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取適法とフリーランス法の解釈が改正 ノウハウ・データの無償提供と「直前キャンセル」を明記 公正取引委員会が令和8年(2026年)10月1日に公表

公正取引委員会は令和8年(2026年)10月1日、次の2つの文書の改正を公表しました。

  • 「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」(以下「取適法の運用基準」)
  • 「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」(以下「フリーランス法の考え方」)

取適法は、令和8年1月に下請法から名前と中身が改められた法律で、中小企業などに製造や情報成果物の作成、運送などを委託するときのルールを定めています。フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)は、フリーランスに業務を委託するときのルールです。今回変わったのは法律そのものではなく、公取委がこの2つの法律をどう解釈し運用するかを示した文書です。

なぜ改正されたのか

令和8年6月24日、公取委・中小企業庁・特許庁は「知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針」(知財取引指針)と、その附属資料の「契約書ひな形」を公表しました。令和7年8月から開かれた「知的財産取引適正化ワーキンググループ」の議論を踏まえたものです。

公取委は同じ日に、知財取引指針の内容を取適法とフリーランス法の解釈に取り込む改正案を公表し、7月23日まで意見を募集しました。寄せられた意見は20件で、原案に技術的な修正を加えて確定させています。

改正の柱は、知的財産の扱いと発注の取消しの2つです。

「知的財産権」から「知的財産権等」へ

これまでの運用基準と考え方は「知的財産権」を対象にしていました。改正後は「知的財産権等」となり、次のように定義されています。

知的財産権及び技術上又は営業上の秘密等(ノウハウを含む。)

意見募集への回答で、公取委はノウハウを「ノウハウ・発明等のうち、知的財産権として保護されていないもの」と説明しています。例として挙げているのは、図面、レシピ、工程表、成分表、技術指導などの職人が持つ特殊な加工技術、営業・マーケティングに関するビジネスノウハウです。

発注するときに明示する

知的財産権等の譲渡・許諾等を、受託側から提供されるべき「給付の内容」の一部にするときは、その範囲を明示しなければなりません。代金の額を決めるときも、成果物とあわせて譲渡・許諾等の範囲を勘案する必要があります。給付の内容とせず別の取引として受けるときも、範囲と対価を明確にするよう留意するとされました。

フリーランス法の考え方も同じ方向で改められ、知的財産権等の譲渡・許諾等を給付の内容に含めない場合でも、その範囲や対価を明確にすることが「望ましい」と書き加えられています。

無償で持っていくことは違反に当たる

給付の内容に含めていないのに知的財産権等を無償で譲渡・許諾等させることは、不当な経済上の利益の提供要請(取適法第5条第2項第2号)に当たる、と明記されました。取適法の違反事例には、次の2つが新しく加わっています。

  • ポスター用のキャラクターデザインを、作成と利用許諾の対価を勘案した代金で委託した。その後、グッズの作成など給付の内容に含まれない用途にもデザインを使ったが、その対価を一切支払わなかった
  • プロモーション動画の作成を委託するときに、著作権の譲渡が給付の内容に含まれるかを明確にしていなかった。納品時に著作権の譲渡も求め、受託側が対価の説明を求めても、代金の内訳や算定根拠を説明しないまま無償で譲渡させた

製造委託の事例も、金型の「図面、加工データ等」の「無償譲渡要請」から、「設計・加工データ等」の「無償提供要請」に改められました。

代金の協議に応じる場面が増える

取適法は、労務費や原材料価格の高騰など、代金に影響する事情があるときに、受託側から協議を求められれば発注側は協議に応じなければならないと定めています。この事情の例に、知的財産権等の利用範囲や利用目的が広がって、給付の経済的価値が変わった場合が加わりました。

受託側が、知的財産権等の対価の考え方の説明や、レベニューシェア方式(収益配分方式)を含めた代金の協議を求めたのに、具体的な理由を説明しないまま従前の額に据え置く。こうした対応は、協議に応じない一方的な代金決定の例として書き込まれています。写真の利用許諾料が値上がりしたのに、バナー作成の対価の引上げ協議を拒んだ例も新しく載りました。

「直前キャンセル」で負担すべきものは「費用・損失」

新しく書き込まれた場合

受託側に責任がないのに発注側が費用・損失の全額を負担せず、給付内容の変更ややり直しを求めることは認められません。その「認められない場合」に、取適法・フリーランス法の両方で次の場合が加わりました(取適法の運用基準の文言)。

相当の期間にわたり製造委託等に係る給付の実施のために中小受託事業者に予定を確保することを余儀なくさせたにもかかわらず、委託事業者の都合により、中小受託事業者による製造委託等に係る給付の実施直前に当該製造委託等を取り消し、給付を受領する期日(略)に、中小受託事業者が別の業務を実施することを不可能にさせた場合

「費用」から「費用・損失」へ

給付内容の変更ややり直しのときに発注側が負担すべきものは、これまで「費用」と書かれていました。改正後は「その費用や中小受託事業者に生じた損失(費用・損失)」になっています。運送の当日の朝に発注を取り消した事例も、受託側が負担した「費用を支払わなかった」から、受託側に生じた「費用や損失を負担しなかった」に改められました。

公取委が示した具体的な考え方

意見募集への回答で、公取委は次の考え方を示しています。

  • フリーランス法:イベントでの実演を委託し、数か月にわたって実施日の予定を確保させたのに、発注側の都合で開催直前に中止し、その日に別の仕事をできなくさせた場合は、それまでの作業が無駄になった分の費用だけでなく、報酬の額に相当する額を支払わなければ、法第5条第2項第2号に違反するおそれがある(令和7年12月10日に公表した「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律に基づく指導等について」別紙2の問1を参照)
  • 取適法:役務提供委託や特定運送委託を実施の直前に取り消し、別の業務をできなくさせた場合も、それまでの作業の費用などに加えて代金相当額を支払わなければ、問題となるおそれがある
  • 製造委託などで、受領の期日より前に物品や情報成果物ができあがっていれば、受託側に責任がない限り、受け取って期日までに代金を支払う必要がある。完成前に取り消す場合も、それまでに要した一切の費用と、取消しで新たに生じた費用(不要品の処分費用など)を負担しなければ、問題となるおそれがある
  • 発注側自身が発注元から取り消されたことが原因でも、考え方は同じ

意見募集で指摘された課題

別紙2「意見の概要及びそれに対する考え方」から、主な論点を紹介します。

  • 「損失」の範囲がはっきりしない:ある団体は、「損失」は逸失利益を含みうる概念で、範囲や算定方法が不明確なままでは発注側の負担を予見できないと指摘しました。個人からは、予定を確保したために別の仕事ができなかったという損失には領収書や請求書がないことがあると指摘する意見がありました。予定の確保期間、代替業務を得られたか、支出せずに済んだ費用などを、判断の考慮要素として示すよう求めています。公取委は、負担すべき費用・損失は個別の事案ごとに判断されるとして、原案どおりとしました
  • 「相当の期間」「実施直前」の目安がない:目安となる期間や、契約成立前の「仮押さえ」をコンペや入札で失注した場合も含まれるかを示すよう求める意見がありました。理由として、基準がはっきりしなければ発注側が仮押さえ自体を避け、フリーランスの受注機会が減るおそれを挙げています。公取委は、これらも個別の事案ごとに判断されるとして、原案どおりとしました
  • キャンセル料を事前に決めておけばよいか:取消しの時期に応じた段階的なキャンセル料など、事前に合意したルールに基づく処理は問題にならないかの確認を求める意見がありました。公取委は、キャンセルポリシーなどであらかじめ定めておくことが考えられるとしつつ、定め方によっては買いたたきや不当な給付内容の変更に当たりうると回答しています
  • ノウハウは発注側から見えない:成果物にどんなノウハウが含まれるかは受託側しか知りえないとして、受託側から申告があったときだけ明示すればよいことにしてほしいという団体の意見がありました。公取委は、知的財産権等を給付の内容に含めるなら発注側はその内容を認識できるはずで明示は可能だと答えています。そのうえで、明示できないような知的財産権等を無償で譲渡・許諾等させることは、不当な経済上の利益の提供要請に当たるおそれがあるとしました
  • 受託側が前から持っている知見はどうなるか:コンサルティングなど役務提供型の委託で、受託側がもともと持っている知見やスキルまで対象になるのかを確認する意見がありました。公取委は、従前から保有するノウハウ等は、作成過程を通じて発生した知的財産権等には当たらないと回答しています。ただし、既存のシステムを成果物に組み込むよう指定する場合のように、それが給付の内容に含まれるときは、そのことを示して対価を代金に含める必要があるとしました
  • 対価を総額に含めてよいか:成果物の対価と知的財産権等の対価を分けずに、総額で定めてよいかを確認する意見が複数ありました。公取委は、取引の内容や業界の商慣習などに照らして、包括的に設定することが合理的な場合もあると回答しています。ただしその場合も、譲渡・許諾等の範囲の明示は必要で、知的財産権等の対価を考慮せずに一方的に低い代金を定めれば、買いたたきに当たるおそれがあるとしています

事例については、今後必要に応じて「中小受託取引適正化法テキスト」などで示すと公取委は回答しています。

いま確認したいこと

中小企業・フリーランスに仕事を委託している事業者の方:

  • デザイン、動画、システム、設計データなど、成果物と一緒に知的財産権やノウハウ、データを受け取っている取引があるか、洗い出してください。受け取っているなら、発注書面(フリーランスなら3条通知)で範囲と対価が読み取れるか確認してください
  • 継続的な取引で基本契約に共通事項を定めている場合は、その期間内なら発注のたびに明示しなくてもよいとされています。そのかわり、共通事項に有効期間を明記し、個々の発注との関連を明らかにする必要があります(意見募集への回答)
  • 成果物を当初と別の用途に使うときは、対価について協議してください
  • 予定を押さえてもらう仕事では、キャンセルの扱いを事前に取り決めておくと、トラブルを防ぎやすくなります

仕事を受けている中小企業・フリーランスの方:契約にない知的財産権等の無償提供を求められたり、直前にキャンセルされて損失を補ってもらえなかったりしたときは、公正取引委員会に相談できます。フリーランスなら「フリーランス・トラブル110番」も使えます。

問合せ先:

  • 取適法の運用基準:公正取引委員会事務総局経済取引局取引部企業取引課(電話03-3581-3373)
  • フリーランス法の考え方:同フリーランス取引適正化室(電話03-3581-5479)

出典

家族に説明するなら

会社がほかの会社やフリーランスに仕事を頼むときのルールを定めた法律が2つあるんだ。小さな会社を守る『取適法』(前は下請法と呼ばれていた)と、フリーランスを守る『フリーランス法』。その2つを公正取引委員会がどう読むかを書いた文書が、2026年10月1日に書き換えられたよ。ひとつは、デザインや図面、職人のコツ(ノウハウ)、データのような『形のない財産』を、お金を払わずに持っていくのはダメ、という範囲が広がったこと。たとえば、ポスター用に頼んだキャラクターを、追加のお金を払わずにグッズにも使う、というのが違反の例として載った。もうひとつは、何か月も前から日にちを押さえてもらっていた仕事を、頼んだ側の都合で直前にキャンセルするケース。これも、受けた側の損を補わなければ問題になりうる、とはっきり書かれたんだ。法律が変わったわけじゃなくて、法律の読み方が細かくなった、という話だよ。

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