くらし・税金 重要度: 中

種苗法改正と「重要品種」の新法が公布 育成者権を25年→35年に延長・高温に強い品種づくりを国が後押し 令和8年(2026年)7月24日

「種苗法の一部を改正する法律」(令和8年法律第72号)と「重要品種の育成及びその種苗の生産の振興に関する法律」(同第71号)が、令和8年(2026年)7月24日に公布されました。育成者権の存続期間が10年延長されて25年(永年性植物は30年)から35年(同40年)になり、出願中の品種の海外流出を差し止められるようになります。あわせて、高温耐性・耐病性・多収性などを持つ「重要品種」の育成と種苗生産を国・都道府県・民間が連携して進める新法が制定されました。

新しい農作物の品種をめぐる法律が2本、令和8年(2026年)7月24日に公布されました。**「種苗法の一部を改正する法律」(令和8年法律第72号)と、「重要品種の育成及びその種苗の生産の振興に関する法律」(同第71号)**です。

背景として農林水産省は、気候変動等による農業生産への悪影響が顕在化するなか、高温耐性・耐病性、多収性等の形質を有する品種の育成が急務である一方、日本の新品種育成・品種登録件数が減少傾向にあることを挙げています。また、日本の優良品種は海外でも人気があり、育成者権者の許諾を得ない海外流出が続いていることも指摘されています。

2本は役割が分かれています。**種苗法改正が「品種を作った人の権利を強くする」**もの、**重要品種法が「気候変動に対応できる品種を国が旗を振って作る」**ものです。

種苗法改正の中身

1. 育成者権の存続期間の延長(第19条第2項)

育成者権の存続期間が10年延長されます。

現行改正後
通常の植物25年35年
永年性植物(果樹など)30年40年

新品種育成において高温耐性と多収性など複数の形質を付与するには高度な技術と労力を要するようになっており、また、優良品種を用いた産地形成(種苗増殖と成木化に加えて、生産技術の確立・普及)に長期間を要する実態を踏まえたものです。なお、UPOV条約(植物の新品種の保護に関する国際条約)では20年以上と規定されており、加盟国の最長は30年(永年性植物は35年)とされています。

2. 植物新品種の流出防止対策の強化

(1)品種登録出願中の保護(第14条の2)

品種登録では出願から登録までに栽培試験等により数年間を要し、その出願期間中は育成者権の保護がありません。この間に種苗が海外に流出している実態を踏まえ、出願品種の種苗の輸出の差止めを行うことができるようになります。

(2)種苗の輸出目的の保管の制限(第21条第2項、第21条の2第1項)

育成者権者の許諾なしでの種苗等の海外持出しの制限(輸出先国の指定)の実効性を高めるため、輸出の前段階である「輸出目的での保管」(例えば輸出向けの倉庫での保管)にも育成者権の効力が及ぶこととされます。

(3)育成者権侵害に対する訴訟上の救済の強化(第34条、第35条の3)

  • 育成者権者の損害額(許諾料相当額)の算定の際に、侵害があったことを前提として通常の許諾料相当額よりも高い額とすることができるようになります。
  • 登録品種の名称で販売された種苗について、訴訟上、実物の確認を要さずにその名称の品種であると推定する規定が創設されます(立証責任の一部を育成者権者から侵害者に転換)。

(4)外国からの登録品種の種苗等の逆輸入の制限(第21条第2項)

育成者権者等が国外で登録品種である種苗等を譲渡した場合に、育成者権が消尽せず、その種苗等の我が国での利用(外国からの輸入を含む)に育成者権の効力が及ぶことが明確化されます。

(5)種苗の貸渡し(リース)に関する保護の強化(第2条第5項等)

育成者権の効力が及ぶ範囲に、種苗の貸渡し(リース)が追加されます。育成者権者が種苗の所有権を保持したうえでリースを行う場合に、そのリース行為と対象の種苗に育成者権の効力が及ぶことになります。

3. その他(第15条の2、第37条の2、第75条)

  • 早期に実用化する必要性が高い出願品種について、優先して品種登録出願の審査ができるようになります。
  • 特許法に倣い、紛争の解決のために裁判所が広く一般から意見を募集できる制度が創設されます。
  • 登録品種の名称使用義務違反に係る過料が10万円から20万円に引き上げられます。

重要品種法(通称・気候変動等対応品種法)の中身

産官学の連携の下、高温耐性・耐病性、多収性等の形質を有する重要品種を育成・普及させるための新法です。

国の基本方針

国が重要品種の育成・普及の旗振り役として、基本方針を定めます。内容は、育成・普及すべき重要品種(高温耐性・耐病性・多収性等)の考え方、品種育成・種苗生産の基本的な方向性(ゲノム解析等の先端技術・実需者評価の活用、広域への普及)、育成した重要品種に関する知的財産の保護などです。

1. 重要品種育成事業

  • 国の基本方針に即して、産官学(農研機構・都道府県・民間企業が単独または共同)が重要品種の育成計画を作成し、農林水産大臣が認定します。計画には、育成する新品種の性質、栽培予定地域、目標普及面積、実需者評価を導入する取組、品種登録出願の時期などを記載します。
  • 認定を受けると、(国研)農研機構の研究施設・設備の供用等(農研機構法の特例)や、品種登録出願料等の減免(種苗法の特例)といったメリット措置を受けられます。
  • 一方で、育成された重要品種については品種登録出願が義務化されます。

2. 重要品種種苗生産事業活動

  • 国の基本方針を踏まえ、都道府県が国と協議のうえ基本計画を作成します。内容は、育成された重要品種の生産・普及方針、種苗生産の実施区域などです。
  • 都道府県の基本計画に即し、種苗生産者が生産計画を作成し、知事が認定します。生産量や生産区域の規模、区域内の農地の集団化などを定めます。
  • 認定を受けると、種苗生産関係者が地域計画の協議の場への参加を申し出られる(農業経営基盤強化促進法の特例)、種苗生産者と周辺農業者で結んだ栽培管理協定の効力が協定農地の継承者にも継続する(承継効・民法の特例)、計画内の農地について農用地区域内農地への編入手続が簡素化される(農振法の特例)といったメリット措置が適用されます。

いつから

法律施行期日
種苗法改正(原則)令和8年(2026年)12月1日
種苗法改正のうち、育成者権の存続期間の延長/外国からの登録品種の種苗等の逆輸入の制限令和8年(2026年)7月24日(公布の日)
重要品種法公布の日から6月以内において政令で定める日

誰に関係するか

消費者が行う手続きはありません。品種を育成する側と、種苗を生産・流通させる側のルールが変わる改正です。

種苗を扱う事業者にとっては、輸出目的での保管やリースにも育成者権の効力が及ぶようになる点、出願中の品種でも輸出差止めの対象になる点が実務に直結します。これらは令和8年12月1日からの施行です。

新品種の育成に関わる人にとっては、育成者権の存続期間の延長がすでに公布日から効いている点と、重要品種の育成計画の認定を受けることで農研機構の設備供用や出願料減免が受けられる点が要点になります。

食料の安定供給という観点では、食糧法改正(令和8年7月15日公布)とあわせて、気候変動下での供給力を確保する政策の一環と位置づけられます。

出典

家族に説明するなら

お米や果物の『新しい品種』を作った人の権利を守る法律が、2026年7月24日に変わったよ。新しい品種を開発した人には『育成者権』という権利があって、今までは25年(果樹など長く育つ植物は30年)守られていたんだけど、これが10年のびて35年(同40年)になる。品種を作るのに時間がかかるうえ、産地として広まるまでにも長くかかるからだね。それと、日本のおいしい品種が海外に無断で持ち出される問題があって、これまでは『品種登録が終わるまでの数年間』は守られていなかった。これからは登録の審査中でも海外への持ち出しを止められるようになるよ。もう1本、新しい法律もできた。暑さに強い、病気に強い、たくさん採れる、そんな『重要品種』を国と都道府県と民間が協力して作るための法律。国が方針を決めて、開発する計画を国が認めると、国の研究機関の設備を使わせてもらえたり、出願のお金が安くなったりする。育成者権の延長は7月24日からもう効いていて、種苗法のほかの部分は2026年12月1日から。

本記事は公式情報をもとにした要約です。最新かつ正確な情報、申請条件、期限は必ず公式ページでご確認ください。