仕事が原因のけがや病気を補償する労災保険(労働者災害補償保険)の制度を見直す「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律」が公布されました。この法律は令和8年(2026年)7月10日に国会で成立し、7月17日に公布されました(令和8年法律第60号)。多くの改正は令和9年(2027年)4月1日に施行されます。所管は厚生労働省です。
労災保険は、働く人が仕事や通勤が原因でけがや病気をしたり、亡くなったりしたときに、治療費や休業中の給付、遺族への年金などを支給する国の制度です。今回は、この制度をより公平で使いやすくするための見直しが行われました。
何が変わるのか
主な改正は次の5点です。
1. 遺族補償年金の男女差の解消
労災で亡くなった人の遺族に支給される遺族補償年金について、これまで夫にだけ課されていた支給要件を撤廃し、男女差をなくします。
現在は、妻を亡くした夫は「妻の死亡の当時60歳以上であること、または一定の障害の状態にあること」という要件を満たさないと受給できませんでした。一方で、夫を亡くした妻は年齢に関係なく受給できます。この非対称な取扱いが見直され、夫も妻と同じ条件で受給できるようになります。
あわせて、遺族が1人の場合の年金額を一律で給付基礎日額の175日分にそろえ、55歳以上または一定の障害の状態にある妻への上乗せ(特別加算)は廃止して、給付水準の差も解消します。
2. 消滅時効の見直し(2年 → 5年)
労災保険の給付を請求できる権利には期限(消滅時効)があります。今回、その病気が仕事によるものかどうかを容易に判断できない病気(政令で定めるもの)について、療養補償給付などの請求権の消滅時効を2年から5年に延長します。
発症してもすぐに仕事が原因だと分かりにくい病気について、あとからでも申請しやすくなります。
3. 特別加入団体の要件の法定化
一人親方などが労災保険に特別加入する際に取りまとめ役となる特別加入団体について、その要件を法律で定めます(法定化)。
4. 社会復帰促進等事業に関する不服申立ての見直し
労災保険の社会復帰促進等事業に関する決定への不服申立て(審査請求)について、審査請求先などを見直します。
5. 適用事業に関する暫定措置の廃止
労災保険の適用事業に関する暫定措置を廃止します。
いつから始まるのか
公布は令和8年(2026年)7月17日です。上記のうち、1〜4の改正は令和9年(2027年)4月1日に施行されます。
5の暫定措置の廃止については、公布の日から起算して5年を超えない範囲内で政令で定める日に施行されます。具体的な施行日は、今後政令で定められます。
誰に関係するか
労災で家族を亡くした遺族、とくに妻を亡くした夫にとっては、これまで年齢などの要件で受けられなかった遺族補償年金を、妻と同じ条件で受けられるようになります。
働く人にとっては、原因が仕事かどうかすぐに判断しにくい病気について、給付を請求できる期間が2年から5年に延び、あとからでも申請しやすくなります。
特別加入している人や団体、事業主は、特別加入団体の要件の法定化などにあわせて、今後示される政省令や通達を確認しておくとよいでしょう。
具体的な取扱いは、施行に向けて厚生労働省令などで定められます。判断に迷う場合は、労働基準監督署で相談を受け付けています。
出典
- 「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案要綱」の諮問及び答申について(厚生労働省)
- 最近の法律・条約の公布(内閣法制局)
- 労災補償(厚生労働省)
- 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第60号・令和8年7月17日公布)