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銀行の店舗が減っても現金の出し入れができる場所を確保するように 金融機関の監督指針に「地域における顧客サービスの維持・確保」の項目を新設 令和8年(2026年)8月3日から適用

金融庁が「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」など4つの監督指針を改正し、「地域における顧客サービスの維持・確保に向けた取組」という項目を新しく設けました。銀行や信用金庫が店舗を統廃合するときに、預金の出し入れや各種相談ができる機会を地域に残すための取組(他業種との共同店舗、移動店舗、現金輸送の共同化など)を進めることが期待されると明記されたものです。あわせて、経営が悪化しそうな金融機関を早めに見つける「早期警戒制度」も見直され、当局が将来の人口動態や金利変動のシナリオを設定して検証することが書き加えられました。令和8年(2026年)7月23日に公表され、令和8年(2026年)8月3日から適用されます。

人口が減っている地域では、銀行や信用金庫の支店が統廃合され、近くで現金をおろしたり預けたりできる場所が少なくなってきています。

この点について金融庁は、金融機関を監督するときの手引きである監督指針に、「地域における顧客サービスの維持・確保に向けた取組」という項目を新しく設けました。改正は令和8年(2026年)7月23日に公表され、令和8年(2026年)8月3日から適用されます。

改正されたのは次の4つの監督指針です。

  • 中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針
  • 主要行等向けの総合的な監督指針
  • 系統金融機関向けの総合的な監督指針
  • 漁協系統信用事業における総合的な監督指針

金融庁は改正の趣旨を、「『地域金融力強化プラン』を踏まえ、地域における顧客サービスの維持・確保に向けた取組の推進、早期警戒制度の見直しに係る所要の改正を行うもの」と説明しています。

なお監督指針は法令そのものではなく、金融庁が金融機関を監督するときの着眼点や進め方をまとめた行政の指針です。以下では、中小・地域金融機関向け監督指針の新旧対照表に沿って内容を説明します。

新しく設けられた「Ⅱ-13」の内容

意義

新設された「Ⅱ-13-1 意義」は、まず前提として次のように書いています。

金融機関がどのようなサービスを提供するかについては、顧客の利便性や採算性を考慮した、各金融機関の経営判断によるものである。

そのうえで、次のように続けます。

他方、一定のサービス(預金の受入れ・払出し・各種相談対応等)について、地域の利用実態やニーズを踏まえ、顧客の利便性に十分配慮しつつも、適切かつ効率的な業務運営を行いながら、様々な関係者と連携の下、店舗ネットワークの再編等の検討を進めることが重要である。

つまり、どんなサービスをどこで提供するかは各金融機関が決めることという原則は変えず、そのうえで預金の出し入れや相談といった基本的なサービスについては、地域の実情を踏まえて考えてほしいという書き方になっています。

基本的な考え方と取組の例

「Ⅱ-13-2 基本的な考え方」では、金融機関は店舗ネットワークの再編等の検討を進める際に、顧客サービスの維持・確保に向けた取組等を進めることが期待されているとしています。そのうえで、(参考)として次の取組の例が挙げられました。

  • 過疎地域における他業種との共同店舗の設置や移動店舗の活用を通じた、顧客の現金取扱機会の維持・確保
    • 例として、金融機関が業務委託を行う際に、委託先事業者の店舗内に顧客と通信するための通信端末機器を設置し、その機器を通じて金融機関が顧客に手続の説明等を行うことや、その事業者が顧客に機器の設置場所等を案内することが示されています
  • 現金輸送の委託・共同化、その他利用実態を踏まえた店舗運営の見直しを通じた、持続可能なサービス提供体制の構築
  • 地域の拠点施設との連携による、金融機関の顧客サービスに資するまちづくり支援

監督のしかた

「Ⅱ-13-3 監督手法・対応」は、金融機関による顧客サービス維持・確保に向けた取組事例を把握する観点から、ヒアリング及び通常の監督事務等を通じて確認するとしています。報告徴求や命令といった強い手段が新たに規定されたわけではありません。

このⅡ-13は、業態別の準用一覧表で信用金庫・信用組合・労働金庫にも準用されることが示されています。

「店舗を減らすな」という趣旨ではない

意見募集では、この新設項目の位置づけについて質問が出され、金融庁が明確に答えています。

ひとつめは、「今般の監督指針改正は、地域金融機関の店舗再編等を抑制するような趣旨ではなく、地域の人口減少や競争環境の激化等を踏まえて、店舗ネットワーク等の再編にあたっての留意点を整理することで、経営判断に基づく店舗再編等を後押しする趣旨という理解でよいか」という質問です。金融庁の回答は「ご理解のとおりです」でした。

ふたつめは、「例示されているような取組は、店舗再編時に必ず取り組まなければならないものではなく、あくまで各金融機関が採算性やリソース等を踏まえて取組の要否を判断するものという理解でよいか」という質問です。これに対する回答も「ご理解のとおりです」でした。

つまり、共同店舗や移動店舗といった取組は義務ではなく選択肢の例示であり、店舗の統廃合そのものを止めさせるための改正ではないという整理です。

なお、共同店舗で複数の支店が同居する場合に「同じ場所=同じ支店」と誤認され振込先の支店選択ミスが起きているとして、誤認防止の表示・案内について指針を検討してほしいという意見も出ました。金融庁は、誤認防止のための表示・案内については監督指針の「利用者保護等」の項目で示していると回答しています。

もうひとつの改正:早期警戒制度の見直し

今回の改正のもう一方の柱は、経営の悪化が見込まれる金融機関を早めに把握して対応する早期警戒制度の見直しです。中小・地域金融機関向け監督指針の「Ⅱ-2-3 持続可能な収益性と将来にわたる健全性」などに、次の内容が書き加えられました。

(1)当局がシナリオを設定して検証する

Ⅱ-2-3-3(3)に注が新設され、当局は将来の人口動態や金利変動等にかかる合理的なシナリオを設定して、持続可能な収益性と将来にわたる健全性に関して総合的かつ深度ある検証を行い、銀行の将来の経営状況について認識の共有を図るものとされました。

(2)資本増強に関する業務改善命令

Ⅱ-2-3-3(4)に注が新設されました。当該銀行を取り巻く経済環境に関する合理的なシナリオにもとづくストレステストによって最低所要自己資本比率を下回る蓋然性が高いと認められ、かつ深度ある検証を行って必要な業務改善を促した結果、さらに資本増強を確実に実施する必要があると認められる場合には、資本増強に関する業務改善命令を発出するものとされました。

(3)預金の流出についての分析

流動性リスクの監督手法(Ⅱ-2-6-3(2))にも注が新設され、当局は将来の人口動態等が預金に与える影響について分析を行い、過去の預金流出に関するストレス事象等も踏まえて深度ある検証を行うものとされました。

意見募集では、「予想を理由に業務停止命令を出すのか」という趣旨の意見が出されましたが、金融庁は「今般の早期改善制度の見直しは、ストレステストによって銀行等が所要自己資本比率を下回る蓋然性が高いと認められる場合に、業務停止命令を発出することを定めるものではありません」と回答しています。あわせて、実際に所要自己資本比率を下回った金融機関には銀行法第26条第2項に基づく早期是正措置によって、自己資本比率等の状況に応じて段階的に措置がとられることを説明しています。

また、「合理的なシナリオ」で当局が使う具体的な指標や閾値(たとえば生産年齢人口や高齢化率がどの程度変化する場合に深度ある検証を行うのか)を監督指針に例示してほしいという要望も出されました。金融庁は、シナリオは定量的なデータに基づいた説得性のあるものとする予定だとしつつ、具体的な内容はその時点の経営環境や市場の状況等を踏まえて設定されるものであり、基準や指標、計算方法等を示すと基準に該当する金融機関に無用の風評が生じるおそれもあることから、例示や指標の定義は示していないと回答しています。そのうえで、ヒアリングの際には当局の分析結果を示しながら、金融機関の納得感を得ながら進めるとしています。

わたしたちへの影響

利用者が行う手続きはありません。 適用は令和8年(2026年)8月3日からです。

今回の改正で、近くの支店やATMが必ず維持されるようになるわけではありません。店舗の統廃合をするかどうかは各金融機関の経営判断であることは変わらず、共同店舗や移動店舗といった取組も義務ではなく例示にとどまります。

一方で、金融庁が監督のなかで「地域に現金を扱える場所や相談できる場所を残すための取組」を確認する項目が正式に設けられたことになります。近くの店舗が統廃合されるときには、代わりとなる窓口・ATM・移動店舗・共同店舗の案内が出るかどうかを、取引先の金融機関のお知らせで確認しておくとよいでしょう。

出典

家族に説明するなら

地方では、銀行や信用金庫の支店が減ってきているよね。お金をおろしたり預けたりする場所が近くからなくなると、特に車を運転しない人にはこたえる。2026年7月23日に金融庁が決めたルール改正では、銀行を監督するときの手引き(監督指針)に『地域における顧客サービスの維持・確保』という項目が新しく加わったんだ。店舗を減らすかどうかは銀行の経営判断だけれど、減らすときには、たとえばスーパーなど他の業種と一緒の共同店舗にする、車で回る移動店舗を使う、現金を運ぶ仕事を他社や他行と共同でやる、といった工夫で、現金を扱える場所を地域に残すことが『期待されている』と書かれた。ただし、これは必ずやらなければならない義務ではなく、採算や人手を踏まえて各金融機関が判断するものだと金融庁も説明しているよ。使う側の手続きは何もないけれど、近くの支店が統廃合されるときには、代わりの窓口や移動店舗の案内が出るかどうかを気にしておくといいね。実際に適用が始まるのは2026年8月3日から。

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