観点別評価のうち、いまの「主体的に学習に取り組む態度」の観点について、審議まとめは次のような課題を挙げています。

  • 目標に準拠した評価で評定を左右するため、客観的に説明しやすい定量的な材料(提出物など)を使わざるを得ず、本来育てたい力につながっていない場合がある

そこで、次の方向で評価のしかたを改めるとしています。

観点次期の評価のしかた
知識・技能これまでどおり目標に準拠した観点別評価(A・B・C)
思考・判断・表現これまでどおり目標に準拠した観点別評価(A・B・C)
学びに向かう力、人間性等総合所見欄での個人内評価と、「思考・判断・表現」の観点への「◯」の付記を組み合わせる

「◯」は、国が教科ごとに示す「見取る姿」(例:中学校数学なら、問題に数学を活用しようとしている、数学的な根拠に基づいて他者と協働しようとしている、など)を、評価期間全体を通じて継続的に発揮していると見取れた場合にだけ付けます。評定は小学校3段階、中学校・高校5段階のままです。

「◯」は単独では評定に影響しません。ただし「思考・判断・表現」と一体的に勘案した結果として、評定に影響する場合もあるとしています。「見取る姿」の具体例と運用方法は、学習指導要領の改訂後に国が示す予定です。

高校は単位の数え方と必履修を柔軟にする

高等学校では、単位制を大きく柔軟にする方向が示されています。

  • 1単位の数え方:いまの「35単位時間」から、「50分×17コマ」を1単位とする数え方に改める(審議まとめでは便宜上「新単位」と呼ぶ)。卒業に必要な単位数は74単位→148新単位、必履修は38単位→78新単位(減単した場合の最低は64新単位)と表記が変わる
  • 週当たり授業時数:いまは週30コマが標準だが、標準を示さない
  • 必履修科目の減単:いまは減らせない標準2単位の必履修科目も、1新単位の範囲で減らせるようにする。ただし必履修の「教科」ごとの合計が3新単位以下になる減単は認めない(現行の単位でいえば、公共、芸術Ⅰ、情報Ⅰ、家庭基礎は減単不可)
  • 外部試験による履修免除:まず外国語と数学を対象に検討。外国語はCEFR B2以上、数学は数学Ⅱ・B以上の水準を想定
  • 学校設定科目:卒業単位に含められる上限を、普通科で56新単位に増やす
  • 科目の組替え:理科の基礎系科目の統合、国語と探究の組み合わせなど、科目の内容を他の科目に移して組み替えられるようにする

科目の構成も見直され、たとえば数学では数学A・B・Cに代わって新しい選択科目(名称は「数理活用(仮称)」などを検討中)、英語では「英語コミュニケーション(総合)」と「英語コミュニケーション(発信)」に分ける案が示されています。単位制の柔軟化は、令和11年度か12年度に先行実施し、具体の年度は今後決めるとしています。

不登校の子・特異な才能のある子の特別の教育課程

個々の子どもに着目した特別の教育課程を、次のとおり新設・拡充します。

対象区分
校内外の教育支援センターに通う不登校の児童生徒新設
特定分野に特異な才能のある児童生徒新設
通級による指導が必要な児童生徒、日本語指導が必要な児童生徒、学齢超過者拡充

不登校の子の特別の教育課程は、令和6年度の小・中学校の不登校児童生徒が約35万人と過去最多になったことを背景にしています。ポイントは次のとおりです。

  • 対象:すべての不登校の子ではなく、休み始めでも伴走支援があれば学びに向かえる子や、回復期にある子など、特別の教育課程が効果的と考えられる場合。学びより休養を優先すべき時期は除く
  • 授業時数:子どもの状態や意欲、本人・保護者の意向を踏まえ、標準授業時数を下回る柔軟な設定ができる
  • 学ぶ内容:下の学年の学び直しやオンラインでの原籍学級の授業への参加、体験活動やソーシャルスキルトレーニング(SST)など
  • 評価:下の学年の学び直しなども含め、学んだ内容に応じて柔軟に評価できるようにする。いまは在籍学年の教育課程で評価するため「1」や「-」となり、意欲や自己肯定感の低下につながるとの指摘があるため
  • 計画づくり:教師と子どもがともに個別の指導計画をつくる
  • 対象の学校:当面は義務教育段階(小学校、中学校、義務教育学校、特別支援学校の小学部・中学部)

制度の詳細は、今後「運用の手引き」で示すとしています。

そのほかの主な方向性

  • 学習指導要領の本文を表形式で構造化し、「デジタル学習指導要領」として授業づくりに使いやすくする
  • 構造化と調整授業時数制度に合わせて、教科書を精選する
  • 中学校・高校で「数学ガイダンス」「科学ガイダンス」を新設し、学ぶ内容と社会・職業とのつながりを示す
  • 道徳は「考え、議論する道徳」の実装、特別活動は子ども主体のルールづくり・学校行事を重視する
  • 高校入試について、個別の知識を単純に問う出題があり、それが教科書の網羅的な指導への意識を強めているとの指摘を踏まえ、改善を求める

検討の過程で指摘された課題

審議まとめ自身が、実現に向けた課題をいくつか明記しています。

  • 学校現場の負担:「深い学び」の実装と多様な子どもの包摂の両立は容易ではないとして、「教育課程の実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合い、実現可能性を確保する必要」があると書いています。調整授業時数制度や教科書の精選による「余白」の創出は、そのための方策と位置付けられています
  • 情報・技術科の担当教員:小学校総合の「情報の領域」と中学校「情報・技術科」は教師に新たな専門性が求められる一方、「地域によっては担当教員の不足をはじめとする指導体制上の課題がある」としています。文部科学省は「情報活用能力の抜本的向上を支える指導体制改善プラン」で、オンラインの免許法認定講習(令和8年度の受講予定者656人)、令和10年度末までの中学校担当教員全員への研修、複数校指導・遠隔授業の実証などを進めるとしています
  • 学力の状況:全国学力・学習状況調査の経年変化分析調査でスコアの低下が見られ、基礎的な概念の理解に課題がある子どもも多いことを挙げ、標準総授業時数をこれ以上減らすことには「極めて慎重に考えるべき」としています

意見の出し方

  1. e-Govの案件ページか文部科学省の報道発表から、審議まとめ本体と抜粋資料を確認する
  2. 文部科学省のWebフォームを開き、意見の分類(①〜㉚から1つ、必須)と意見を入力する
  3. 氏名・年齢・職業・連絡先は任意。職業は「教職員」「保護者」「児童・生徒」「学生等」などから選べる
  • 1回の送信で出せる意見は10件まで。10件を超える場合は、フォームに入り直して出す
  • 1件が1,000字を超える場合は要旨を記載する
  • 意見には理由を付ける
  • ページ番号を書く場合は、抜粋資料のページではなく、各スライド右上に記載された審議まとめ本体のページ番号を書く
  • 個別の回答はない。意見は氏名などを除いて公表されることがある

出典

家族に説明するなら

学校で何を、どれくらいの時間で教えるかは、国が「学習指導要領」というルールで決めているんだ。だいたい10年に1回見直していて、いま次の見直しに向けた考え方の案(審議まとめ)ができたところ。文部科学省が2026年11月5日まで、みんなから意見を集めているよ。大きな変更は3つ。1つ目は、学校が国語や算数などの時間を少しだけ減らして、その分を苦手な教科の練習や、地域を調べる学校独自の授業に使えるようになること。2つ目は、中学校に「情報・技術科」という新しい教科ができて、AIやプログラミング、ネットの情報が本当かどうかを見分ける力を学ぶこと。その時間は、ほかの教科を少しずつ減らして作るから、1年間の授業の合計は今と変わらない予定だよ。3つ目は、学校に行きづらい子が、教育支援センターなどで自分のペースで前の学年の内容から学び直せるしくみができること。小学校で新しい学習指導要領が全部始まるのは2030年度の予定だよ。

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