財布やスマートフォンなどの落とし物(遺失物)を警察署で受け取るとき、警察署長は「その人が本当の落とし主か」を確認しなければならないことになっています。この確認方法を定める遺失物法施行規則が改正され、令和8年(2026年)7月22日に公布・施行されました(令和8年国家公安委員会規則第16号)。
これまでは、運転免許証など氏名等を証するに足りる「書面」の提示を受ける方法などによって確認が行われていました。警察庁は、警察業務のデジタル化を進めるなかで本人確認の方法が書面に限定されていることを課題と捉え、電磁的記録による身分証明書等を利用した確認も可能にすることを主な目的として、今回の改正を行ったと説明しています。
何が変わるのか
1. 「電磁的記録の提示」による確認が加わった
落とし主の確認方法に、氏名等を証するに足りる書面「又は電磁的記録」の提示を受けることが明記されました。スマートフォンなどに記録された電子的な身分証明書を見せる形での確認が、ルールの上で可能になります。
2. スマホのマイナンバーカード(カード代替電磁的記録)による確認
あわせて、スマートフォンに搭載されたマイナンバーカードの機能(マイナンバー法=番号利用法に規定する「カード代替電磁的記録」)のうち、氏名と住所の情報が記録されているもの(規則上の「特定電磁的記録」)の送信を受け、それが送信した本人のものであることを確認する方法も、確認方法として定められました。
3. 拾得者への引渡しや、駅・百貨店の窓口でも同様に
落とし主が現れず拾得者などが所有権を取得した場合の引渡し(権利取得者の確認)についても、同じように電磁的記録による確認方法が追加されています。
また、駅・百貨店・空港など、自ら落とし物を保管できる**「特例施設占有者」が行う遺失者の確認・権利取得者への引渡しについても、同様の規定が設けられました。特例施設占有者が拾得者に対して行う通知を電磁的記録の提供で代えられる**ようにするなど、書面のやり取りを電子化するための規定も整備されています。
いつから始まるのか
公布の日(令和8年〈2026年〉7月22日)から施行されています。
ただし、実際に使えるかどうかは別の問題です。警察庁はパブリックコメントの結果のなかで、次のように説明しています。
- 電磁的記録の提示を受けることによる遺失者の確認は、全ての都道府県警察において可能となる
- 一方、カード代替電磁的記録の送信・確認については、現時点ではこれに要する機器が整備されているわけではないが、今後、所要の機器の整備に努める
つまり、スマホ用電子証明書を送信する方式については、当面は対応できない警察署もあると考えられます。
なお、デジタル身分証の真正性に疑いがある場合については、他の書面の提示を受けるなど適当な方法により本人性を確認することとされています。
誰に関係するか
落とし物を受け取りに行く人にとっては、将来的に本人確認の選択肢が増える改正です。ただし上記のとおり機器の整備状況によるため、当面は運転免許証やマイナンバーカードなど、従来どおりの本人確認書類を持参するのが確実です。スマートフォンで手続きしたい場合は、事前に受け取り先の警察署や遺失物センターに確認しておくとよいでしょう。
駅・商業施設などの落とし物窓口を運営する事業者にとっては、遺失者の確認方法や拾得者への通知の電子化が可能になるため、運用の見直しを検討する余地があります。
なお、書類の様式も一部改められましたが、改正前の様式で使われている書類は当分の間、改正後の様式によるものとみなされ、旧様式の用紙も当分の間、取り繕って使用できることとされています。
出典
- 「遺失物法施行規則の一部を改正する規則案」に対する意見の募集結果について(e-Govパブリック・コメント/警察庁)
- 遺失物法施行規則の一部を改正する規則(令和8年国家公安委員会規則第16号・令和8年7月22日公布)
- 遺失物法(平成18年法律第73号)、遺失物法施行規則(平成19年国家公安委員会規則第6号)